「クイックディスク」の版間の差分

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== 特徴 ==
== 特徴 ==
同心円状に複数の[[トラック (記録媒体)|トラック]]がある[[フロッピーディスク]]と異なり、クイックディスクには、[[レコード]]の溝のように、渦巻状のトラックが1本だけ存在する。3.5インチおよび3インチフロッピーディスクに比べ安価で小型低容量用途として開発された。当時パーソナルユースでの[[補助記憶装置]]として主流だった[[データレコーダー]]の[[磁気テプ]]を、そのままディスクにしたようなものでデータの読み書きが速くエーが起こりくい、それ以上の大きなアドバンテージもない
同心円状に複数の[[トラック (記録媒体)|トラック]]がある[[フロッピーディスク]]と異なり、クイックディスクには、[[レコード]]の溝のように、渦巻状のトラックが1本だけ存在する。フロッピーディスクに比べ安価で、3.5インチおよび3インチフロッピーディスクよりも小型な記憶装置として開発された。当時パーソナルユースでの[[補助記憶装置]]として主流だった[[データレコーダー]]に対しては読み書き高速さが、フロッピーディスクにてはメディアイブ共安価であることがアドバンテージであった


その後、フロッピーディスクのドライブ、メディアは共に価格が降下し、ディスクの価格は逆転するまでになり結果的にアドバンテージは消失することとなった。
ディスクサイズは2.8インチ。γ-酸化鉄[[磁性体]]が両面に塗布されており、裏返しを行うことで両面が使える。ジャケットは78×78×3mm、[[合成樹脂|プラスチック]]製で[[シャッター]]はなく、紙製のスリーブに入れて保存する。ライトプロテクトはツメを折り取ることにより行う。3.5インチマイクロフロッピーディスクより小さく、3インチコンパクトフロッピーディスクより薄い<ref>当時3.5インチフロッピーディスクの郵送には70円([[2012年]]現在90円)かかったが、60円(同80円)の封書で郵送できる点をアピールしていた。</ref>。ドライブの記録ヘッドにはメタル磁性体用のものを使用しており、隣のトラックとは充分な間隔があるためフロッピーディスク用と異なり消去ギャップがない。

ディスクサイズは2.8インチ。γ-酸化鉄[[磁性体]]が両面に塗布されており、裏返してセットする事で両面が使える。ジャケットは78×78×3mm、[[合成樹脂|プラスチック]]製で[[シャッター]]はなく、紙製のスリーブに入れて保存する。ライトプロテクトはツメを折り取ることにより行う。3.5インチマイクロフロッピーディスクより小さく、3インチコンパクトフロッピーディスクより薄い<ref>当時の郵便料金で3.5インチフロッピーディスクの郵送には70円かかったが、60円の封書で郵送できる点をアピールしていた。</ref>。ドライブの記録ヘッドにはメタル磁性体用のものを使用しており、隣のトラックとは充分な間隔があるためフロッピーディスク用と異なり消去ギャップがない。


アン[[フォーマット (ファイルシステム)|フォーマット]]時の容量は片面64キロバイト、両面で128キロバイト。最大[[記録密度]]は4410[[記録密度#ビット毎インチ|BPI]]。[[記録密度#トラック記録密度|トラック密度]]は59[[記録密度#トラック毎インチ|TPI]]。ディスク回転数は423[[rpm (単位)|rpm]]。[[Modified Frequency Modulation|MFM]]記録<ref>記録密度は同じMFM記録の5.25インチ両面倍密度 (2D) より低く、トラック密度は5.25インチ/8インチ2D (48TPI) と3.5インチ2D (67.5TPI) の中間。回転数はフロッピーディスク (300/360rpm) より速い。</ref>。[[コントローラ]][[集積回路|IC]]は[[富士通]]製MB87013とi8251の組み合わせもしくは[[Z80]][[UART#代表的なUART|-SIO]]単独の採用例が多く、[[巡回冗長検査|CRC]]によるエラー確認をしている。
アン[[フォーマット (ファイルシステム)|フォーマット]]時の容量は片面64キロバイト、両面で128キロバイト。最大[[記録密度]]は4410[[記録密度#ビット毎インチ|BPI]]。[[記録密度#トラック記録密度|トラック密度]]は59[[記録密度#トラック毎インチ|TPI]]。ディスク回転数は423[[rpm (単位)|rpm]]。[[Modified Frequency Modulation|MFM]]記録<ref>記録密度は同じMFM記録の5.25インチ両面倍密度 (2D) より低く、トラック密度は5.25インチ/8インチ2D (48TPI) と3.5インチ2D (67.5TPI) の中間。回転数はフロッピーディスク (300/360rpm) より速い。</ref>。[[コントローラ]][[集積回路|IC]]は[[富士通]]製MB87013とi8251の組み合わせもしくは[[Z80]][[UART#代表的なUART|-SIO]]単独の採用例が多く、[[巡回冗長検査|CRC]]によるエラー確認をしている。


