マイナーリーグ

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マイナーリーグ英語: Minor league)の直訳は「小同盟」だが、多くはリーグ戦形式で対戦するスポーツの最上位リーグに対する下位リーグ、あるいは小規模なリーグを意味する。通常は北米プロ野球リーグの最高峰「メジャーリーグベースボール」の傘下リーグとなっている「マイナーリーグベースボール」を指して用いられる。

マイナーリーグベースボール[編集]

マイナーリーグベースボール
Minor League Baseball
競技 プロ野球
創立 1869年
参加チーム 160 (+85) [1](2019年)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
カナダの旗 カナダ
メキシコの旗 メキシコ
ドミニカ共和国の旗 ドミニカ共和国
公式サイト MiLB.com

マイナーリーグとして最も名が通っているのが、メジャーリーグベースボール(以下、MLB)傘下のマイナーリーグベースボールMinor League Baseball, MiLB)である。マイナーリーグベースボール(以下、MiLB)は、MLBとは独立に運営されている北アメリカのプロ野球リーグのうち、MLBの傘下に入る協定をしているリーグを指す[2]

  1. AAA / 3A (トリプルA)
  2. AA / 2A (ダブルA)
  3. A+ / A Adv. (クラスA アドバンスド、 High A)
  4. A / A Full (クラスA、 Low A)
  5. A- / A Short (クラスA ショートシーズン)
  6. R+ / ROA (ルーキー アドバンスド)
  7. R / ROK (ルーキーリーグ)

上位順に7階級のクラスに分かれており、各クラス内のチームで複数のリーグを組み(後述)、MiLB公式戦を開催している。レギュラーシーズン期間は、A Fullクラス以上が4月から約5ヶ月間、A Shortクラス以下が6月から約3ヶ月間。いくつかのリーグでは2シーズン制を採用している。またMLB同様、プレーオフオールスター戦も開催される。2018年からは延長タイブレーク[3]が導入されている。

MLB所属チームは、各クラスのMiLB所属チームを直営するか、または各地域の既存の独立資本チームと選手育成契約 (Player Development Contract, PDC) を結び、選手・コーチを派遣することで、MiLB所属の計7-9チーム[4]を自らの下部組織としている[5]。なお、メキシカンリーグもMLBのAAAクラス相当になっているがMLBの傘下協定には入っておらず、個々のチームもMLB所属チームと選手育成契約をしていない。

ルーキーリーグ
最下級のルーキーリーグはMLB球団直営であり、ドミニカン・サマーリーグ (DSL) およびベネズエラン・サマーリーグ (VSL) では「アカデミー」と呼ばれるそれぞれの国に在住する下部組織の選手が所属する(VSLは2016年をもって終了)。またアメリカ国内のアリゾナリーグ (AZL) およびガルフ・コーストリーグ (GCL) では選手育成のみを目的とし、公式戦はスプリングトレーニングキャンプ地で実施され、入場料も徴収していない[6]
ルーキーリーグでは、各MLB球団がその年の所属選手数によってチームを分割・統合するケースがあり[7]、リーグ公式戦の登録チーム数が年度によって増減する場合もある。

所属選手[編集]

MiLB所属チームには以下の選手が在籍し、練習や公式戦を通して選手の育成や調整を行っている。

  1. 契約先のMLB所属チームがドラフトFAなどで獲得した選手、またはMiLB所属チームが独自に獲得した選手のうち、40人枠入りしていない選手(マイナー契約選手)
  2. 40人枠入り(メジャー契約)しているが、アクティブ・ロースターから外されている(マイナー降格中)選手
  3. 40人枠入りしているが、負傷者リストに登録され、リハビリ中の選手

戦力として有望な選手は随時上位クラスへと昇格していくが[8]、所属MLBチームの選手契約事情などにより枠が空かず、実力があり成績を残していても中々MLBに昇格できないケースが多々ある[9][10]。このような有望選手が同じMLBチームの下部組織で飼い殺し状態になってしまうことを防ぐため、「ルール5ドラフト」「マイナーリーグFA」「マイナー・オプション」といった規定が設けられ、MLB昇格のチャンスを得られるようにしている。

