「ヒューマニズム」の版間の差分

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'''ヒューマニズム'''({{lang-en-short|humanism}})という[[概念]]は、歴史的な変遷を経て多義的に用いられている。
'''ヒューマニズム'''({{Lang-en-short|humanism}})という[[概念]]は、[[歴史]]的な変遷を経て多義的に用いられている。

==概==
ルネサンス期における「'''ヒューマニズム(人文主義)'''」とは主として古典研究、フマニタス研究を指すが、20世紀にはいると、この古典研究の意味から離れて合理主義的解釈が施され、以下のような極端なとらえ方がなされる場合がある。[[善]]や[[真理]]の根拠を、[[神]]でなく[[理性]]的な人間の中にみいだそうとした、と。その延長上として「'''[[人間中心主義]]'''」と訳出する場合があるが、この「人間」とは西欧近代的な価値観に基づく理性的な人間であり、理性中心主義・西欧中心主義に通じる概念である{{要出典|date=2007年9月}}、と。この解釈は啓蒙主義以後の観点であり、ルネサンス人文主義とは明確に区別されるべきであろう。



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[[ルネサンス]]期における「ヒューマニズム([[人文主義]])」とは主として[[古典]]研究、[[フマニタス]]研究を指すが、[[20世紀]]にはいると、この古典研究の意味から離れて[[合理主義]]的解釈が施され、以下のような極端なとらえ方がなされる場合がある。[[善]]や[[真理]]の根拠を、[[神]]でなく[[理性]]的な人間の中にみいだそうとした、と。その延長上として「[[人間中心主義]]」と訳出する場合があるが、この「人間」とは、[[西欧]]近代的な[[価値観]]に基づく「[[理性]]な人間であり、理性中心主義・西欧中心主義に通じる概念である{{要出典|date=2007年9月}}、と。この解釈は、[[啓蒙主義]]以後の観点であり、ルネサンス人文主義とは明確に区別されるべきであろう。


== 語源・歴史 ==
== 語源・歴史 ==
'''フマニタス'''羅:Humanitas)」という概念は、既に古代ローマ時代にあってはローマ市民が学ぶべき[[教養]]として理解されていた。これが中世においては、[[大学]]で教授される[[自由七科]](教養学科)へと受け継がれた。こうした古典の研究は、特に14世紀後半以降フマニタス研究 (Studia humanitatis) と呼ばれ、その研究者は[[人文主義者]](ユマニスト、ヒューマニスト)と呼ばれ始めた。
「フマニタス({{Lang-la-short|Humanitas}})」という概念は、既に[[古代ローマ]]時代にあってはローマ市民が学ぶべき[[教養]]として理解されていた。これが[[中世]]においては、[[大学]]で教授される[[自由七科]](教養学科)へと受け継がれた。こうした古典の研究は、特に[[14世紀]]後半以降フマニタス研究 ({{Lang|la|Studia humanitatis}}) と呼ばれ、その研究者は[[人文主義者]](ユマニスト、ヒューマニスト)と呼ばれ始めた。


14世紀イタリアの[[ペトラルカ]]以降、[[古典古代]](ギリシア・ローマ)への関心が高まる[[ルネサンス]]期になると、[[スコラ学]]的なアリストテレス哲学に基づく論理体系に対して、キリスト教以前の古代のギリシア・ローマの詩歌、歴史、修辞学の中に倫理の源泉を見いだそうとする動きが生じた。この点で、神中心の[[カトリック教会|カトリック]]に対する人間中心主義とも言われるが、論理体系・視座において新たな姿勢を打ち出しただけで、キリスト教そのものを否定したわけではないし、必ずしもカトリックとの対立を伴ったわけではなかった。古典を研究し、教養ある人士の生き方、生活様式が人文主義者(ユマニスト)の身上とされた。
14世紀[[イタリア]]の[[ペトラルカ]]以降、[[古典古代]](ギリシア・ローマ)への関心が高まるルネサンス期になると、[[スコラ学]]的な[[アリストテレス]]哲学に基づく論理体系に対して、[[キリスト教]]以前の古代のギリシア・ローマの[[詩歌]][[歴史]][[修辞学]]の中に倫理の源泉を見いだそうとする動きが生じた。この点で、神中心の[[カトリック教会|カトリック]]に対する人間中心主義とも言われるが、論理体系・視座において新たな姿勢を打ち出しただけで、キリスト教そのものを否定したわけではないし、必ずしもカトリックとの対立を伴ったわけではなかった。古典を研究し、教養ある人士の生き方、生活様式が人文主義者(ユマニスト)の身上とされた。


