箕
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箕(み)は、米などの穀物の選別の際に殻や塵を取り除くための容器[4]。不要な小片を吹き飛ばすことを主目的として作られる平坦なバスケット形状の選別用農具(農作業で使う手作業用具)である。機械式の用具と区別して手箕(てみ)とも言う。英語では "winnowing basket" と言う。
概要[編集]
箕は、農作業において穀物を主とする収穫物から不要な小片を吹き飛ばして選別するために古くから用いられてきた道具であり、また、とりあえずの容器としても使えることから、様々な伝統的労働における採り入れや運搬、清掃や発掘調査などにも流用されてきた。作業内容に応じて適当な大きさ・形状のものを選択することになる。
選別作業の実際は、日本やヨーロッパなどの場合は、適量の材料を入れた箕をあおるようにして内容を放り上げ、再び箕で受けるという所作の反復により、自然の風や箕自体が起こす風を受けて軽い夾雑物が吹き飛ばされ、重い穀物だけが箕に残るというものである。アフリカやアジアの諸地域などでは、本項で示したいくつかの画像にもあるとおり、高く掲げた箕から足元へ振るい落とす過程で風によって軽い夾雑物を吹き飛ばすという方法を執る場合も多い。
現代では、箕が塵取りの代わりとして利用されていることもある。この場合、箕は金属製やプラスチック製であることが望まれる。
素材[編集]
素材としては、世界で広く用いられている木の皮(経木。籐を含む)のほか、アジア東部など竹を産する地域では特にそれが加工性に富む有用性から多用されてきている。合成樹脂製品が普及して以降、それらの普及率が高い先進国に限ってはプラスチックなど合成樹脂製の箕が一般的となっている場合もある(例えば日本の場合はプラスチック製がより多く普及している)。合成樹脂製の箕は、軽量かつ丈夫でありながら安価でもあることから、それを手に入れやすい地域では旧来の素材から置き換わる傾向が強いと言える。もっとも、世界全体を隈なく見渡せばまだまだ例外的である。そのほか、金属製のものもある。
日本では、箕作り(箕作)は伝統的に竹細工であった。緯(ヨコ)に竹、経(タテ)にヤマフジを使った箕を藤箕(ふじみ)という[4]。先端部の強度を高め滑らかな表面にするために桜皮を編み込んだものもある[4]。一方、かつてアイヌが使用していた箕「ムイ」は、シナノキやカツラの材を彫り抜いたものである。
箕の製作には熟練した技術が必要であるため、日本では箕の製作を行う箕作(みつくり)や箕の修理を行う箕直(みなおし)が農村をまわって注文を取ることが行われていた[4]。
習俗[編集]
箕宿[編集]
箕宿は中国天文学における二十八宿の一つであるが、ここでの「箕」は本項の「箕」のことである。
サンカ[編集]
日本では、「サンカ」と呼ばれる人々が古代から近世までの長きにわたって山間部や里山近くに住まっていたといわれているが、このサンカは、箕作りを始めとする箕にまつわる労働を生業にしていたと俗説されている。詳しくは「サンカ#俗説」を参照のこと。
初誕生[編集]
長野県佐久地域には箕を使用し、幼児の成長を願う初誕生の行事がある。箕の中に幼児を入れ、杖代わりの麺棒を持たせて立たせてみたり、大人がゆすりながら「粃(しいな)は舞出ろ実は残れ」と歌い、邪気をはらう[5]。
箕以外の非機械式の穀物選別用具[編集]
文化圏によっては、箕ではなく、園芸用スコップ型(柄の短いショベル型)あるいはそれに長い柄を付けたシャベル型とも言える形状の道具、もしくは、英語で "winnowing fork" と呼ばれるフォーク状の道具あるいはフォーク状の道具に長い柄が付いたものが用いられてきた(大昔から使われており、今も地域によっては使われ続けている)。使い方で箕との違いはほとんど無く、すくって宙に舞わせ、風で小片を吹き飛ばすというものである。古代エジプトでは、英語で "winnowing fork" に分類されるフォーク状の道具を手に持って叩くようにして作業していたことが知られている。
ギャラリー[編集]
箕[編集]
箕で米をより分ける、インドネシアは東ヌサ・トゥンガラ州西ティモールの稲作農民/左に同じく熱帯博物館所蔵の写真。撮影日は1952年以前。
箕を使う北スーダンの女性/2011年撮影。