クイックディスクでは、片面全部を順に一気に読み出しまたは書き込みする[[シーケンシャルアクセス]]のみが可能で、任意部分への[[ランダムアクセス]]は不可能である。これはドライブの機構がフロッピーディスクに比べて単純化されており、ヘッドは「スイープ」しか行えず「[[シーク (コンピュータ)|シーク]]」が不可能なためである。片面すべてを読み出しまたは書き込みするのに8秒<ref>書き込み時にベリファイを行う場合は計16秒。エラーの際のリトライにもリトライ1回につき8秒かかる。</ref>かかる。もっも、64キロバイトの[[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]をバッファとして、「DRAMに読み込み→DRAM上でのランダムアクセス→書き出し」という方法を取ることで、結果的にランダムアクセスを実現出来るが、ディスク上の1バイトを書き換えるだけでも16秒(読み込み8秒+書き出し8秒)かかる点が違う上、64キロバイトのDRAMを実装するコストがかかる<ref>フロピーディスクのバッファ全容量分は必要ないため、16キロバイト程度でも用にな。</ref>
クイックディスクでは、片面全部を順に一気に読み出しまたは書き込みする[[シーケンシャルアクセス]]のみが可能で、任意部分への[[ランダムアクセス]]は不可能である。これはドライブの機構がフロッピーディスクに比べて単純化されており、ヘッドは「スイープ」しか行えず「[[シーク (コンピュータ)|シーク]]」が不可能なためである。片面すべてを読み出しまたは書き込みするのに8秒<ref>書き込み時にベリファイを行う場合は計16秒。エラーの際のリトライにもリトライ1回につき8秒かかる。</ref>かかる。メディア同容量の64キロバイトの[[Dynamic Random Access Memory|DRAM]]をバッファとして、「DRAMに読み込み→DRAM上でのランダムアクセス→書き出し」という方法を取ることで擬似的にランダムアクセスを実現出来るが、ディスク上の1バイトを書き換えるだけでも16秒(読み込み8秒+書き出し8秒)かかる上、当時価格では大容量の高価なDRAMを必要とするため前述のコスト的メリ低減する装と言える。


用途や構造が類似した製品に、[[シャープ]][[ポケットコンピュータ]]シリーズ用の2.5インチポケットディスクがあるが、互換性はない。
用途や構造が類似した製品に、[[シャープ]][[ポケットコンピュータ]]シリーズ用の2.5インチポケットディスクがあるが、互換性はない。
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[[ワードプロセッサ|日本語ワードプロセッサー]]では[[シャープ]]、[[カシオ計算機]]、[[キヤノン]]の初期の一部の機種で外付けドライブがある。
[[ワードプロセッサ|日本語ワードプロセッサー]]では[[シャープ]]、[[カシオ計算機]]、[[キヤノン]]の初期の一部の機種で外付けドライブがある。


また[[任天堂]]の[[ファミリーコンピュータ ディスクシステム]]に、ジャケット形状を変更し「ファミリーコンピュータディスクカード」の名称で採用さた。本来のクイックディスクよりもジャケットが厚く、シャッターを付けたカードもある。模倣品を防ぐためジャケット面に商標を用いたアンチローディング機構を施してある。
また、ジャケットの厚み、形状を変更した黄色いメディアが[[任天堂]]の[[ファミリーコンピュータ ディスクシステム]]で採用されている。「ファミリーコンピュータディスクカード」の名称で呼ばれ、シャッターを付けたカードや、色の異なカードも作られた。模倣品を防ぐためジャケット面に商標を用いたアンチローディング機構を施してある。