== 人道主義・博愛主義 ==
== 人道主義・博愛主義 ==
[[人道主義]]・[[博愛主義]]を指してヒューマニズムと言う場合もあるが、英語では人道主義をhumanismと区別してhumanitarianismで表すこともある(必ずしも一般的ではない)。今日の日本ではむしろこの意味でヒューマニズムが用いられることが多いが、上記のように歴史的・哲学的文脈での人文主義者の主張は、戦争反対や、弱者に優しくしようといった発想と直ちに重なるものではない。
[[人道主義]]・[[博愛主義]]を指してヒューマニズムと言う場合もあるが、[[英語]]では人道主義を {{Lang|en|humanism}} と区別して {{Lang|en|humanitarianism}} で表すこともある(必ずしも一般的ではない)。今日の[[日本]]ではむしろこの意味でヒューマニズムが用いられることが多いが、上記のように歴史的・哲学的文脈での人文主義者の主張は、[[戦争]]反対や、弱者に優しくしようといった発想と直ちに重なるものではない。


==出典==
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2012年6月1日 (金) 06:13時点における版

ヒューマニズム: humanism)という概念は、歴史的な変遷を経て多義的に用いられている。

概要

ルネサンス期における「ヒューマニズム(人文主義)」とは、主として古典研究、フマニタス研究を指すが、20世紀にはいると、この古典研究の意味から離れて合理主義的解釈が施され、以下のような極端なとらえ方がなされる場合がある。真理の根拠を、でなく理性的な人間の中にみいだそうとした、と。その延長上として「人間中心主義」と訳出する場合があるが、この「人間」とは、西欧近代的な価値観に基づく「理性的」な人間であり、理性中心主義・西欧中心主義に通じる概念である[要出典]、と。この解釈は、啓蒙主義以後の観点であり、ルネサンス人文主義とは明確に区別されるべきであろう。

語源・歴史

「フマニタス(: Humanitas)」という概念は、既に古代ローマ時代にあっては、ローマ市民が学ぶべき教養として理解されていた。これが中世においては、大学で教授される自由七科(教養学科)へと受け継がれた。こうした古典の研究は、特に14世紀後半以降フマニタス研究 (Studia humanitatis) と呼ばれ、その研究者は人文主義者(ユマニスト、ヒューマニスト)と呼ばれ始めた。

14世紀イタリアペトラルカ以降、古典古代(ギリシア・ローマ)への関心が高まるルネサンス期になると、スコラ学的なアリストテレス哲学に基づく論理体系に対して、キリスト教以前の古代のギリシア・ローマの詩歌歴史修辞学の中に倫理の源泉を見いだそうとする動きが生じた。この点で、神中心のカトリックに対する人間中心主義とも言われるが、論理体系・視座において新たな姿勢を打ち出しただけで、キリスト教そのものを否定したわけではないし、必ずしもカトリックとの対立を伴ったわけではなかった。古典を研究し、教養ある人士の生き方、生活様式が人文主義者(ユマニスト)の身上とされた。

人道主義・博愛主義

人道主義博愛主義を指してヒューマニズムと言う場合もあるが、英語では人道主義を humanism と区別して humanitarianism で表すこともある(必ずしも一般的ではない)。今日の日本では、むしろこの意味でヒューマニズムが用いられることが多いが、上記のように歴史的・哲学的文脈での人文主義者の主張は、戦争反対や、弱者に優しくしようといった発想と直ちに重なるものではない。

関連項目