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「叡山電鉄800系電車」の版間の差分

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{{鉄道車両
{{出典の明記|date=2014年8月16日 (土) 03:06 (UTC)|ソートキー=鉄}}
|車両名=叡山電鉄800系電車
'''叡山電鉄800系電車'''(えいざんでんてつ800けいでんしゃ)は、[[叡山電鉄]]の鉄道車両である。
|社色=red
|画像=Eiden 813 Kibuneguchi 20140907.JPG
|画像説明=[[貴船口駅]]を発車する813 - 814号車の編成
|編成両数=2両<ref name="年鑑1991p186"/>
|起動加速度=
|営業最高速度=
|設計最高速度=
|減速度(通常)=
|減速度(非常)=
|車両定員=108人<br/>座席定員45人<ref name="Eiden Deo800"/><ref name="Eiden Deo810"/>
|編成定員=
|全長=15,700<ref name="年鑑1991p240"/>
|全幅=2,690<ref name="年鑑1991p240"/>
|全高=
|車体長=15,220<ref name="RF357p62"/>
|車体幅=2,600<ref name="RF357p62"/>
|車体高=
|車体材質=
|車両重量=
|編成重量=
|軌間=1,435<ref name="年鑑1991p186"/>
|電気方式=[[直流電化|直流]]600V<br/>([[架空電車線方式]])<ref name="RF440dwg"/>
|主電動機出力=
|搭載数 = 4<ref name="年鑑1991p240"/>
|編成出力=
|歯車比=
|駆動装置=[[中空軸平行カルダン|並行カルダン]] <ref name="年鑑1991p131"/>
|電動機=[[直巻整流子電動機|直流直巻電動機]]
|制御装置=[[抵抗制御]]
|ブレーキ方式=[[電気指令式ブレーキ|電気指令式ブレーキ(HRD-1)]] <ref name="NB72p44"/>
|保安装置=[[自動列車停止装置|ATS]] <ref name="KSp254"/>
|メーカ=[[武庫川車両工業]] <ref name="年鑑1991p243"/>
|備考=各形式で共通の数値のみ記載。形式により異なる数値は記事を参照のこと。
}}
'''叡山電鉄800系電車'''(えいざんでんてつ800けいでんしゃ)は、[[1990年]]([[平成]]2年)から[[1995年]](平成7年)にかけて[[京阪電鉄]][[京阪鴨東線|鴨東線]]開業により急増した[[旅客]]に対応する輸送力増強と旧型車両の置き換えのため、[[武庫川車両工業]]で2両編成5本、計10両が製造された[[叡山電鉄]]の[[電車]]である。叡山電鉄で初めて片運転台構造と2両永久連結を採用、全車が制御[[動力車|電動車]]である。本稿では[[叡山電鉄叡山本線|叡山本線]]上で南側を[[出町柳駅|出町柳]]寄り、北側を[[鞍馬駅|鞍馬]]寄りと表現する。


==概要==
==概要==
[[1989年]](平成元年)10月の[[京阪電鉄]][[京阪鴨東線|鴨東線]]開業により、他の鉄道路線との接続がない状態を脱した叡山電鉄の利用客は2倍に増加し、[[1991年]](平成3年)9月に[[叡山電鉄鞍馬線|鞍馬線]][[岩倉駅]] – [[二軒茶屋駅]]が複線化された<ref name="KSp254"/>。増加した線路容量に対応する輸送力増強のため、800系電車が製造された<ref name="KSp254"/><ref name="RF357p62"/><ref name="年鑑1991p186"/>。路線の制約から車両の大型化や増結が容易にはできない中、叡山電鉄初の片運転台、2両永久連結構造とすることで客室面積を増加させている<ref name="年鑑1991p186"/>。車体は[[叡山電鉄デオ700系電車|700系]]を基本に、片側3扉、片運転台となった<ref name="年鑑1991p186"/>。全車が制御[[動力車|電動車]]である<ref name="編成表2012p117"/>。[[クリーム色]]をベースに、編成ごとに異なる2色の帯をフィルムで貼り付ける塗装が採用された<ref name="年鑑1991p186"/>が、最終製造の2両は「エコモーション・トレイン」と称する特別塗装となった<ref name="年鑑1996p98"/>。最初の2編成は機器が2両に分けて搭載される2両1ユニット方式のデオ800形<ref name="年鑑1991p186"/>、後の3編成は[[京阪500形電車 (2代)|京阪電鉄500形電車]]の[[京阪700形電車 (3代)|700形]]への改造工事で不要となった部品を流用して製造され、各車両がそれぞれ独立した機器をもつデオ810形となった<ref name="年鑑1993p104"/><ref name="年鑑1993p105"/><ref name="年鑑1996p98"/><ref name="年鑑1994p88"/><ref name="年鑑1994p89"/>。デオ810形の代替として[[京都電燈デナ21形電車|デナ21形]]6両が廃車され、デナ21形は形式消滅した<ref name="年鑑1994p178"/><ref name="年鑑1996p194"/><ref name="年鑑1996p98"/>。2004年(平成16年)1月から鞍馬線の2両編成の列車が[[ワンマン運転]]となり、800系でもワンマン運転が行われている<ref name="RF641p101"/>。
[[1989年]]の[[京阪電気鉄道]][[京阪鴨東線|鴨東線]]開通による輸送力増強を目的に登場した、叡電史上初の片運転台2両永久連結の車両である。従来の単車2両連結車に比べ1両約2割の定員増を果たした。性能的にも[[電気指令式ブレーキ|電気指令式電磁直通ブレーキ]]や[[定速運転|定速制御]]を採用するなど、新しい試みがされている。[[2004年]]1月から[[ワンマン運転]]を開始し、現在も叡電の主力車両である。


