総局

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総局(そうきょく、英語: General Bureau, Directorateフランス語: Direction générale)は、組織上の単位の一種。一般に、の上位にあるものとされ、組織において重要で広範な事務を分担する部局、全国的な組織における地方を管掌する支部、報道機関における特定の地域に関する取材を統括する支局などの組織単位名称として用いられる。

公的機関等における総局[編集]

日本政府においては、総局は国家行政組織法の施行以前、1943年(昭和18年)11月1日から各省官制通則等に基づいて置かれた組織上の単位であった[1]。具体的には軍需省の航空兵器総局[2] [注釈 1]運輸通信省の鉄道総局と海運総局がこれにあたった[4] [注釈 2]

各省の一般の組織上の単位である大臣官房及びのほかに設けられ[1]、特定の関連性の深い分野を束ねて所掌した[2] [4]。各総局に総局長官各1人を置いてその身分は勅任官とし、次官と同じく高等官一等又は二等とした[1] [8]。各総局には長官官房および局を置き、総局各局に局長を各1人置いて勅任とし、本省の各局長と同じく高等官二等であった[1] [8]

1945年(昭和20年)7月25日から8月31日にかけて逓信院の事務所として広島市に逓信院西部逓信総局を置き、西部逓信総局に於いては大阪逓信局、広島逓信局、松山逓信局及び熊本逓信局の管轄区域における逓信院の事務を分掌させた[9] [10] [11]。このとき逓信院に逓信監を新たに設けて専任1人とし逓信院総裁に次ぐ次長級の勅任官として、西部逓信総局には逓信総局長を置く代わりに逓信監を配置した[9]。総局内に総務部・業務部・工務部・施設部が置かれた[12]

国家行政組織法施行の後は、1950年(昭和25年)6月1日から1952年(昭和27年)7月31日にかけて設置されていた電波監理委員会にその事務局として電波監理総局を置いていた[13] [14]。電波監理総局の長は電波監理長官とし、電波監理総局の内部組織として官房及び部を置き、電波監理総局の地方機関として地方電波監理局を置いていた[13] [注釈 3]

現在、国の機関には総局と呼ばれる組織として福島復興再生総局2013年2月1日に設置)があるが、上記の各省官制通則等に基づく総局とは異なり、複数の行政機関の出先機関を統括する政府組織であり総局の長は復興大臣が務める。また、合議制国家機関では、機関の事務を執行する事務局組織を「事務総局」と称するものがある(人事院事務総局、公正取引委員会事務総局、会計検査院事務総局、最高裁判所事務総局)。これらの事務総局では、かつての省における総局のように、下位の組織単位として局を置いているが、事務総局の長は長官ではなく事務総長と称する。

このほか、地方公共団体では特定の重要事務を行うために総局を置いているものがみられる。また、特殊法人である日本放送協会では、かつての省のように、(内部だけでなく外国取材拠点にも)総局と局の2層からなる組織単位が存在する。この場合、その長は総局長という。

公共企業体(公社)だった旧日本国有鉄道(国鉄)では1970年鉄道管理局を総括する「支社」を廃止した際に、組織を残した北海道、四国、西部と東海道新幹線の4支社について、新たに総局の呼称を与えたが、新幹線総局(→JR東海新幹線鉄道事業本部)を除いた、北海道(→JR北海道鉄道事業本部)、四国(→JR四国)、九州(→JR九州鉄道事業本部)の3総局については、1985年までに管内の一部または全域を対象に鉄道管理局の業務も統合し、兼務させた。

欧州連合における総局[編集]

各国での閣僚に相当する権能が与えられた欧州委員の下には、委員を補佐しEU法に基づき分野別の各種業務を執行する機関として総局が設けられている。この総局は欧州連合における省庁に相当する機能が与えられている。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 1945年(昭和20年)8月26日に軍需省を廃止したことにより航空兵器総局を廃止した[3]
  2. ^ 1945年(昭和20年)5月19日勅令第303号により運輸通信省の名称を運輸省に改めた[5]1946年(昭和21年)2月1日に行政整理実施の為に運輸省官制を改正した際にも鉄道総局と海運総局を存置しており[6]1949年(昭和24年)5月31日に公布した運輸省設置法の附則により運輸省官制を廃止したことで鉄道総局と海運総局を廃止した[7]
  3. ^ 第7回国会・参議院・電気通信委員会における電波監理委員会設置法案の審議に於いて、当時の参議院議員で電気通信委員会の委員である小林勝馬は電波監理総局の長を長官として置くことについて「この長官を置けばいわゆる長官が最高なのか、委員長が最高なのか、下部に非常に誤解をするような虞れはないか」と懸念を示して電波監理総局長官とした理由を質問し[15]、これに対する当時の電気通信省電波庁の電波監理長官で政府委員の網島毅の答弁を要約すると、先ず電波監理委員会の事務について説明し、電波監理委員会ができた場合に、委員会の仕事はその大部分は委員会の会議制の決議により執行されるが、全国に亘る電波行政を行うためには相当の人員を要するところの事務局が必要であるので、この事務局としては現在の電波庁がそのまま引継がれる。またこの電波監理委員会の事務の中には電波法により電波の監視業務を実際の現業として実施する責任を負わされており、不法電波あるいは不正の電波の取り締まりなどの警察的な事務を実施する。これらの事情から、電波監理委員会の委任により警察的な事務を事務局長が担当することになるので責任の重い点も考慮し、尚その仕事の性質上国家地方警察本部に於ける事務局の長として国家地方警察本部長官がこれに当るので、そういう実際面の現業的な仕事を担当して責任を遂行して行くというような事柄をも考慮した。また、電波庁は外局であるため長官制が布かれており、その電波庁がそのまま事務局に移り代るというようなことを考慮してその名称をそのまま受けた、というような説明している[16]。しかし、小林勝馬はこの説明に納得せず「むしろ電波監理総局の長はやはり電波監理総局長でいいのではないか」との見解を示している[17]

