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擬声語

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

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日本語の擬声語の例。
英語や漫画で使用されるいびきの擬声語の例。

擬声語(ぎせいご)とは、声などを字句で模倣したものである。本稿では便宜上、擬音語(ぎおんご)と擬態語(ぎたいご)の2つの総称として「擬声語」を見出しに使う。一般的に、擬音語と擬態語を総称してオノマトペという。擬音語は人、動物、物が発する音を表現し、擬態語は音がない雰囲気や状態を表現する[1]

日本語では、擬音語や擬態語は副詞であるが、形容動詞としても用いられる (例「お腹がぺこぺこだ」)[2]。なお、声帯模写(物真似)は、人や動物の声や様子を真似することであり、擬音語ではなく擬態語でもない。

名称

当該概念を表す言葉は、日本語においては統一されていない。

古代ギリシア語の「ὀνοματοποιίαオノマトポイーア[3]」を由来とする英語の「onomatopoeiaオナマタピーァ [4]」およびフランス語の「onomatopéeオノマトペ[5]」を日本語発音にしたオノマトピアオノマトペア[6]オノマトペを用いる場合もある。 日本語訳は数多い。以下、いくつか例を挙げると

  • 「擬声語」 - 『新英和大辞典』 研究社
  • 「物声模倣」 - (同上)
  • 「声喩法」 - 島村龍太郎 『新美辞学』
  • 「擬声法」 - 『日本百科大事典』
  • 「写音法」 - 黒岩大訳述 『雄弁美辞法』
  • 「声喩」 - 増田藤之助 『英和比較・英語修辞学講義』

などがある(『レトリック事典』144-154頁に詳しい)。

日本文部科学省が版行する『学術用語集』は「onomatopoeia」を「擬声語」としているため、本項はこれに準ずる。

擬音語、擬態語を合わせた総称としては、オノマトペ以外に音象徴語(sound symbolism)、象徴詞などの語も用いられる[7][8][9]

擬音語

擬音語は物が発するを字句で模倣したもの。同じ言語でも時代によって異なる。例えば、狂言などで犬の鳴き声は「びよ」と表現される[10]カタカナで表記されることが比較的多い(擬声語と呼ぶこともあるが現在は擬音語の方が一般的である[9]。また、擬音語の下位類の、人や動物が発する声を模した語を擬声語と呼ぶ立場もある)。 なお、擬音語と擬態語との境界は時々截然としない[11]。例えば、「ざあざあ水を浴びる」における「ざあざあ」は、身に降りかかってたてている音だとも、水が際限なく大量に降り注ぐさまを表しているともとれるため、擬音語か擬態語かは決めにくい[12]

ものまねの声帯模写とは異なり、擬音語は必ずしも正確な音を真似ているわけではない(例えば、ピロピロとなっている電子音をピー、キャンキャン鳴く犬をワンワンと言うなど。)。

  • メーメー(の鳴き声)
  • ブーブー(の鳴き声・ブーイング)
  • ドキドキ(心臓の鼓動)
  • ガチャン(ガラスの割れる音、錠がかかる)
  • チリーン(が鳴る音)
  • チン(電子レンジ
  • ドカン(爆発音、衝撃音)
  • ズズー(ラーメンを啜る音)
  • カリカリ(サクサク)(スナック菓子の咀嚼音)
  • ゴロゴロ(
  • トントン(肩たたき、ドアのノック)
  • ドン(ドーン)(花火・衝突など)
  • バタン(ドアの閉まる音など)
  • ガタピシ(機械や道具の滑らかでない動作)
  • ピッ(ポチッ)(機械のボタン動作音など)
  • ピポパ(電話番号の入力、DTMFなど)
  • ガタン(ゴトン)(電車など)
  • ジュー(加熱調理)
  • パチパチ(拍手、焚き火)
  • プシュー(気体の吹き出す音)
  • ズルッ(滑る)
  • ビリビリ(紙が破れる音など)
  • ブリブリ(排便する音など)

なお音声を発する主体が同一の場合であっても、言語が違えば表現も当然違うものになる。また言語によっては存在しない物もある(日本語の号泣表現「うわーん」は英語には存在しない)。

例:が吠える声

擬音語が動詞化・一般名詞化する用例も多数存在する。例えば、幼児期において擬音語をもって対象物を表現する用例が挙げられよう(例:「ワンワン」=、「ブーブー」=自動車)。この他にもコンピュータマウスのボタンを押下する動作を「クリック (click) する」、その鳥が発する鳴き声からカッコウ (en:cuckoo)、タミル語におけるカラス (kaakam) などが挙げられる。