==形式==
車体自体は[[叡山電鉄700系電車|700系]]を基本として作られているが、700系では扉を埋めたような形で設けられていた固定窓の部分を扉にした3扉車で、両端の扉に対しても戸袋窓が設けられている。また前面窓は更に拡大され、大型の前面窓を採用している。
800系電車は、機器構成の違いによりデオ800形とデオ810形の2形式にわかれる<ref name="RF641p101"/>。「デ」は[[動力車|電動車]]を「オ」は大型車を指す略号であり、形式名の前の[[カタカナ]]2文字はこれらを組み合わせたものである<ref name="RF318p65"/>。
===デオ800形===
2両の電動車に機器を分散して搭載したいわゆる2両1ユニット方式を採用し、出町柳寄りの車両に800番台、鞍馬寄りの車両に850番台の番号が付与された<ref name="年鑑1991p131"/><ref name="年鑑1991p186"/>。1990年(平成2年)10月に801 - 851号車の編成<ref name="年鑑1991p243"/>が、1992年(平成4年)10月に802 - 852号車の編成が製造された<ref name="年鑑1993p190"/>。出町柳寄りの車両に菱形[[集電装置|パンタグラフ]]2基と[[主制御器]]が搭載され、鞍馬寄り車両の床下に冷房などの電源用の[[電動発電機]]が搭載されている<ref name="年鑑1991p186"/>。801 - 851号車の編成の帯色は山並みをイメージした[[緑色|緑]]と800系共通の[[コバルトブルー]]、802 - 852号車の編成の帯色は[[鞍馬山|鞍馬]]の雲珠[[サクラ|桜]]をイメージした[[ピンク]]とコバルトブルーである{{refnest|group="注釈"|800系登場時の[[#年鑑1991|紹介記事]]では801 - 851号車の編成の帯色について、洛北と[[鴨川]]をイメージしたもの、とされていた<ref name="年鑑1991p186"/>。}}<ref name="Eiden Deo800"/>。
{| class="wikitable"
|+'''デオ800形各編成'''
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 801+851 20140427.jpg|thumb|center|220px|801 – 851号車の編成<br/>山並みをイメージした緑<br/>方向幕の位置が他編成と左右逆]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 802 20140504.JPG|thumb|center|220px|802 – 852号車の編成<br/>鞍馬の雲珠桜をイメージしたピンク]]
|}
===デオ810形 ===
京阪大津線用500形の700形への改造工事で発生した主制御器、[[主電動機]]を流用している<ref name="年鑑1993p104"/><ref name="年鑑1993p105"/>。全車両810番台の番号となり、出町柳寄りが奇数番号、鞍馬寄りが偶数番号である<ref name="編成表2012p117"/>。1993年(平成5年)4月に811 - 812号車の編成<ref name="年鑑1994p170"/>、1994年(平成6年)3月に813 - 814号車の編成<ref name="年鑑1994p170"/>、1995年(平成7年)4月に815 - 816号車の編成が製造された<ref name="年鑑1996p185"/>。811 - 812号車の編成は武庫川車両で製造が予定されていた[[野上電気鉄道]]向車両の製造が野上電気鉄道の廃止で取りやめとなったため、[[工程]]が速まったとされている<ref name="年鑑1993p105"/>。811 - 812号車の編成の帯色は[[ヤナギ|柳]]をイメージした[[黄緑色|黄緑]]とコバルトブルー、813 - 814号車の編成の帯色は[[貴船]]・鞍馬の山[[フジ (植物)|藤]]をイメージした[[紫色|紫]]とコバルトブルーとされ<ref name="Eiden Deo810"/>、815 - 816号車の編成はアメリカ人[[デザイナー]]、アレックス・ボーイズがデザインした「エコモーション・トレイン」となった<ref name="年鑑1996p98"/>。それぞれの車両に[[主制御器]]、パンタグラフ、冷房などの電源用の[[静止形インバータ]]が搭載されている<ref name="編成表2012p117"/>。静止形インバータが各車両の鞍馬寄り屋根上に、下枠交差形のパンタグラフが各車両の出町柳寄りに搭載されている<ref name="編成表2012p117"/>。