== 脚注 ==
== 脚注 ==

2017年2月16日 (木) 11:16時点における版

クイックディスク (Quick Disk, QD) は磁気ディスクの一種。ドライブをミツミ電機が、メディアを日立マクセルが開発し、1984年に発表された。容量は片面64キロバイト、両面128キロバイト。

特徴

同心円状に複数のトラックがあるフロッピーディスクと異なり、クイックディスクには、レコードの溝のように、渦巻状のトラックが1本だけ存在する。フロッピーディスクに比べ安価で、3.5インチおよび3インチのフロッピーディスクよりも小型な記憶装置として開発された。当時パーソナルユースでの補助記憶装置として主流だったデータレコーダーに対しては読み書きの高速さが、フロッピーディスクに対してはメディア、ドライブ共に安価であることがアドバンテージであった。

その後、フロッピーディスクのドライブ、メディアは共に価格が降下し、ディスクの価格は逆転するまでになり結果的にアドバンテージは消失することとなった。

ディスクサイズは2.8インチ。γ-酸化鉄磁性体が両面に塗布されており、裏返してセットする事で両面が使える。ジャケットは78×78×3mm、プラスチック製でシャッターはなく、紙製のスリーブに入れて保存する。ライトプロテクトはツメを折り取ることにより行う。3.5インチマイクロフロッピーディスクより小さく、3インチコンパクトフロッピーディスクより薄い[1]。ドライブの記録ヘッドにはメタル磁性体用のものを使用しており、隣のトラックとは充分な間隔があるためフロッピーディスク用と異なり消去ギャップがない。

アンフォーマット時の容量は片面64キロバイト、両面で128キロバイト。最大記録密度は4410BPIトラック密度は59TPI。ディスク回転数は423rpmMFM記録[2]コントローラIC富士通製MB87013とi8251の組み合わせもしくはZ80-SIO単独の採用例が多く、CRCによるエラー確認をしている。

クイックディスクでは、片面全部を順に一気に読み出しまたは書き込みするシーケンシャルアクセスのみが可能で、任意部分へのランダムアクセスは不可能である。これはドライブの機構がフロッピーディスクに比べて単純化されており、ヘッドは「スイープ」しか行えず「シーク」が不可能なためである。片面すべてを読み出しまたは書き込みするのに8秒[3]かかる。メディアと同容量の64キロバイトのDRAMをバッファとして、「DRAMに読み込み→DRAM上でのランダムアクセス→書き出し」という方法を取ることで擬似的にランダムアクセスを実現出来るが、ディスク上の1バイトを書き換えるだけでも16秒(読み込み8秒+書き出し8秒)かかる上、当時の価格では大容量の高価なDRAMを必要とするため前述のコスト的メリットは低減する実装と言える。

用途や構造が類似した製品に、シャープポケットコンピュータシリーズ用の2.5インチポケットディスクがあるが、互換性はない。

採用システム

ファミリーコンピュータ
ディスクカード

パソコンではシャープ MZ-1500に標準搭載されたほか、MZ-700MZ-2000/2200用の外付けドライブがある。MSXではLogitecCASIOより外付けドライブがリリースされた。

MIDI機材ではヤマハローランドコルグAKAI河合楽器製作所の音源ユニット、シンセサイザーサンプラーシーケンサ、データファイラに内蔵および外部ドライブとして採用された。

日本語ワードプロセッサーではシャープカシオ計算機キヤノンの初期の一部の機種で外付けドライブがある。

また、ジャケットの厚み、形状を変更した黄色いメディアが任天堂ファミリーコンピュータ ディスクシステムで採用されている。「ファミリーコンピュータディスクカード」の名称で呼ばれ、シャッターを付けたカードや、色の異なるカードも作られた。模倣品を防ぐためジャケット面に商標を用いたアンチローディング機構を施してある。

脚注

  1. ^ 当時の郵便料金で3.5インチフロッピーディスクの郵送には70円かかったが、60円の封書で郵送できる点をアピールしていた。
  2. ^ 記録密度は同じMFM記録の5.25インチ両面倍密度 (2D) より低く、トラック密度は5.25インチ/8インチ2D (48TPI) と3.5インチ2D (67.5TPI) の中間。回転数はフロッピーディスク (300/360rpm) より速い。
  3. ^ 書き込み時にベリファイを行う場合は計16秒。エラーの際のリトライにもリトライ1回につき8秒かかる。