腔発

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腔発を起こしたと思われる、ドイツの火砲(10.5cm leFH 18
砲身が破裂し、大きく左右に裂けている

腔発(こうはつ)とは、砲弾榴弾もしくは榴散弾)が砲身内で爆発する事故のことである。 大日本帝国海軍海上自衛隊では膅発(とうはつ)、あるいは膅中爆発(とうちゅうばくはつ)や膅内爆発(とうないばくはつ)と呼ばれる。「とうないばくはつ」を筒内爆発とする表記は、文字を当用漢字で代用したものである。

概略[編集]

軍関係者に最も恐れられている事故の1つである。腔発が起きると、拳銃程度であっても使用者は手に重大な損傷を負い、機関銃のような大型のものではその程度が軽くても砲身は膨張して使用不能となり、激しい時には砲身が破裂し、砲員が死傷することもある。軍用機の機関砲で発生しその程度が大きかった場合は、機体に深刻なダメージを与えてそのまま墜落することもありえる。艦砲においては、砲盾より内側や砲室内部で発生した場合、砲塔が破損するが、砲口に近い場合には付近の兵員を殺傷はするが砲身を交換すればその後の射撃にほとんど支障はない[1]。その原因はさまざまで、古くから原因究明が行われており、現在では滅多に起きることはないが第二次世界大戦以前の時代では頻発していた。原因には弾丸、信管、砲などの製造不良によるものや過剰な使用や汚損によるものなど多様な原因による。

日露戦争前、対露作戦準備の一環として、海軍大臣だった山本権兵衛は腔発事故が多数発生することを見越しイギリスからの石炭輸入に際して貨物船の船底に12inch砲の砲身を多数隠し極秘に輸入していた[1]

製造不良によるもの[編集]

弾丸不良[編集]

  • 弾丸の炸薬が炸薬室内に詰まっていないと、発射の衝撃で炸薬が弾底に衝突して発火し、また弾体の回転運動による弾壁と炸薬とによる摩擦熱によって爆発する。その防止法の1つに弾腔内面に塗装を施すことがある。ただしその塗装はムラなく均一であらねばならない。
  • あやまって炸薬室内に入った砂、鉄くずなどが原因となる。
  • 材料の不良のために弾壁が弱く、ガス圧力にたえられず破裂し、爆発する。
  • 底螺、つまり弾丸の底にねじこみ炸薬室をふさぐ螺片と、弾体との間に隙間があるとここから火薬ガスが吹き込まれ、炸薬に点火、爆発する。

信管不良[編集]

  • 信管の安全装置が不十分である。
  • 時限信管を用いる場合その調整を誤った。
  • 所定の信管を他に転用したとき、これは特に弾底信管の場合に多い。想定以上の圧力を受けると、撃発子、つまり活機が信管底に接触し反発し、再び前進し爆発する。
  • 起爆剤である雷汞が不良である。この原因は雷汞それ自体が製造過程から不良な場合もあり、雷管製造の際、不注意のために他の金属の粉末が混入しそれが機械的に働く場合もあり、時にはその金属のために雷汞が分解し鋭感的になることもある。

砲身不良[編集]

  • 砲身の強度が設計通りにないために破裂する。
  • 砲身の歪みが甚だしい場合は、砲弾が詰って火薬の燃焼圧力に砲身が耐えられなくなって破裂する。

火薬不良[編集]

  • 発射火薬が急燃焼すると、弾丸の加速が過大となり、上に述べた原因を誘発する。

使用によるもの[編集]

砲身過熱[編集]

  • 金属は高温になると強度が低下する性質があり、融点の半分程度の温度から大幅な強度低下が起きる。このため砲身が真っ赤になるほどに加熱している状態で発射すると砲身が火薬の圧力に耐えきれなくなって破裂する。この問題は古くから経験則として知られており、例えば大口径砲では30発を連続発射すると尾栓部の温度が100℃を超えるという[1]。そこで運用上で連続射撃を制限したり、砲身に冷却装置を設けたりして来た。また常時砲身に水を掛けて冷却する、連続発射の後で弾丸装填したまま一定時間放置する場合も危険性が高くなるので砲口を空に向けて事故の被害減少に務める、装薬を減らして射撃するなどの注意が払われた[1]。またアメリカ海軍では前もって焼けた砲に装填のまま放置し発火するまでの時間を測定し、「クック・オフ・タイム」として安全確保の目安としていた[1]

水素ぜい化[編集]

  • 火薬が燃焼すると火薬中に含まれている水素原子が遊離して金属の隙間に浸透して水素ぜい化を起こす。このため砲身には一定数の寿命が設定されており、一定数使用した砲身を交換することで予防されている。

砲身内部汚損[編集]

  • 砲腔面が弾丸銅帯のの付着によって汚染したため弾丸の進行が障害され、砲弾に加わった衝撃により炸薬が爆発し、または砲弾が詰まり火薬の燃焼圧力に砲身が耐えられなくなって破裂する[1]。また砲身内部に入った土砂により同様の事故が起こることがある[2]

事故事例[編集]

以上のうち一部は関係者への責任問題への発展を避けるため敵弾命中によるものと報告されたが、実際には敵弾の命中などの外圧により砲身切断が起こることは決してなく、砲身内部での早期爆発によってのみ起こる[1]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 『歴史群像太平洋戦史シリーズ21 金剛型戦艦』pp.125-126「腔発事故」。
  2. ^ a b 追跡・静岡:戦車砲身破裂 重なった人為ミス 届かなかった中止命令/静岡 毎日新聞 Wayback Machine 2010年8月30日付
  3. ^ 源田実『海軍航空隊始末記』 三四三空最後の勇戦 p364

参考文献[編集]

  • 『歴史群像太平洋戦史シリーズ21 金剛型戦艦』学習研究社 ISBN 4-05-602016-7