811 - 812号車の編成の代替として[[京都電燈デナ21形電車|デナ21形]]122、126が[[1993年]](平成5年)4月<ref name="年鑑1994p178"/>に、813 - 814号車の編成の代替としてデナ21形124、125が[[1994年]](平成6年)3月<ref name="年鑑1994p178"/>に、815 - 816号車の編成の代替としてデナ21形21、22が[[1995年]](平成7年)4月にそれぞれ廃車<ref name="年鑑1996p194"/>され、デナ21形は形式消滅した<ref name="年鑑1996p98"/>。
機器の違いからMM'ユニット方式を採用した1次車と2次車(800形)、1M方式の3~5次車(810形)というように2種類に分類されるが、車体は1次車と2次車以降で異なる。
{| class="wikitable"
|+'''デオ810形各編成'''
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 811 20140713.jpg|thumb|center|220px|811 – 812号車の編成<br/>柳をイメージした黄緑]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 813 20140428.JPG |thumb|center|220px|813 – 814号車の編成<br/>貴船・鞍馬の山藤をイメージした紫]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:Ninose in snow.jpg |thumb|center|220px|815 – 816号車の編成(右)<br/>「エコモーション・トレイン」塗装のころ]]
|}
<div style="float: left;">
<div style="float: left; vertical-align: top; margin-right: 1em;">
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 2em 3em;"
|+デオ800形編成表
|-
|style="border-bottom:solid 3px #7B766A; background-color:#ccc;"|&nbsp;
|style="border-bottom:solid 3px #7B766A;" colspan="2"|{{TrainDirection|[[出町柳駅|出町柳]]|[[鞍馬駅|鞍馬]]}}
|style="border-bottom:solid 3px red;" rowspan="3"|竣工時期
|-
!形式
| '''デオ800''' || '''デオ800'''
|-
!style="border-bottom:solid 3px red;"|車種
|style="border-bottom:solid 3px red;"| 制御電動車 ||style="border-bottom:solid 3px red;"| 制御電動車
|-
!車両番号
|'''801'''<br/>'''802'''||'''851'''<br/>'''852'''||1990年10月<ref name="年鑑1991p243"/><br/>1992年5月<ref name="年鑑1994p170"/>
|-
!搭載機器<ref name="Eiden Deo800"/>
|CON,PT2||CP,MG||rowspan="8"| &nbsp;
|-
!style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"|自重<ref name="Eiden Deo800"/>
|style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"|31.0 t||style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"|31.3 t
|-
!定員<ref name="Eiden Deo800"/>
| 108 || 108
|-
!主電動機出力 (kW)<ref name="Eiden Deo800"/>
| 53 || 53
|-
!主電動機形式<ref name="Eiden Deo800"/>
|TDK-8750-A||TDK-8750-A
|-
!歯車比<ref name="Eiden Deo800"/>
|4.21||4.21
|-
!台車<ref name="Eiden Deo800"/>
|FS-544||FS-544
|-
!自重(t)<ref name="Eiden Deo800"/>
|31.0||31.3
|}
</div><div style="float: left; vertical-align: top;">
{| class="wikitable" style="text-align:center; font-size:80%; margin:1em 0em 2em 3em;"
|+デオ810形編成表
|-
|style="border-bottom:solid 3px #7B766A; background-color:#ccc;"|&nbsp;
|style="border-bottom:solid 3px #7B766A;" colspan="2"|{{TrainDirection|[[出町柳駅|出町柳]]|[[鞍馬駅|鞍馬]]}}
|style="border-bottom:solid 3px red;" rowspan="3"|竣工時期
|-
!形式
| '''デオ810''' || '''デオ810'''
|-
!style="border-bottom:solid 3px red;"|車種
|style="border-bottom:solid 3px red;"| 制御電動車 ||style="border-bottom:solid 3px red;"| 制御電動車
|-
!車両番号
|'''811'''<br/>'''813'''<br/>'''815'''||'''812'''<br/>'''814'''<br/>'''816'''||1993年4月<ref name="年鑑1994p170"/><br/>1994年3月<ref name="年鑑1994p170"/><br/>1995年4月<ref name="年鑑1996p185"/>
|-
!搭載機器<ref name="Eiden Deo810"/>
|CON,PT<br/>SIV,CP||CON,PT<br/>SIV,CP||rowspan="8"| &nbsp;
|-
!style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"|自重<ref name="Eiden Deo810"/>
|style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"|30.5 t||style="border-bottom:solid 3px #7B766A;"|30.5 t
|-
!定員<ref name="Eiden Deo810"/>
| 108 || 108
|-
!主電動機出力 (kW)<ref name="Eiden Deo810"/>
| 60 || 60
|-
!主電動機形式<ref name="Eiden Deo810"/>
|TDK-8560-A||TDK-8560-A
|-
!歯車比<ref name="Eiden Deo810"/>
|6.0||6.0
|-
!台車<ref name="Eiden Deo810"/>
|FS-556||FS-556
|-
!自重(t)<ref name="Eiden Deo810"/>
|30.0||30.5
|}
</div></div><br style="clear: left;" />
* 凡例
** CON …[[主制御器]]
** MG …[[電動発電機]]
** SIV …[[静止形インバータ]]
** CP …電動空気圧縮機
** PT2 …[[集電装置]](2台)
** PT …集電装置(出町柳寄り)


==形式各説==
== 外観 ==
車体は[[叡山電鉄700系電車|700系電車]]のものを基本としたが、正面窓ガラスが上下に拡大されて左右非対称となり、700系で正面窓上にあった前照灯が角型となって窓の下に降りて尾灯と一体のケースに納められた<ref name="年鑑1991p186"/>。片側2扉だった700系に対して3扉となり、戸袋には窓が設けられた<ref name="年鑑1991p186"/>。叡山電鉄の車両で初めて側面に行先表示器が設けられ<ref name="年鑑1991p186"/>、車体外部のナンバープレートが伝統の[[楕円]]形ではなくなった<ref name="RF641p101"/>。801 - 851号車の編成では正面の行先表示装置は向かって左側に設けられたが、それ以外の編成では右側に設けられている<ref name="年鑑1993p104"/>など、801 - 851号車の編成の細部は他編成と異なる。最終製造の815 - 816号車の編成以外はクリーム色を基調とした塗装とされ、カラーフィルムで窓下に帯が巻かれた<ref name="年鑑1991p186"/>が、帯の色は編成によって異なる<ref name="Eiden Deo800"/><ref name="Eiden Deo810"/>。
=== 800形 ===
[[画像:Eiden801.jpg|180px|right|thumb|デオ801-デオ851]]
[[File:Eiden Deo802-852 140524NI1.JPG|180px|right|thumb|デオ802-デオ852]]


== 内装 ==
[[1990年]]に1次車として801-851が、[[1992年]]に2次車として802-852が投入された。2編成4両が在籍。叡電として純然たる完全新造の電車は、旧[[京福電気鉄道|京福]]時代に製造された[[京福電気鉄道デオ300形電車|デオ300形]]以来である。
===客室・運転台===
[[File: Inside Deo 815.JPG|thumb|220px|815号車車内<br/>ワンマン運転対応改造後]]
[[File: Eiden 851 cabin 20140723.JPG|thumb|220px|851号車運転室]]
座席はすべて[[鉄道車両の座席|ロングシート]]で、座席の色は[[紺色|紺]]、[[天井]]が薄い[[灰色|グレー]]、壁は薄い[[ベージュ]]、[[床]]は[[オレンジ色|オレンジ]]となった<ref name="年鑑1991p186"/>。叡山電鉄初の片運転台車両となり、[[操縦席|運転台]]の面積分客室が拡大されている<ref name="年鑑1991p186"/>。813号車、815号車には[[車椅子スペース]]が設けられ、座席定員が2名減少している<ref name="Eiden Deo810"/>。電気指令ブレーキを採用したが、運転台の基本的なレイアウトは700系と同一とされた<ref name="RF318p65"/>。
{| class="wikitable"
|+'''800系の細部'''
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File:851 cabin 20140823.JPG|thumb|center|220px|801 - 851号車の編成の運転台<br/>パネルが木目調]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden Deo 813 cabin.JPG|thumb|center|220px|801 - 851 号車の編成以外の運転台<br/>パネルが黒色で、助手席側が一段下がっている]]
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 801 gangway.JPG|thumb|center|150px|801 - 851号車の編成の連結部<br/>妻面に窓が無い。窓枠がアルミ地色のまま。]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 802 gangway.JPG|thumb|center|220px|801 - 851号車の編成以外の連結部<br/>妻面に窓がある。窓枠が黒く塗装されている。]]
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File: Eiden 813 wheelchair space.JPG|thumb|center|220px|813号車、815号車連結部に設けられた車椅子スペース]]
| style="vertical-align: top"|
[[File: Destination indicator Eiden Deo 812.JPG|thumb|center|220px|側面方向幕]]
|}
== 主要機器 ==
=== 台車・主制御器・主電動機 ・制動装置===
デオ800形801号車、802号車に1つの[[主制御器]]で2両分8個の[[主電動機]]を制御する[[東洋電機製造]](以下、東洋)製電動カム軸式ACDF-M353-77Eが、デオ800形各車に東洋製TDK-8750-A主電動機(出力53 k[[ワット|W]])が搭載された<ref name="年鑑1991p186"/><ref name="年鑑1991p240"/>。デオ810形各車には京阪500形から流用された1つの主制御器で1両分4個の主電動機を制御する東洋製電動カム軸式ACDF-M460-777Aと同じく京阪500形から流用の東洋製TDK-8560-A(出力60 kW)主電動機を装備する<ref name="年鑑1993p105"/><ref name="年鑑1994p89"/>。デオ800形の台車は[[住友金属工業]]製FS-544、デオ810形の台車は同じく住友金属製FS-556で、それぞれ車輪径が860 mm、760 mmとなっている<ref name="Eiden Deo800"/><ref name="Eiden Deo810"/>。叡山電鉄で初めて[[電気指令式ブレーキ]]([[ナブテスコ|日本エヤーブレーキ]]製HRD-1)が採用された<ref name="RF318p65"/><ref name="NB72p44"/>。
{| class="wikitable"
|+'''800系の台車'''
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File:FS-544 truck Eiden 851.jpg|thumb|center|150px|デオ800形の台車<br/>FS-544]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:FS-556 truck Eiden 811.JPG|thumb|center|150px|デオ810形の台車<br/>FS-556]]
|}


