ナタマメ

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ナタマメ
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae[1]
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: ナタマメ属 Canavalia
: ナタマメ C. gladiata
学名
Canavalia gladiata (Jacq.) DC.
英名
sword bean
日本の農業百科事典からのカナリア・グラディアタ(1804)

ナタマメ鉈豆Canavalia gladiata)はマメ亜科の蔓性の一年草。原産地は熱帯アジアまたはアフリカ。刀豆(トウズ、タチマメ、ナタマメ)、帯刀(タテハキ)とも呼ばれる。日本へは江戸時代に渡来。約25cmほどの豆果を結ぶ[1]。以前から漢方薬として知られており、近年では健康食品、健康茶としても一般的に知られるようになった。

歴史

アジアアフリカ熱帯原産とされ[1]、食用や薬用として栽培される。日本には江戸時代初頭にから伝わった。特に薩摩では江戸時代は栽培が盛んで、NHK大河ドラマ篤姫』のワンシーンでも長旅の無事を祈る餞別として送られていた。福神漬けの材料にもなる[1]

生態

ナタマメの花(2007.8.11撮影)

またはピンク色の形の花を咲かせる。その後、結実するが、は非常に大きく、大きなものでは30-50cmで幅が5cmほどになる。は長い柄のある3出複葉で大型である。莢果は11月頃。別名の「タテワキ(帯刀)」は、このの形に由来する。また「ジャックと豆の木」のモデルともいわれる[1]

産地

日本国内でも栽培されるが、ラテンアメリカ中華人民共和国からの輸入が多い。

利用

なた豆茶として利用される有機栽培・無農薬のなた豆畑(丹波市こやま園)

福神漬・健康茶・民間薬・メッセージ缶(種子にレーザーで文字を彫ったもの)等。食用としては、若いさやを食べることが多い。薬効を目的にした場合は、豆を利用することが多い。

薬効としては、血行促進や免疫力の向上などのさまざまな効果があるほか、昔から排膿(膿を出す)の妙薬と言われており、腎臓に良く、蓄膿症歯周病や歯槽膿漏の改善、痔ろうなどにも効果がある。他の野菜の病害虫の防止用として周囲に植えられることもある。

コンカナバリンAはナタマメにしか存在しないレクチンであり、植物レクチンの代表例として知られる。生物工学の分野ではT細胞マイトジェンなどとして広く使われている。

毒性

豆類全般にいえることだが、ナタマメにも毒がある。とくにタカナタマメ・タチナタマメには毒が多い。食用とするのはアカナタマメ・シロナタマメといわれる品種である。粗悪な健康茶などには注意が必要。また、メッセージ缶に用いられるものは食用に適さない品種が使われており、食べることはできない。サポニン青酸配糖体・有毒性アミノ酸のコンカナバリンAカナバリンなどの毒素が含まれている。

カナバリンは、アルギニンに類似した構造を持ち、アルギニンの機能を阻害しアンモニアが蓄積する有害作用があり、多くの昆虫がナタマメを避けるので虫害が少ない[2]

ナタマメを用いた食品・料理

福神漬に用いられる[3]ほか、ナタマメの若いさやは、漬物、炒め物などで食すると美味。ナタマメ茶としても利用される。

種類

日本で9月に収穫されたなた豆
タカナタマメCanavalia cathartica Thouars)
南西諸島台湾、中国南部、インド東南アジアに分布。
蔓性の多年草で大型。海岸近くに生育する。
タチナタマメ/ジャック・ビーン(Canavalia ensiformis (L.) DC., Jack-bean
立性の多年草で大型。
アカナタマメ/ソード・ビーン (Canavalia gladiata, Sword Bean)
シロナタマメ/ソード・ビーン (Canavalia gladiata (Jacq.) DC. f. alba (Makino) Ohashi, Sword Bean)
ハマナタマメ (Canavalia lineata (Thunb.) DC.)
本州千葉県山形県以西)/四国/九州、南西諸島/小笠原諸島に分布。
蔓性の多年草で小型。熱帯/亜熱帯の海岸近くに生育する。
ナガミハマナタマメ/ベイ・ビーン(Canavalia rosea (Sw.) DC., Bay Bean)
九州以南、亜熱帯、熱帯に分布。
汎熱帯海流散布植物(熱帯域で海流により地球一周規模の分布)。

脚註

  1. ^ a b c d e Weblio三省堂大辞林「なた まめ [0] 【鉈▼豆・刀▽豆】」”. 2018年8月10日閲覧。
  2. ^ 藤井 義晴、「未利用植物の有効利用と調理科学への期待」、『日本調理科学会誌』Vol. 41 (2008) No. 3 p. 204-209
  3. ^ 『新編 食用作物』 星川清親 養賢堂 昭和60年5月10日訂正第5版 p548

関連項目

外部リンク