MLBドラフトインターナショナルFAなどで毎年多数の選手がチーム傘下に加入し、且つ年齢を重ねるたびに所属可能なクラスも限定されていくため(後述)、必然的にMiLB在籍中に契約解除となる選手も多く、生存競争は厳しいものになる[11]

ロースター[編集]

各クラスに所属可能な選手や人数には制限があり、基本的に在籍年数や年齢を重ねた選手ほど下位クラスには所属できなくなる。各クラスのリザーブリスト(MLBの40人枠に相当)、アクティブ・ロースターの人数制限、および他の制限などは以下のとおり(2019年現在)[12]

クラス リザーブ
リスト
アクティブ
ロースター
他の選手登録制限 試合数
AAA 38人以内 24人 140
AA 37人以内 24人 140
A+ 35人以内 25人 *マイナー在籍5年以上の選手は2人まで 140
A 35人以内 25人 140
A- 35人以内 30人 *マイナー在籍4年以上の選手は3人まで
*23歳以上の選手は4人まで
76
R+ - 35人 *マイナー在籍3年以上の選手は所属不可
*21歳以上の選手は12人まで
*23歳以上の選手は2人まで
68 - 76
R 35人 *マイナー在籍2年以上の選手は所属不可
*20歳以上の選手は8人まで
56 - 72
(参考)
MLB
40人以内 26人 162

球団運営[編集]

ルーキーリーグおよびMLB所属チームが直接所有している一部チームを除き、大半のMiLB所属チームは独立資本であり、本拠地を置くアメリカカナダの地方都市で地域密着型の独立採算制の運営を行っている。MLB所属チームと契約した選手やコーチの給料や野球用具代はそれぞれのMLBチームから支払われているものの、MiLB所属球団が独自に獲得・契約した選手の給料やそれ以外の経営に必要な経費は、自らの試合チケットやグッズ、広告枠の販売によって得る収入からまかなわれるのが原則である[5]

MLBチームとの関係は流動的なものであり、あるMLBチーム傘下であったMiLBチームが次のシーズンには別のMLBチームの傘下になるということもある。なお、アメリカで最初にこのシステムを導入したのはセントルイス・カージナルスである。

選手待遇[編集]

MiLB在籍選手のほとんどはマイナー契約選手だが、その年俸水準はメジャー契約選手に比べて相当に低い[13]。金額は下位クラスの選手ほど安く、また原則マイナー契約選手は数ヶ月あるシーズン期間中のみ給与が発生するため、AAAなど上位クラスの在籍選手を除いて、年額は軒並み10,000ドルに届いておらず[10](2019年現在)、アメリカ法が定める法定最低賃金も下回っている(ただし、職業野球選手労働基準法の適用対象外であり、違法状態ではない)[14]

年俸の他には、必要最低限の野球用具、および遠征の際に1日につき20-25ドル程度のミールマネー(食事代)が支給されるだけである[5][15][16]。ドラフト上位指名で高額な契約金を手にしている場合などを除き、マイナー契約でプレーし続けている選手が給料のみで生活するのは困難であり、多くの選手はシーズンオフにアルバイトで別に収入を得たり、恋人などの家に居候して食事の世話をしてもらうことで生活のやりくりをしている。