=== 冷房装置・補助電源装置 ===
1つの主制御機で8個のモーターを制御する1C8M方式(MM'ユニット)を採用している。補助電源装置としてMGを採用している。台車はダイレクトマウントとなる住友金属工業製FS-544形を採用している。パンタグラフは801と802が2つ搭載しており、851と852は搭載していない。
{{Double image aside|right| Eiden 814 cooler 20140915.JPG |180|Eiden 814 SIV 20140915.JPG|180| RPU3044冷房装置<br/>ワンマン運転開始時に車外[[スピーカー]]が取り付けられている。|デオ810形屋根上の静止形インバータ}}
冷房装置は車両中央部屋根上に容量15.1 kW(13,000 k[[カロリー|cal]]/h)の[[東芝]]製RPU3044 2基が搭載された<ref name="年鑑1991p240"/>。デオ800形の補助電源装置は容量70 k[[ボルトアンペア|VA]]のTDK3720ブラシレス電動発電機が採用<ref name="年鑑1991p240"/>され、鞍馬寄りの車両の床下に搭載された<ref name="編成表2012p117"/>。デオ810形には各車の鞍馬寄り屋根上に容量 30 kVAの[[静止形インバータ]]が搭載されている<ref name="Eiden Deo810"/>。
{{-}}
=== パンタグラフ・空気圧縮機 ===
{{Double image aside|right| 801 pantograph 20140921.JPG |180| Eiden 811 pantograph.JPG |180|デオ800形(左)とデオ810形(右)のパンタグラフ}}
デオ800形は出町柳寄りの車両(800番台)に菱形[[集電装置|パンタグラフ]]2基が<ref name="年鑑1991p186"/>、デオ810形は各車の出町柳寄りに下枠交差形のパンタグラフが搭載された<ref name="編成表2012p117"/>。デオ800形では850番台の車両に容量1,590 リットル/分のHB-1500B電動空気[[圧縮機]]が搭載され<ref name="年鑑1991p243"/><ref name="RF440dwg"/>、デオ810形では各車両に電動機出力4.2 kWのDH-25が搭載された<ref name="Eiden Deo810"/>。
{| class="wikitable"
|+'''800系の電動空気圧縮機'''
|-
| style="vertical-align: top"|
[[File:Eiden 721 Compressor.JPG|thumb|center|150px|DH-25電動空気圧縮機]]
| style="vertical-align: top"|
[[File:HB1500B compressor.JPG|thumb|center|150px|HB-1500B電動空気圧縮機]]
|}


==改造工事==
1次車はそれ以降の車両とは以下の様な相違点がある。
800系電車には製造後各種の改造工事が行われている。
*行先表示器が助手席側についている(2次車以降は運転台側)
=== 815 - 816号車の編成の塗装変更 ===
*窓枠が通常の色のアルミサッシ(2次車以降は黒く塗装されている)
815 - 816号車の編成登場時は「エコモーション・トレイン」塗装だったが、2003年7月に[[近畿車輛]]デザインによる四季の森をバックに動物を描いた「ギャラリートレイン・こもれび」に変更されている<ref name="KiS"/> <ref name="CSR"/>。
*連結面の窓が片側しかなく、連結面ドアの窓が小さい
[[File:Eiden815.jpg|thumb|220px|「ギャラリートレイン・こもれび」<br/>塗装変更時に[[排障器|スカート]]が追加されている]]
*運転台機器の一部レイアウトが異なる
=== 帯デザイン変更 ===
が挙げられる。
[[2013年]](平成25年)から帯デザインと社名ロゴが順次変更されている<ref name="railf20130402"/>。
{| class="wikitable"
|+'''塗装変更前後の姿'''
|-
| style="vertical-align: top"|
[[ファイル: Eiden801.jpg|thumb|center|220px|変更前の801号車。2色の帯が接している]]
| style="vertical-align: top"|
[[ファイル: Eiden Deo801-851 140524NI1.JPG|thumb|center|220px|変更後の801号車。帯の間にクリームの部分がある]]
|}
== 運用 ==
[[1989年]](平成元年)10月に[[京阪電鉄]][[京阪鴨東線|鴨東線]]開業が開業し、[[1978年]](昭和53年)4月の[[京都市電]]東山線の廃止以来の鉄道路線との接続がない状態を脱した叡山電鉄の利用客は2倍に増加した<ref name="KSp254"/><ref name="RF641p101"/>。増加した旅客に対応するため[[1991年]](平成3年)9月に戦時中に単線化されていた<ref name="KSp250"/>[[叡山電鉄鞍馬線|鞍馬線]][[岩倉駅]] – [[二軒茶屋駅]]の複線を復活、同年10月に叡山電鉄初の2両永久連結の800系が投入された<ref name="KSp254"/><ref name="年鑑1991p186"/>。800系は登場当時から鞍馬線出町柳 – 鞍馬間で運用され<ref name="年鑑1991p186"/>、[[叡山電鉄叡山本線|叡山本線]][[宝ヶ池駅|宝ヶ池]] – [[八瀬比叡山口駅|八瀬比叡山口]]間には通常乗り入れない。[[2004年]](平成16年)1月から鞍馬線の2両運転の列車も原則としてワンマン運転となった<ref name="RF641p101"/>。
{{-}}


