20式5.56mm小銃

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20式5.56mm小銃
試作型のHOWA 5.56
20式5.56mm小銃
種類 小銃
製造国 日本の旗 日本
設計・製造 豊和工業
年代 2010年代
仕様
口径 5.56×45弾
使用弾薬 5.56㎜NATO弾
装弾数 30発
作動方式 ガス圧作動方式
全長 854mm (銃床最小 783mm)
重量 約3.5kg
有効射程 89式より長い
歴史 
設計年 2015年
製造期間 2020年-
配備先 陸上自衛隊
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20式5.56mm小銃(にいまるしき5.56ミリしょうじゅう[1]、ふたまるしき5.56ミリしょうじゅう[2]:Howa Type 20 Assault Rifle、HOWA 5.56)は、陸上自衛隊が制式化した自動小銃である。

2020年令和2年)、豊和工業が89式5.56mm小銃の後継として開発していた「HOWA 5.56」が20式5.56mm小銃として制式化され、調達が開始された[3][4][5][6]

開発

2014年8月、陸上自衛隊が89式小銃に代わる新型小銃の採用を検討していると報じられた。 この時点での候補としては、H&K G36H&K HK416ステアーAUGFN SCARといった外国製小銃が挙げられる一方で、国産小銃の新規開発も模索されていた[7]

2015年、防衛省は試験用に各種外国製小銃を調達し、同時に豊和工業との間でも試験用小銃の納入契約を行った。 調達契約の内容は以下の通りである[8]

名称 数量 契約日 価格 (¥)
小火器(M型) 3 2015/1/29 5,853,600
試験用小火器(S型516) 8 2015/2/2 12,798,000
試験用小火器(S型716) 7 2015/2/2 11,394,000
試験用小火器(国産) 1 2015/2/23 98,425,800
試験用小火器(G型V) 5 2015/3/13 2,311,200
試験用小火器(HK型) 5 2015/3/13 6,858,000
試験用小火器(SC型H) 5 2015/3/31 5,508,000
試験用小火器(SC型L) 5 2015/3/31 4,398,840

「S型・516・716」はSIG516とSIG716、「G型・V」はG36V、「HK型」はHK416かHK417、「SC型・H・L」はSCAR-HとSCAR-Lを指していると考えられている。 なお、「M型」についての詳細は不明である[9]

豊和工業は外国製小銃の試験と同年の5月15日に自社の小銃の意匠登録を出願した。 さらにその後、2015年9月25日には更新された意匠も登録した[10][11][12]

2018年に防衛省は試験用の小火器を別途調達した。 調達契約書には次のように示されている[8]

名称 数量 契約日 価格 (¥)
試験用小火器(YS型) 8 2018/5/30 10,411,200
試験用小火器(K型) 8 2018/6/1 50,137,920
試験用小火器(YH型) 8 2018/7/10 14,715,000

HOWA 5.56(K型)、HK 416(YH型)、SCAR-L(YS型)の三種類まで絞り込まれた後、2019年12月6日にHOWA 5.56が選ばれたと公表された[13]。 その後の報告書によると、2018年の内に候補の小銃について2つの評価が行われたとされている。 第一段階の評価では有効射程距離や精度など実用上の性能に焦点が当てられた。 第二段階の評価では、兵器の性能に加えて兵站とコストの面から審査された。

3つの小銃はすべて陸上自衛隊の要件を満たしていたため、二次評価で最高点を獲得したHOWA 5.56 が選択された。 量産単価は維持費・運用費を含めて28万円とされている。15万丁調達した場合のライフサイクルコストは439億円と見積もられている[14]

2020年の防衛予算によると、第一回目の調達では3,283丁が9億円で購入されている[15]

また、防衛省は2020年5月18日に報道陣に対してHOWA 5.56を「20式5.56mm小銃」として採用したことを発表した[16][17][18][6]

特徴

20式は、SCAR Lと同様のショルダーパッドとチークパッドを備えた伸縮式銃床やHK416同様のアンビタイプのセーフティセレクター、折畳式の照準器といった現代的な特徴を有するほか、89式と比較して耐久性や火力の面においても改良が加えられていると言われている[15]。 また、弾倉STANAG マガジンとの互換性もあると考えられている[19] 。銃身は89式よりも僅かに短縮されて閉所における取り回しが容易になったほか、ハンドガード部にはM-LOKモジュラーレールシステム(ピカティニーレール)を採用しており拡張性が格段に向上されている[9][20]。作動方式はショートストロークピストン式を採用しているとされている[11]。そして、離島防衛を想定し、海水でも錆びにくく、すぐに排水して発射できるようになっている[21]

20式の外見は89式と比較して近代的なデザインになっている。外見の参考元についてはいくつかの憶測があり、日本の特殊部隊などで調達されてきた前例がある欧州製の小銃に影響を受けたと考えられている。また、海外のメディアなどではFN SCARやCZ 805 BRENH&K HK433と比較されることがある[9][11][20][22]

セレクターについては、先代の89式、64式同様「ア-タ-レ」(安全装置、単発、連発)が採用されているが、89式で採用されていた3点バーストは採用されていない[23][24]

調達と配備

先代の正式採用小銃であった89式小銃は陸上自衛隊に約14万5千丁配備されており、20式小銃についてもほぼ同等の約15万丁の調達が計画されている[25]

配備先については水陸機動団に優先的に配備するほか、全国の普通科部隊を中心に配備が進められる予定である[26]。また89式小銃とほぼ同数の調達を予定していることから、普通科部隊への配備完了後順次後方支援部隊への配備も進むものと思われる。

陸上自衛隊以外からの調達計画は2020年現在公表されていないが、陸上自衛隊同様に89式小銃を採用していた海上自衛隊海上保安庁も将来的に20式小銃を採用する可能性がある。