選手が毎日の食事にハンバーガー程度のものしか食べられないということから「ハンバーガー・リーグ」という呼び方がされている[17][18](メジャーリーグは対比して「ステーキ・リーグ」と呼ばれる)。ホームゲームのときは試合前・試合後、ビジターのときは試合前に球団が食事を用意してくれるものの、それ以外では、実際に多くの選手がハンバーガーやホットドッグなどを食べているといわれる[19]。時には球団から支給される食事がリンゴ1個のこともある[20][21]。移動もメジャーリーグの球団が専用飛行機で移動し、機内でも一人一列を割り振られるのに対し、MiLBのチームはバスでの移動が基本で、長距離を飛行機移動する場合でもエコノミークラスの利用が通常である。カテゴリーが上がれば、機内に飲食物が用意されており、選手たちはそれを自由に食べることができるが、上位リーグほど移動距離が長い傾向があり、選手たちにとっては過酷な移動となる[22]。映画『フィールド・オブ・ドリームス』でバート・ランカスター演じるアーチー・グラハムが「マイナーの生活はこりごりだった」(実際にあった発言)と語っているのはこのためである。ただ、AAレベル以上であれば、クラブハウスには飲物、アイスクリームフルーツインスタント食品などが備えられており、選手は自由に飲食することができる。また、遠征の際は、スタッフがグラブやバットなどを本拠地スタジアムのロッカーから遠征先スタジアムのロッカーに移送し、ユニフォームをハンガーにかけた状態にまで整えてくれる。

階級と所属リーグ[編集]

クラス 所属リーグ 創設
トリプルA
(AAA)
アメリカ合衆国の旗インターナショナルリーグ International League 1886年
アメリカ合衆国の旗パシフィック・コーストリーグ Pacific Coast League 1903年
ダブルA
(AA)
アメリカ合衆国の旗イースタンリーグ Eastern League 1923年
アメリカ合衆国の旗サザンリーグ Southern League 1964年
アメリカ合衆国の旗テキサスリーグ Texas League 1902年
アドバンスドA
(A+)
アメリカ合衆国の旗カリフォルニアリーグ California League 1941年
アメリカ合衆国の旗カロライナリーグ Carolina League 1945年
アメリカ合衆国の旗フロリダ・ステートリーグ Florida State League 1919年
クラスA
(A)
アメリカ合衆国の旗サウス・アトランティックリーグ South Atlantic League 1980年
アメリカ合衆国の旗ミッドウェストリーグ Midwest League 1954年
ショートシーズンA
(A-)
アメリカ合衆国の旗ニューヨーク・ペンリーグ New York-Penn League 1939年
アメリカ合衆国の旗カナダの旗ノースウェストリーグ Northwest League 1955年
ルーキー・アドバンスド
(R+)
アメリカ合衆国の旗アパラチアンリーグ Appalachian League 1937年
アメリカ合衆国の旗パイオニアリーグ Pioneer League 1939年
ルーキー
(R)
アメリカ合衆国の旗アリゾナリーグ(AZL) Arizona League 2009年
アメリカ合衆国の旗ガルフ・コーストリーグ(GCL) Gulf Coast League 2009年
ドミニカ共和国の旗ドミニカン・サマーリーグ(DSL) Dominican Summer League 2009年
ベネズエラの旗ベネズエラン・サマーリーグ(VSL) Dominican Summer League 1989年

他の関連リーグ[編集]

野球以外の北アメリカのプロスポーツリーグ[編集]