=== 810形 ===
[[画像:Eiden815.jpg|180px|right|thumb|デオ815-デオ816「ギャラリートレイン・こもれび」]]


== 脚注 ==
旧来の[[叡山電鉄デナ21形電車|デナ21形]]を置き換える為に[[1993年]]から[[1995年]]にかけて3~5次車として登場。811-812、813-814、815-816の3編成6両が在籍。813と815は車いすスペースが設けられたため、座席定員数が3名分減少しているが外見上はほとんど同じ。
{{脚注ヘルプ}}


=== 注釈 ===
車体自体は2次車とほとんど同じだが、車輪径の関係で床面高さがわずかに下がっている。モーターや制御器などに[[京阪500形電車 (2代)|京阪大津線500形]]の廃車発生品が利用されており、1つの主制御機で4個のモーターを制御する1C4M方式となったため番号の付番規則などが異なる。なお京阪側で車体を[[京阪700形電車 (3代)|大津線700形]]に改造する際に台車も流用したため、810形の台車は、インダイレクトマウントで新造の住友金属工業製FS-556形を履いている。
{{Reflist|group="注釈"}}


=== 出典 ===
1M方式のため床下機器が満杯で、屋根上に補助電源装置としてインバーターを取り付け、スペース確保の観点から叡電ではじめて下枠交叉形パンタグラフが採用され、各車に1つずつ搭載されている。
{{Reflist|2|refs=
<ref name="KSp250">[[#KS|田中 et al 1998p250]]</ref>
<ref name="KSp254">[[#KS|田中 et al 1998p254]]</ref>


<ref name="RF318p65">[[#鉄道ファン318|『鉄道ファン』通巻318号p65]]</ref>
なお、最終編成に当たる815-816編成は当初、アメリカ人デザイナー、アレックス・ボーイズによる地球環境をテーマにしたイラスト塗装で「エコモーション号」と呼ばれていたが、2003年以降は叡電沿線の四季をあしらったイラストに衣替えして「ギャラリートレイン・こもれび」と呼ばれている。

==外部リンク==
<ref name="RF357p62">[[#鉄道ファン357|『鉄道ファン』通巻357号p62]]</ref>
* {{cite web|url=http://eizandensha.co.jp/vehicle/71/|publisher=叡山電鉄|title=車両紹介 800系(デオ800形)|accessdate=2014-08-16}}

* {{cite web|url=http://eizandensha.co.jp/vehicle/99/|publisher=叡山電鉄|title=車両紹介 800系(デオ810形)|accessdate=2014-08-16}}
<ref name="NB72p44">[[#ナブコ72|『ナブコ技報告』通巻72号p44]]</ref>
* {{cite web|url=http://www.kinkisharyo.co.jp/ja/special/topphoto/photo_komorebi.htm|title=叡山電鉄「こもれび」登場 デザインを担当|publisher=[[近畿車輛]]|accessdate=2014-09-10}}

* {{cite web|url=https://www.keihan.co.jp/corporate/csr/2005/pdf/er21.pdf|title=叡山電鉄|page=21|work=CSR報告書 2005|publisher=京阪電鉄|accessdate=2014-09-10}}
<ref name="年鑑1991p131">[[#年鑑1991動向|『新車年鑑1991年版』p131]]</ref>
<ref name="年鑑1991p186">[[#年鑑1991|『新車年鑑1991年版』p186]]</ref>
<ref name="年鑑1991p240">[[#年鑑1991諸元|『新車年鑑1991年版』p240]]</ref>
<ref name="年鑑1991p243">[[#年鑑1991一覧|『新車年鑑1991年版』p243]]</ref>

<ref name="年鑑1993p104">[[#年鑑1993動向|『新車年鑑1993年版』p104]]</ref>
<ref name="年鑑1993p105">[[#年鑑1993動向|『新車年鑑1993年版』p105]]</ref>
<ref name="年鑑1993p190">[[#年鑑1993一覧|『新車年鑑1993年版』p190]]</ref>

<ref name="年鑑1994p88">[[#年鑑1994動向|『新車年鑑1994年版』p88]]</ref>
<ref name="年鑑1994p89">[[#年鑑1994動向|『新車年鑑1994年版』p89]]</ref>
<ref name="年鑑1994p170">[[#年鑑1994一覧|『新車年鑑1994年版』p170]]</ref>
<ref name="年鑑1994p178">[[#年鑑1994一覧|『新車年鑑1994年版』p178]]</ref>

<ref name="年鑑1996p98">[[#年鑑1996動向|『新車年鑑1996年版』p98]]</ref>
<ref name="年鑑1996p185">[[#年鑑1996一覧|『新車年鑑1996年版』p185]]</ref>
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<ref name="RF440dwg">[[#鉄道ファン440dwg|『鉄道ファン』通巻440号折込みカラー]]</ref>