陸上自衛隊の20式小銃調達数
予算計上年度 調達数 予算額
令和2年度(2020年) 3,283丁 9億円
合計 3,283丁 9億円

脚注・出典

  1. ^ 陸上自衛隊では数字の2を「に」と読む
  2. ^ 海上自衛隊では数字の2を「ふた」と読む
  3. ^ “陸自、小銃を31年ぶりに更新 安定性、耐水性向上 拳銃は38年ぶり”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年5月18日). https://mainichi.jp/articles/20200518/k00/00m/040/097000c 2020年5月18日閲覧。 
  4. ^ “約30年ぶり新小銃 陸自、離島防衛に備え”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年5月18日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59233910Y0A510C2000000/ 2020年5月18日閲覧。 
  5. ^ “新「20式小銃」公開 排水性向上、拳銃も更新―陸自”. 時事通信社. (2020年5月18日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051800701 2020年5月18日閲覧。 
  6. ^ a b 陸上自衛隊 (2020年5月18日). “陸上自衛隊さんのツイート: "【#陸上自衛隊 の #新小銃 及び #新拳銃】  新たな装備品として「20式5.56mm小銃」と「9mm拳銃SFP9」が導入されました。 新小銃は、可変型の頬・肩当て、銃身を採用し、新拳銃は、形状が選択可能なグリップを採用することで、両者とも相用性が向上! 陸上自衛隊は新たな次元へ… https://t.co/zqM09PLkXS"”. Twitter. 2020年5月18日閲覧。
  7. ^ “JGSDF considers introduction of new rifle”. Tokyo D&A Review. (2014年8月19日). http://www.tokyo-dar.com/news/692/ 2020年3月12日閲覧。 
  8. ^ a b Disclosure of information on contracts (for central procurement)”. Ministry of Defense (Japan). 2020年3月15日閲覧。
  9. ^ a b c 自衛隊の次世代型モジュラーライフルを考える(前編) ― 「ポスト89式」を巡るこれまでの議論を基に”. JISAKUJIEN.org (2016年6月26日). 2020年3月15日閲覧。
  10. ^ 意匠登録1526204”. J-PlatPat (2015年). 2020年4月1日閲覧。
  11. ^ a b c Chaka (2018年7月4日). “豊和工業が出願していた新型自動小銃らしきものの意匠が公開”. Military Blog. https://news.militaryblog.jp/web/Potential-JSDF-New-Service-Rifle/Design-filed-by-HOWA-was-released.html 2020年3月31日閲覧。 
  12. ^ Design Act”. Japanese Law Translation. 2020年3月31日閲覧。
  13. ^ “新小銃・新拳銃の決定について”. Ministry of Defense (Japan). (2019年12月6日). https://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/12/06b.html 2020年1月30日閲覧。 
  14. ^ “新たな重要装備品等の選定結果について”. Ministry of Defense (Japan). (2019年12月26日). https://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/12/26a.html 2020年3月17日閲覧。 
  15. ^ a b 我が国の防衛と予算-令和2年度予算の概要-”. 防衛省. p. 20 (2020年3月30日). 2020年6月30日閲覧。
  16. ^ “陸自、小銃を31年ぶりに更新 安定性、耐水性向上 拳銃は38年ぶり”. 毎日新聞 (毎日新聞社). (2020年5月18日). https://mainichi.jp/articles/20200518/k00/00m/040/097000c 2020年5月18日閲覧。 
  17. ^ “約30年ぶり新小銃 陸自、離島防衛に備え”. 日本経済新聞 (日本経済新聞社). (2020年5月18日). https://www.nikkei.com/article/DGXMZO59233910Y0A510C2000000/ 2020年5月18日閲覧。 
  18. ^ “新「20式小銃」公開 排水性向上、拳銃も更新―陸自”. 時事通信社. (2020年5月18日). https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051800701 2020年5月18日閲覧。 
  19. ^ Nash, Ed (2019年12月11日). “JAPANESE SELF DEFENCE FORCE SELECTS NEW RIFLE AND PISTOL; NEW MG ALSO LIKELY”. Military Matters. http://militarymatters.online/japanese-self-defence-force-selects-new-rifle-and-pistol-new-mg-also-likely/ 2020年3月20日閲覧。 
  20. ^ a b 陸上自衛隊の新小銃(HOWA 5.56)・新拳銃(H&K SFP9)が決定!”. hyperdouraku (2019年12月11日). 2020年4月2日閲覧。
  21. ^ 陸自30年ぶり新型小銃 引き金近くに「ア・タ・レ」”. テレ朝news. 2020年6月28日閲覧。
  22. ^ Juraszek, Przemyslaw (2020年1月30日). “Weapons: Japan Upgrades Small Arms”. StrategyPage. https://www.strategypage.com/htmw/htweap/articles/20200130.aspx 2020年4月2日閲覧。 
  23. ^ 20式5.56mm小銃、9mm拳銃SFP9 自衛隊新小銃と新拳銃の名称決定! 実銃解説”. ハイパー道楽 (2020年5月18日). 2020年6月29日閲覧。
  24. ^ 陸上自衛隊 新小銃『20式5.56mm小銃』報道公開!”. アームズマガジンウェブ (2020年5月18日). 2020年6月29日閲覧。
  25. ^ 陸自30年ぶり新型小銃 引き金近くに「ア・タ・レ」”. テレ朝news. 2020年6月28日閲覧。
  26. ^ INC, SANKEI DIGITAL (2020年5月18日). “陸自新小銃「20式」公開 離島防衛想定、海水に強く”. 産経ニュース. 2020年6月28日閲覧。

関連項目

外部リンク