擬態語

状態や感情などの音を発しないものを字句で模倣したものである。(本来、擬声語には含まれない)。 「擬態語」をさらに下位区分して、「きらっ」「ひらひら」「ぶるぶる」のように外面的なありさまを表す「擬容語」、「ガーン」「ぎくり」のように内面的な感情を表す「擬情語」に分類する立場[13]もあるが、厳密な区別は難しい[14]。 また、日本語には「たっぷり」「ちょうど」のように擬態語と一般語彙の中間的なものもある。擬態語の多さは日本語の特徴でもある。

  • ばらばら - 散らばっている様
  • めろめろ - 惚れ込んでいる様
  • たっぷり - 豊かで余裕のある様
  • じろじろ - 何かを見る
  • うようよ
  • ふらふら
  • ゆらゆら
  • くねくね
  • きゅん - (感情)
  • じーん - (感情)
  • むらむら- (感情)
  • キラキラ - 光、輝き
  • ギラギラ - 強烈な光、強烈な輝き
  • そよそよ - 穏やかな
  • メラメラ -
  • モクモク - 漢語由来のモウモウ(濛々)もある
  • ぴかぴか - 、新しさ、きれいである様
  • ぬくぬく - 温かいさまを表す。または怠惰な環境に甘んじるさま。
  • ぐずぐず
  • ぴんぴん
  • よろよろ
  • よぼよぼ
  • へなへな
  • ぎゅっ(と)
  • ぞっ(と)
  • ふわふわ
  • ほんわか
  • くるくる
  • ツルツル
  • さらさら
  • ちょうど - 「丁度」は当て字で、元来はに収まる擬態語、または擬音語。
  • しいん/しーん - 静寂。漢語由来の「しんしん」(深々、森々、沈々)や、それが変化した「しんと」が由来とされるが、生理的耳鳴りの擬音語であるとする説もある。
  • ◯ぶ◯ぶ - 山口仲美は、歴史的に、この形の擬音語・擬態語(がぶがぶと・ざぶざぶと、など)はどれも水分に関係のある音や状態をうつした語であることを発見した[15]

日本語の擬声語

言語学ではオノマトペの研究は立ち遅れた分野であったが、それはオノマトペが日常的で格式に欠けるとか、子供じみた幼稚なことばであるといった先入観や偏見によるためではないかと思われる[16]。しかし1980年代から、田守育啓、ローレンス・スコウラップ、浜野祥子らにより日本語でのオノマトペ研究は飛躍的に発展した。それ以前にも金田一春彦[17]、西尾寅弥らによる研究などがあった。

参考文献

脚注

出典

  1. ^ 広辞苑、大辞泉。
  2. ^ 小野正弘編『擬音語擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』小学館、2007年、622頁。
  3. ^ 発音:紀元前5世紀のギリシア [onomatopo͜ɪ.í.a͜a]15世紀のコンスタンティノープル[onomatopiía]
  4. ^ 発音:[ˌɒnɵmætəˈpiː.ə] もしくは (主に NZ) [ˌɒnɵmætə-ˈpeɪə]
  5. ^ 発音:[ɔ.nɔ.ma.tɔ.pe]
  6. ^ 新村出編 『広辞苑』 第五版、岩波書店、1998年11月11日初刷、392頁。
  7. ^ 鈴木一彦・林巨樹監修『概説日本語学』明治書院、1995年、112頁。
  8. ^ 玉村文郎編 『講座日本語と日本語教育7 日本語の語彙と意味』明治書院、1990年、139頁。
  9. ^ a b 飛田良文他編集 『日本語学研究大事典』明治書院、2007年、145頁。
  10. ^ 山口仲美『犬は「びよ」と鳴いていた―日本語は擬音語・擬態語が面白い』(光文社新書、2002年)。
  11. ^ 国語学会編『国語学大事典』東京堂出版、1991年、第7版、214頁。
  12. ^ 小野正弘編『擬音語擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』小学館、2007年、13頁。
  13. ^ 「擬音語・擬態語」にはどんな種類がある? 国立国語研究所
  14. ^ 小野正弘編 『擬音語擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』 小学館、2007年、12頁。
  15. ^ 山口仲美 「中古象徴詞の語音構造--清濁に問題のある語例を中心に--」( 『国語学』第93集、1973年)14-17頁。
  16. ^ 田守育啓・ ローレンス・スコウラップ 『オノマトペ 形態と意味』くろしお出版、1999年、1頁。
  17. ^ 金田一春彦著・浅野 鶴子編 『擬音語・擬態語辞典』角川小辞典〈12〉、角川書店、1978年
  18. ^ 「ちんちん千鳥」北原白秋作詞・近衛秀麿作曲の歌から。

関連項目

外部リンク