<ref name="編成表2012p117">[[#編成表2012|『私鉄車両編成表 2012』p117]]</ref>

<ref name="RF641p101">[[#鉄道ファン641|『鉄道ファン』通巻641号p101]]</ref>

<ref name="KiS">{{cite web|url=http://www.kinkisharyo.co.jp/ja/special/topphoto/photo_komorebi.htm|title=叡山電鉄「こもれび」登場 デザインを担当|publisher=[[近畿車輛]]|accessdate=2014-09-10}}</ref>
<ref name="CSR">{{cite web|url=https://www.keihan.co.jp/corporate/csr/2005/pdf/er21.pdf|title=叡山電鉄|page=21|work=CSR報告書 2005|publisher=京阪電鉄|accessdate=2014-09-10}}</ref>
<ref name="railf20130402">{{cite web|url=http://railf.jp/news/2013/04/02/154000.html|title=叡電デオ800形801-851編成が塗装変更される |publisher=railf.jp(鉄道ファン・交友社) | date=2013-04-02|accessdate=2014-10-05}}</ref>

<ref name="Eiden Deo800">{{cite web|url=http://eizandensha.co.jp/vehicle/71/|publisher=叡山電鉄|title=車両紹介 800系(デオ800形)|accessdate=2014-10-05}}</ref>
<ref name="Eiden Deo810">{{cite web|url=http://eizandensha.co.jp/vehicle/99/|publisher=叡山電鉄|title=車両紹介 800系(デオ810形)|accessdate=2014-10-05}}</ref>
}}
== 参考文献 ==
===書籍===
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** {{Cite journal ja-jp|和書|author=|year= |month= |title=1993年度車両動向|journal= |issue= |pages= 167-189|publisher= |ref = 年鑑1994一覧}}
* 『鉄道ピクトリアル』通巻597号「新車年鑑1996年版」(1996年10月・電気車研究会)
** {{Cite journal ja-jp|和書|author=藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦|year= |month= |title=各社別車両情勢|journal= |issue= |pages= 88-105|publisher= |ref = 年鑑1996動向}}
** {{Cite journal ja-jp|和書|author=|year= |month= |title=1995年度車両動向|journal= |issue= |pages= 183-210|publisher= |ref = 年鑑1996一覧}}
* 『鉄道ファン』通巻440号(1997年10月・交友社)
** {{Cite journal ja-jp|和書|author= |year= |month= |title=叡山電鉄900系形式図・主要諸元表|journal= |issue= |pages= |publisher= |ref = 鉄道ファン440dwg}}
* 『私鉄車両編成表 2012』(2012年7月・[[交通新聞社]])
** {{Cite journal ja-jp|和書|author= |year= |month= |title=叡山電鉄|journal= |issue= |pages= 117|publisher= |ref = 編成表2012}}
* 『鉄道ファン』通巻641号(2014年9月・交友社)
** {{Cite journal ja-jp|和書|author= 寺田裕一|year= |month= |title=日本のローカル私鉄 30年前の残照を訪ねて その16|journal= |issue= |pages= 98-103 |publisher= |ref = 鉄道ファン641}}


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2014年10月24日 (金) 12:24時点における版

叡山電鉄800系電車
貴船口駅を発車する813 - 814号車の編成
基本情報
製造所 武庫川車両工業 [1]
主要諸元
編成 2両[2]
軌間 1,435[2]
電気方式 直流600V
架空電車線方式[3]
車両定員 108人
座席定員45人[6][7]
全長 15,700[4]
車体長 15,220[5]
全幅 2,690[4]
車体幅 2,600[5]
主電動機 直流直巻電動機
搭載数 4[4]
駆動方式 並行カルダン [9]
制御装置 抵抗制御
制動装置 電気指令式ブレーキ(HRD-1) [10]
保安装置 ATS [8]
備考 各形式で共通の数値のみ記載。形式により異なる数値は記事を参照のこと。
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叡山電鉄800系電車(えいざんでんてつ800けいでんしゃ)は、1990年平成2年)から1995年(平成7年)にかけて京阪電鉄鴨東線開業により急増した旅客に対応する輸送力増強と旧型車両の置き換えのため、武庫川車両工業で2両編成5本、計10両が製造された叡山電鉄電車である。叡山電鉄で初めて片運転台構造と2両永久連結を採用、全車が制御電動車である。本稿では叡山本線上で南側を出町柳寄り、北側を鞍馬寄りと表現する。

概要

1989年(平成元年)10月の京阪電鉄鴨東線開業により、他の鉄道路線との接続がない状態を脱した叡山電鉄の利用客は2倍に増加し、1991年(平成3年)9月に鞍馬線岩倉駅二軒茶屋駅が複線化された[8]。増加した線路容量に対応する輸送力増強のため、800系電車が製造された[8][5][2]。路線の制約から車両の大型化や増結が容易にはできない中、叡山電鉄初の片運転台、2両永久連結構造とすることで客室面積を増加させている[2]。車体は700系を基本に、片側3扉、片運転台となった[2]。全車が制御電動車である[11]クリーム色をベースに、編成ごとに異なる2色の帯をフィルムで貼り付ける塗装が採用された[2]が、最終製造の2両は「エコモーション・トレイン」と称する特別塗装となった[12]。最初の2編成は機器が2両に分けて搭載される2両1ユニット方式のデオ800形[2]、後の3編成は京阪電鉄500形電車700形への改造工事で不要となった部品を流用して製造され、各車両がそれぞれ独立した機器をもつデオ810形となった[13][14][12][15][16]。デオ810形の代替としてデナ21形6両が廃車され、デナ21形は形式消滅した[17][18][12]。2004年(平成16年)1月から鞍馬線の2両編成の列車がワンマン運転となり、800系でもワンマン運転が行われている[19]

形式

800系電車は、機器構成の違いによりデオ800形とデオ810形の2形式にわかれる[19]。「デ」は電動車を「オ」は大型車を指す略号であり、形式名の前のカタカナ2文字はこれらを組み合わせたものである[20]

デオ800形

2両の電動車に機器を分散して搭載したいわゆる2両1ユニット方式を採用し、出町柳寄りの車両に800番台、鞍馬寄りの車両に850番台の番号が付与された[9][2]。1990年(平成2年)10月に801 - 851号車の編成[1]が、1992年(平成4年)10月に802 - 852号車の編成が製造された[21]。出町柳寄りの車両に菱形パンタグラフ2基と主制御器が搭載され、鞍馬寄り車両の床下に冷房などの電源用の電動発電機が搭載されている[2]。801 - 851号車の編成の帯色は山並みをイメージしたと800系共通のコバルトブルー、802 - 852号車の編成の帯色は鞍馬の雲珠をイメージしたピンクとコバルトブルーである[注釈 1][6]

