イカナゴ
イカナゴ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Ammodytes personatus Girard, 1856 | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Japanese sand lance |
イカナゴ(玉筋魚、鮊子 Ammodytes personatus)は、スズキ目 ワニギス亜目イカナゴ科の魚類。様々な地方名があり、稚魚は東日本で「コウナゴ、コオナゴ(小女子)」[1][2]、西日本で「シンコ(新子)」。成長したものは北海道で「オオナゴ(大女子)」、東北で「メロウド(女郎人)」、西日本では「フルセ (古背)」、「カマスゴ(加末須古)」、「カナギ(金釘)」などと呼ばれる。イワシなどと並んで沿岸における食物連鎖の底辺を支える重要な魚種である。季語、晩春。
分布と生態
北半球の寒帯域から温帯域を中心に熱帯域まで、世界中に5属18種が分布する。沿岸の粒径0.5mmから2.0mmの砂泥底に生息し、主にプランクトンを餌としている。
日本産イカナゴは移動性が小さく各地に固有の系統群が存在している。
北方系の魚であるため温暖な水域では夏には砂に潜って夏眠を行う。
水深10-30mの砂底に粘着質の卵を産卵する。産卵期は冬(12月)から翌年春(5月)で寒冷な水域ほど遅くなる。
1歳で10cm程度まで成長し、成熟する。3年から4年で20cm程度まで成長する。
漁獲
日本では沿岸漁業の重要な位置にあり、集魚灯を用いた敷網漁や定置網漁、船曳網により捕獲され、生食や加工用のほか養殖用飼料としても利用される。しかし、乱獲や生息環境の悪化および海砂の採集による生育適地の破壊[3]により、日本各地で漁獲量は激減している。伊勢湾や瀬戸内海では年ごとに生育度合いや推定資源量を調査しその年の漁獲量を決定している[4][5]。
特に、瀬戸内海では夏眠に適した粒度分布の海砂がコンクリートの骨材にも適していたため夏眠水域の海砂が建設資材として大量に採取され、多くの漁場は壊滅的被害を受けた[6][7]。
青森県における禁漁
陸奥湾での漁獲量は1973年に1万トンを越える漁獲であったが、乱獲により1980年代に100トン以下に激減。1990代後半に1000トンを越えるレベルまで一旦回復したが、その後減少をつづけ、2012年には1トンまで減少した。漁獲量の減少に対し青森県が2007年から実施してきたイカナゴ資源回復計画[8]に基づき漁期短縮などを行い資源量の回復を目指したが、回復に失敗し、2012年の親魚量は約1000万尾程度と推定され、適正水準の3億尾[9]を大きく下回っている。そのため、2013年漁期から資源回復のために「集魚灯を使った漁や小型の定置網漁の全面禁漁」を決定した[10][11]。2019年2月に陸奥湾湾口周辺海域で実施された調査では、稚仔が全く採集されなかった[12]。
伊勢湾における禁漁
伊勢湾では冬季に資源調査を行い春の漁獲実施を判断している[13]が、前年末から2月にかけて行われる資源調査の結果2016年以降は稚魚の捕獲数が著しく少なく、ゼロの年度もある為、愛知県及び三重県で禁漁の状態が続いている[14]。
大阪湾のシンコの不漁
大阪湾のイカナゴ(のシンコ)漁は、2016年まで毎年1万トン以上の漁獲があったが、2017年以降には極端な不漁に陥り、2019年1月の仔魚採集調査では1998年以降で最も少ない漁獲であった[15]。実際の漁においても2019年には3日で漁を打ち切るほど低迷した。なお、淡路島以西ではそれなりの漁獲量は維持されている[16]。
調理方法
いかなごの釘煮
兵庫県淡路島や播磨地区から阪神地区にかけての瀬戸内海東部沿岸部(播磨灘・大阪湾)ではイカナゴはいかなごの釘煮という郷土料理で親しまれている。佃煮の一種で、水揚げされたイカナゴを醤油や砂糖(ざらめ糖)、千切りにした生姜などで煮込み、煮汁が減ったところでみりんを加えながら煮汁がなくなるまで数回煮詰めることを繰り返す[17]。この際、箸などでかき混ぜると身が崩れ、団子状に固まってしまうため一切かき混ぜない。炊き上がったイカナゴの幼魚は茶色く曲がっており、その姿が錆びた釘に見えることから「釘煮」と呼ばれるようになったとする説が有力である。「くぎ煮」は神戸市長田区の珍味メーカーである株式会社伍魚福(ごぎょふく)の登録商標である。