出典[編集]

  1. ^ a b c d 「各省官制通則中ヲ改正ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101074300、公文類聚・第六十七編・昭和十八年・第八巻・官職三ノ一・官制三ノ一(通則三)(国立公文書館)(第1画像目から第6画像目まで)
  2. ^ a b 「軍需省官制ヲ定メ○企画院官制、商工省官制、燃料局官制及物価局官制ヲ廃止シ○昭和十三年勅令第五百四十八号中ヲ改正シ○企業整備本部官制ヲ定メ○金属回収本部官制ヲ廃止シ○奏任ノ軍需省部長等ノ特別任用ニ関スル件ヲ定メ○昭和十二年勅令第六百十一号、昭和十四年勅令第三百九十四号、昭和十六年勅令第四百十八号及昭和十八年勅令第百七十二号ヲ廃止ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A03010080100、公文類聚・第六十七編・昭和十八年・第三十巻・官職二十四・官制二十四(軍需省)(国立公文書館)(第1画像目から第8画像目まで)
  3. ^ 「各省官制通則中○外務省官制中○農商省官制中ヲ改正シ○商工省官制ヲ定メ大東亜省官制及軍需省官制ヲ廃止ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101269500、公文類聚・第六十九編・昭和二十年・第七巻・官職一・官制一・通則一(国立公文書館)
  4. ^ a b 「運輸通信省官制ヲ定メ○逓信省官制、海務院官制、航空局官制及鉄道省官制ヲ廃止シ○通信院官制ヲ定メ○貯金局官制及簡易保険局官制ヲ廃止シ○海員審判所職員定員及任用令外六勅令中ヲ改正ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101098700、公文類聚・第六十七編・昭和十八年・第三十一巻・官職二十五・官制二十五(運輸通信省)(国立公文書館)(第1画像目から第11画像目まで)
  5. ^ 「各省官制通則外七勅令中○通信院官制ヲ改正ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101268900、公文類聚・第六十九編・昭和二十年・第七巻・官職一・官制一・通則一(国立公文書館)(第1画像目から第6画像目まで)
  6. ^ 「行政整理実施ノ為ニスル運輸省官制中改正等ノ件ヲ定ム」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A13110673800、公文類聚・第七十編・昭和二十一年・第二十九巻・官職二十・官制二十・運輸省一(国立公文書館)
  7. ^ 「運輸省設置法」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A13111195600、公文類聚・第七十四編・昭和二十四年・第二十八巻・官規十三・農林省二・運輸省一(国立公文書館)
  8. ^ a b 「農商省、軍需省及運輸通信省ノ設置等ニ伴フ高等官官等俸給令中ヲ改正ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101105700、公文類聚・第六十七編・昭和十八年・第五十四巻・官職四十八・官制四十八(宮等俸給及給与附手当一)(国立公文書館)(第12画像目)
  9. ^ a b 「逓信院官制中○逓信局官制中○通信官署官制中○高等官官等俸給令中ヲ改正ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101275600、公文類聚・第六十九編・昭和二十年・第十巻・官職四・官制四(内閣二)(国立公文書館)
  10. ^ 「広島市ニ逓信院西部逓信総局ヲ置クノ件」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101275800、公文類聚・第六十九編・昭和二十年・第十巻・官職四・官制四(内閣二)(国立公文書館)
  11. ^ 「昭和二十年七月二十五日内閣告示第二十四号逓信院官制第九条ノ二ノ規定ニ依リ広島市ニ逓信院西部逓信総局ヲ置クノ件ヲ廃止ス」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A14101276800、公文類聚・第六十九編・昭和二十年・第十巻・官職四・官制四(内閣二)(国立公文書館)
  12. ^ 国立公文書館アジア歴史資料センター. “西部逓信総局”. アジア歴史資料センター. アジ歴グロッサリー. 国立公文書館. 2023年2月10日閲覧。
  13. ^ a b 「電波監理委員会設置法」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A13111352000、公文類聚・第七十五編・昭和二十五年・第二十二巻・官規二・総理府二(国立公文書館)(第1画像目から第14画像目まで)
  14. ^ 「郵政省設置法の一部を改正する法律」JACAR(アジア歴史資料センター)Ref.A21100363600、公文類聚・第七十七編・昭和二十七年・第二十九巻・官規十・郵政省・労働省(国立公文書館)
  15. ^ 参議院 電気通信委員会. 第7回国会. Vol. 7. 18 February 1950. 003 小林勝馬.
  16. ^ 参議院 電気通信委員会. 第7回国会. Vol. 7. 18 February 1950. 004 網島毅.
  17. ^ 参議院 電気通信委員会. 第7回国会. Vol. 7. 18 February 1950. 005 小林勝馬.

関連項目[編集]