デオ800形各編成
801 – 851号車の編成
山並みをイメージした緑
方向幕の位置が他編成と左右逆
802 – 852号車の編成
鞍馬の雲珠桜をイメージしたピンク

デオ810形

京阪大津線用500形の700形への改造工事で発生した主制御器、主電動機を流用している[13][14]。全車両810番台の番号となり、出町柳寄りが奇数番号、鞍馬寄りが偶数番号である[11]。1993年(平成5年)4月に811 - 812号車の編成[22]、1994年(平成6年)3月に813 - 814号車の編成[22]、1995年(平成7年)4月に815 - 816号車の編成が製造された[23]。811 - 812号車の編成は武庫川車両で製造が予定されていた野上電気鉄道向車両の製造が野上電気鉄道の廃止で取りやめとなったため、工程が速まったとされている[14]。811 - 812号車の編成の帯色はをイメージした黄緑とコバルトブルー、813 - 814号車の編成の帯色は貴船・鞍馬の山をイメージしたとコバルトブルーとされ[7]、815 - 816号車の編成はアメリカ人デザイナー、アレックス・ボーイズがデザインした「エコモーション・トレイン」となった[12]。それぞれの車両に主制御器、パンタグラフ、冷房などの電源用の静止形インバータが搭載されている[11]。静止形インバータが各車両の鞍馬寄り屋根上に、下枠交差形のパンタグラフが各車両の出町柳寄りに搭載されている[11]

811 - 812号車の編成の代替としてデナ21形122、126が1993年(平成5年)4月[17]に、813 - 814号車の編成の代替としてデナ21形124、125が1994年(平成6年)3月[17]に、815 - 816号車の編成の代替としてデナ21形21、22が1995年(平成7年)4月にそれぞれ廃車[18]され、デナ21形は形式消滅した[12]

デオ810形各編成
811 – 812号車の編成
柳をイメージした黄緑
813 – 814号車の編成
貴船・鞍馬の山藤をイメージした紫
815 – 816号車の編成(右)
「エコモーション・トレイン」塗装のころ
デオ800形編成表
 
鞍馬
竣工時期
形式 デオ800 デオ800
車種 制御電動車 制御電動車
車両番号 801
802
851
852
1990年10月[1]
1992年5月[22]
搭載機器[6] CON,PT2 CP,MG  
自重[6] 31.0 t 31.3 t
定員[6] 108 108
主電動機出力 (kW)[6] 53 53
主電動機形式[6] TDK-8750-A TDK-8750-A
歯車比[6] 4.21 4.21
台車[6] FS-544 FS-544
自重(t)[6] 31.0 31.3
デオ810形編成表
 
鞍馬
竣工時期
形式 デオ810 デオ810
車種 制御電動車 制御電動車
車両番号 811
813
815
812
814
816
1993年4月[22]
1994年3月[22]
1995年4月[23]
搭載機器[7] CON,PT
SIV,CP
CON,PT
SIV,CP
 
自重[7] 30.5 t 30.5 t
定員[7] 108 108
主電動機出力 (kW)[7] 60 60
主電動機形式[7] TDK-8560-A TDK-8560-A
歯車比[7] 6.0 6.0
台車[7] FS-556 FS-556
自重(t)[7] 30.0 30.5


外観

車体は700系電車のものを基本としたが、正面窓ガラスが上下に拡大されて左右非対称となり、700系で正面窓上にあった前照灯が角型となって窓の下に降りて尾灯と一体のケースに納められた[2]。片側2扉だった700系に対して3扉となり、戸袋には窓が設けられた[2]。叡山電鉄の車両で初めて側面に行先表示器が設けられ[2]、車体外部のナンバープレートが伝統の楕円形ではなくなった[19]。801 - 851号車の編成では正面の行先表示装置は向かって左側に設けられたが、それ以外の編成では右側に設けられている[13]など、801 - 851号車の編成の細部は他編成と異なる。最終製造の815 - 816号車の編成以外はクリーム色を基調とした塗装とされ、カラーフィルムで窓下に帯が巻かれた[2]が、帯の色は編成によって異なる[6][7]

内装

客室・運転台

815号車車内
ワンマン運転対応改造後
851号車運転室

座席はすべてロングシートで、座席の色は天井が薄いグレー、壁は薄いベージュオレンジとなった[2]。叡山電鉄初の片運転台車両となり、運転台の面積分客室が拡大されている[2]。813号車、815号車には車椅子スペースが設けられ、座席定員が2名減少している[7]。電気指令ブレーキを採用したが、運転台の基本的なレイアウトは700系と同一とされた[20]

800系の細部
801 - 851号車の編成の運転台
パネルが木目調
801 - 851 号車の編成以外の運転台
パネルが黒色で、助手席側が一段下がっている
801 - 851号車の編成の連結部
妻面に窓が無い。窓枠がアルミ地色のまま。
801 - 851号車の編成以外の連結部
妻面に窓がある。窓枠が黒く塗装されている。
813号車、815号車連結部に設けられた車椅子スペース
側面方向幕

主要機器

台車・主制御器・主電動機 ・制動装置

デオ800形801号車、802号車に1つの主制御器で2両分8個の主電動機を制御する東洋電機製造(以下、東洋)製電動カム軸式ACDF-M353-77Eが、デオ800形各車に東洋製TDK-8750-A主電動機(出力53 kW)が搭載された[2][4]。デオ810形各車には京阪500形から流用された1つの主制御器で1両分4個の主電動機を制御する東洋製電動カム軸式ACDF-M460-777Aと同じく京阪500形から流用の東洋製TDK-8560-A(出力60 kW)主電動機を装備する[14][16]。デオ800形の台車は住友金属工業製FS-544、デオ810形の台車は同じく住友金属製FS-556で、それぞれ車輪径が860 mm、760 mmとなっている[6][7]。叡山電鉄で初めて電気指令式ブレーキ日本エヤーブレーキ製HRD-1)が採用された[20][10]