解禁と同時に水揚げされた2cmほどのいかなごの幼魚は、鮮度が落ちないように収穫後ただちに釜揚げにされ、店頭に並ぶ。これを新子または新子ちりめんと呼ぶ。釜茹でした後に乾燥させたものはカナギ(小女子)ちりめんと呼ばれる。これより大きいもの、およそ4-5cmの大きさのものを釜茹でしたものはカマスゴと呼ばれ、そのまま酢醤油やからし酢味噌で食べる。この際、一度炙ると香ばしさが出ておいしくなる。
阪神地区、播磨地区では春先になると各家庭でイカナゴの幼魚を炊く光景が見られる。また毎年3月末頃、出荷された釘煮が阪神地区、播磨地区のスーパーに山積みされるようになると、春の訪れとして消費が盛り上がる。明石海峡大橋のたもとにある淡路サービスエリアやJR新神戸駅・新大阪駅、神戸空港、大阪国際空港、関西国際空港などの土産物店でもイカナゴの釘煮は販売されており、生姜味のほか山椒味、唐辛子味のものもみられる。
なお、近畿地方のなかでも、前述の地域を除く他の地域ではイカナゴの釘煮はあまり食されない。例えば京都市ではいかなごの釘煮よりもちりめん山椒が主流である。年配者の中にはイカナゴ自体を下魚として嫌う傾向も散見される。また、前述の通り、一般にいかなごのくぎ煮は、幼魚である新子を調理したものであるが、淡路島などでは成魚であるフルセを調理する地域もある。フルセを調理したものはくぎ煮と明確に区別するため、佃煮の名称で扱われる。
神戸市の垂水区はイカナゴの釘煮発祥の地と呼ばれており、それを示す石碑がジェームス山異人館街に建てられている。ただし、これには異説[18]があり、2013年10月2日には神戸市長田区駒ケ林の駒林神社の大鳥居前に「いかなごのくぎ煮発祥の地」の石碑が建立されている。
いかなご醤油
香川県では、イカナゴを原材料とした魚醤、いかなご醤油がある。かつては「しょっつる」および「いしる」とともに日本三大魚醤と呼ばれた。1950年代に途絶えたが、近年になって少量ではあるが復活生産されるようになった。
脚注
- ^ 日本国語大辞典 第二版「こうなご」の項(漢字表記なし)。
- ^ 広辞苑第5版
- ^ 過去最悪のイカナゴ不漁 四国新聞社 記事:2009年4月26日 閲覧:2013年2月18日
- ^ イカナゴ資源回復計画策定調査 (PDF) 三重県水産研究所
- ^ 瀬戸内海重要水族環境調査(イカナゴの資源管理)
- ^ 大西正明; 古田忠弘; 山田明広; 泉川誉夫; 山下淳二 (1999年12月6日). “海砂報告書まとまる”. 四国新聞社 (香川県高松市) 2011年5月7日閲覧。
- ^ “収奪の記憶 砂と礫、まだらの海底”. 中国新聞社 (広島市). (2011年4月14日) 2011年5月7日閲覧。
- ^ 青森県イカナゴ資源回復計画 (PDF) 水産庁
- ^ 青森県陸奥湾海域におけるイカナゴの豊漁が期待できる親魚量 平成17年度青森県水産総合研究センター事業報告 2006年
- ^ 陸奥湾イカナゴ、今春全面禁漁 東奥日報 記事:2013年2月13日 閲覧:2013年2月18日
- ^ イカナゴ:全面禁漁へ 春の味覚、乱獲で激減 陸奥湾6漁協、特定魚では初/青森 毎日.jp 記事:2013年2月14日 閲覧:2013年2月18日
- ^ 陸奥湾湾口周辺海域のイカナゴ稚仔分布調査結果について (PDF) 青森県産業技術センター水産総合研究 平成31年3月1日
- ^ 明日のためのイカナゴ資源管理 三重県
- ^ イカナゴ情報 愛知県
- ^ イカナゴしんこ漁況予報(平成31年) 大阪府立環境農林水産総合研究所 平成31年2月15日発表 (PDF)
- ^ “漁期わずか3日の大阪湾イカナゴ漁 記録的不漁の要因は”. 神戸新聞. 2019年3月8日閲覧。
- ^ 長田流・正統派くぎ煮/にくてん(長田・未来ガイド誌「nannan」p.24-25) 神戸市(長田区役所)、2021年1月3日閲覧。
- ^ 兵庫県珍味商工協同組合「くぎ煮のルーツ」