アンソニー・ガレア
アンソニー・ガレア(Anthony Galea, 1959年8月19日 - )は、カナダのオンタリオ州トロント出身の医師。カナディアン・フットボール・リーグ(CFL)のチーム、トロント・アルゴノーツの専属医を務めていた。
経歴
トロントを拠点に活動していたガレアは、独自に開発したPRP療法(血小板を増強する効果があるといわれるプラズマ療法)で、怪我の回復を3倍から10倍に早める「ミラクルマン(奇跡を起こす男)」と称された著名なスポーツ医であった[1]。
アメリカ・スポーツ界の薬物スキャンダル
2009年9月、アメリカ合衆国のバッファローで、ガレアの助手を務めていた女性の車からヒト成長ホルモン(以下HGH。運動能力向上薬物であり、尿検査では検出が難しい。怪我の回復を大幅に早める効果があるとされる)などの違法薬物が発見される。女性の供述により、ガレアがアメリカのスポーツ選手に禁止薬物を提供していた疑いが強まり、10月15日にカナダの捜査当局はガレアを逮捕した[2][3]。12月にはアメリカの連邦捜査官もガレアに対する捜査を開始した。ガレアはタイガー・ウッズに代表される多数の有名スポーツ選手を顧客として抱えていたため、その逮捕はアメリカのスポーツ界全体を巻き込んだ一大スキャンダルへと発展した[3]。
ガレアは2011年7月6日にHGHなどの薬物をプロスポーツ選手を治療する目的で無許可でアメリカへ輸送した罪、連邦捜査官に対する虚偽供述の罪などを認め[4]、同年12月16日に実刑無しの保護観察処分1年の判決が下った[5]。
アメリカの4大プロスポーツであるNFL、MLB、NBA、NHLは、アナボリックステロイドに対する尿検査は行っているものの、HGHの血液検査は行っていなかった[3]。一連の騒動をきっかけに、MLBのバド・セリグコミッショナーはマイナーリーグでHGHの検査を導入する事を決定した[6]。MLBは2011年11月にアメリカの主要プロスポーツリーグで一番早くシーズンオフとスプリングトレーニング中に限定してHGHの血液検査を導入し、2013年1月10日にはシーズン中でも抜き打ちの血液検査を実施する事でMLB機構側とMLB選手会側が合意した[7]。
主な顧客
MLB
NFL
その他
脚注
- ^ “薬物で揺れる米スポーツ界、NFLコミッショナーの決断は?”. NFL JAPAN.COM. 2013年11月22日閲覧。
- ^ a b “ウッズとA・ロッドを結ぶ「点と線」。薬剤スキャンダルの新展開”. Sports Graphic Number. 2013年11月22日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j “Doctor Who Treated Top Athletes Is Subject of Doping Inquiry” (英語). The New York Times. 2013年11月22日閲覧。
- ^ “Dr. Anthony Galea Pleads Guilty: Tiger Woods, A-Rod Doctor Admits To Smuggling Drugs Into US” (英語). The Huffington Post. 2013年11月22日閲覧。
- ^ “Anthony Galea receives no jail time” (英語). ESPN.com. 2013年11月22日閲覧。
- ^ “マイナーでHGH検査へ 米大リーグ機構”. サンケイスポーツ. 2013年11月22日閲覧。
- ^ “Baseball to Expand Drug-Testing Program” (英語). The New York Times. 2013年9月22日閲覧。
- ^ “Anthony Galea says he treated Alex Rodriguez as New York Yankees eager to talk to star slugger” (英語). New York Daily News. 2013年11月22日閲覧。
- ^ a b c d “Yankees star Alex Rodriguez ready to cooperate as his attorneys discuss date to speak with feds” (英語). New York Daily News. 2013年11月22日閲覧。
- ^ “Doctor Under Investigation Has Treated Baseball Players” (英語). The New York Times. 2013年11月22日閲覧。
- ^ “Doctor Who Treated Now Battling to Save Career” (英語). The Guardian. 2013年11月22日閲覧。