野球以外の北アメリカのプロスポーツリーグの場合は以下のとおり。

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ ルーキーリーグ(MLB直営)が計85チーム。他6クラスのリーグ(傘下チーム)が計160チーム。※2019年現在
  2. ^ Doug Bernier. “WHAT IS MINOR LEAGUE BASEBALL?” (英語). Pro Baseball Insider. http://probaseballinsider.com/what-is-minor-league-baseball/ 2020年2月14日閲覧。 
  3. ^ 延長10回以降は全ての回を無死走者二塁から始める。
  4. ^ A Full級以上では、各MLB球団が傘下MiLBチームを1ずつ保有している(各クラス30チームが所属)。一方、A Short級以下では特定のMLB球団が1チームも保有していなかったり、逆に複数チームを保有しているMLB球団が存在したりする。例えばシンシナティ・レッズ(2019年)は、A Short級に傘下チームを1つも持たず、R+級に2チーム、R級に2チーム、合計で8チームを傘下に持っている。- Teams by Affiliation” (英語). MiLB.com. 2020年2月29日閲覧。
  5. ^ a b c 並木裕太 (2014年10月6日). “米マイナーに、7億円の黒字球団!?日本の二軍と全く違う経営方法とは。” (日本語). Number Web. 2020年1月8日閲覧。
  6. ^ 阿佐智 (2017年9月29日). “最底辺よりも下。「プロ野球難民」が集うペコス・リーグって何だ?”. Sportiva Web(集英社. https://sportiva.shueisha.co.jp/clm/baseball/mlb/2017/09/29/___split_12/ 2020年2月23日閲覧。 
  7. ^ 例えば「DSL Indians 1」「DSL Indians 2」など。
  8. ^ 荒川祐輔 (2004年9月16日). “荒川祐輔メジャー挑戦記”. Number Web. https://number.bunshun.jp/articles/-/14574 2020年2月14日閲覧。 
  9. ^ 契約上マイナー降格させられない選手、MLB在籍5年を経過してマイナー降格拒否権を取得した選手、マイナー・オプション切れのため容易にアクティブ・ロースターから外せない選手、DFAの措置をして40人枠から外すとウェイバー公示した際にClaimされてしまう(他球団に奪われる)可能性が高い選手、などがMLBのロースターを埋め尽くしているチームは、マイナー契約の好選手をメジャー昇格させたくてもその選手枠を空けることが困難になる。
  10. ^ a b “MLBがマイナーの最低賃金引き上げを通達 でも、3Aで年約150万円の安さ”. Full-Count. (2020年2月15日). https://full-count.jp/2020/02/15/post690984/ 2020年2月15日閲覧。 
  11. ^ 菊地慶剛 (2012年12月23日). “マイナーリーグは本当に過酷なのか?大谷翔平がもし渡米していたら”. Number Web. https://number.bunshun.jp/articles/-/315202 2020年2月14日閲覧。 
  12. ^ Transaction Glossary” (英語). Cot's Baseball Contracts. 2020年2月14日閲覧。
  13. ^ 40人枠(メジャー契約)と、40人枠外(マイナー契約)では最低保証年俸に大きな差がある。2020年時点で、40人枠選手の最低保証年俸は46,000 - 91,800ドル、更に26人枠入りしていれば563,500ドル。マイナー契約では10,000ドル未満となることも。Transaction Glossary” (英語). Cot's Baseball Contracts. 2019年12月4日閲覧。 / “あまりの格差に3A選手が給料明細公開 年俸約88万円が米で話題「夢へと近づく一方で…」”. Full-Count. (2019年10月9日). https://full-count.jp/2019/10/09/post566270/ 2019年10月9日閲覧。 
  14. ^ Go Kakutani (2019年3月21日). “マイナーリーガーの待遇改善へ MLB選手会も後押し、ブルージェイズの決断が風穴開けるか”. ベースボールチャンネル(株式会社カンゼン). https://www.baseballchannel.jp/mlb/63078/ 2020年2月15日閲覧。 
  15. ^ 日本人マイナー選手のカネと待遇ゲンダイネット 2013年04月02日
  16. ^ 【MLB】さよならハンバーガー・リーグ!? - 野球:週刊ベースボールONLINE
  17. ^ 建山義紀の ココだけの話
  18. ^ GG佐藤が明かす「プロ野球とお金」
  19. ^ [虎四ミーティング~限界への挑戦記~]坪井智哉(プロ野球コーチ)<前編>「過酷な米独立リーグ生活」
  20. ^ 「球団から支給された食事が、りんご1個だったことも」元プロ野球・門倉氏が語ったマイナーの過酷な食事情
  21. ^ 待遇格差は聞いていたが マイナーの昼飯リンゴ1個の現実
  22. ^ 新庄剛志、初めてのマイナー暮らし 過酷な環境に、ぼくが感じたこと - スポーツナビ
  23. ^ 詳しくはen:Association of Professional Football Leaguesを参照

関連項目[編集]

外部リンク[編集]