800系の台車
デオ800形の台車
FS-544
デオ810形の台車
FS-556

冷房装置・補助電源装置

RPU3044冷房装置 ワンマン運転開始時に車外スピーカーが取り付けられている。 デオ810形屋根上の静止形インバータ
RPU3044冷房装置
ワンマン運転開始時に車外スピーカーが取り付けられている。
デオ810形屋根上の静止形インバータ

冷房装置は車両中央部屋根上に容量15.1 kW(13,000 kcal/h)の東芝製RPU3044 2基が搭載された[4]。デオ800形の補助電源装置は容量70 kVAのTDK3720ブラシレス電動発電機が採用[4]され、鞍馬寄りの車両の床下に搭載された[11]。デオ810形には各車の鞍馬寄り屋根上に容量 30 kVAの静止形インバータが搭載されている[7]

パンタグラフ・空気圧縮機

デオ800形(左)とデオ810形(右)のパンタグラフ デオ800形(左)とデオ810形(右)のパンタグラフ
デオ800形(左)とデオ810形(右)のパンタグラフ

デオ800形は出町柳寄りの車両(800番台)に菱形パンタグラフ2基が[2]、デオ810形は各車の出町柳寄りに下枠交差形のパンタグラフが搭載された[11]。デオ800形では850番台の車両に容量1,590 リットル/分のHB-1500B電動空気圧縮機が搭載され[1][3]、デオ810形では各車両に電動機出力4.2 kWのDH-25が搭載された[7]

800系の電動空気圧縮機
DH-25電動空気圧縮機
HB-1500B電動空気圧縮機

改造工事

800系電車には製造後各種の改造工事が行われている。

815 - 816号車の編成の塗装変更

815 - 816号車の編成登場時は「エコモーション・トレイン」塗装だったが、2003年7月に近畿車輛デザインによる四季の森をバックに動物を描いた「ギャラリートレイン・こもれび」に変更されている[24] [25]

「ギャラリートレイン・こもれび」
塗装変更時にスカートが追加されている

帯デザイン変更

2013年(平成25年)から帯デザインと社名ロゴが順次変更されている[26]

塗装変更前後の姿
変更前の801号車。2色の帯が接している
変更後の801号車。帯の間にクリームの部分がある

運用

1989年(平成元年)10月に京阪電鉄鴨東線開業が開業し、1978年(昭和53年)4月の京都市電東山線の廃止以来の鉄道路線との接続がない状態を脱した叡山電鉄の利用客は2倍に増加した[8][19]。増加した旅客に対応するため1991年(平成3年)9月に戦時中に単線化されていた[27]鞍馬線岩倉駅二軒茶屋駅の複線を復活、同年10月に叡山電鉄初の2両永久連結の800系が投入された[8][2]。800系は登場当時から鞍馬線出町柳 – 鞍馬間で運用され[2]叡山本線宝ヶ池八瀬比叡山口間には通常乗り入れない。2004年(平成16年)1月から鞍馬線の2両運転の列車も原則としてワンマン運転となった[19]


脚注

注釈

  1. ^ 800系登場時の紹介記事では801 - 851号車の編成の帯色について、洛北と鴨川をイメージしたもの、とされていた[2]

出典

  1. ^ a b c d 『新車年鑑1991年版』p243
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t 『新車年鑑1991年版』p186
  3. ^ a b 『鉄道ファン』通巻440号折込みカラー
  4. ^ a b c d e f 『新車年鑑1991年版』p240
  5. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻357号p62
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 車両紹介 800系(デオ800形)”. 叡山電鉄. 2014年10月5日閲覧。
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 車両紹介 800系(デオ810形)”. 叡山電鉄. 2014年10月5日閲覧。
  8. ^ a b c d e 田中 et al 1998p254
  9. ^ a b 『新車年鑑1991年版』p131
  10. ^ a b 『ナブコ技報告』通巻72号p44
  11. ^ a b c d e f 『私鉄車両編成表 2012』p117
  12. ^ a b c d e 『新車年鑑1996年版』p98
  13. ^ a b c 『新車年鑑1993年版』p104
  14. ^ a b c d 『新車年鑑1993年版』p105
  15. ^ 『新車年鑑1994年版』p88
  16. ^ a b 『新車年鑑1994年版』p89
  17. ^ a b c 『新車年鑑1994年版』p178
  18. ^ a b 『新車年鑑1996年版』p194
  19. ^ a b c d e 『鉄道ファン』通巻641号p101
  20. ^ a b c 『鉄道ファン』通巻318号p65
  21. ^ 『新車年鑑1993年版』p190
  22. ^ a b c d e 『新車年鑑1994年版』p170
  23. ^ a b 『新車年鑑1996年版』p185
  24. ^ 叡山電鉄「こもれび」登場 デザインを担当”. 近畿車輛. 2014年9月10日閲覧。
  25. ^ 叡山電鉄”. CSR報告書 2005. 京阪電鉄. p. 21. 2014年9月10日閲覧。
  26. ^ 叡電デオ800形801-851編成が塗装変更される”. railf.jp(鉄道ファン・交友社) (2013年4月2日). 2014年10月5日閲覧。
  27. ^ 田中 et al 1998p250

参考文献

書籍

  • 田中真人、宇田正、西藤二郎、1998、『京都 滋賀 鉄道の歴史』、京都新聞社

雑誌記事

  • 鉄道ファン』通巻318号(1987年10月・交友社
    • 叡山電鉄叡営業課「叡山電鉄に初の冷房車 デオ710形が登場」 pp. 64-67
  • 『鉄道ファン』通巻357号(1991年1月・交友社)
    • 「叡山電鉄800系登場」 pp. 62
  • 『ナブコ技報』通巻72号(1991年7月)(1991年7月・株式会社ナブコ)
    • 森田 光正 (日本エヤーブレーキ)「叡山電鉄800系車両用HRDブレーキ装置」 pp. 44-46
  • 鉄道ピクトリアル』通巻550号「新車年鑑1991年版」(1991年10月・電気車研究会
    • 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 122-138
    • 叡山電鉄(株)「叡山電鉄 デオ801形」 pp. 186
    • 「車両諸元表」 pp. 238-240
    • 「竣工月日表」 pp. 241-263
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻582号「新車年鑑1993年版」(1993年10月・電気車研究会)
    • 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 96-110
    • 「1992年度車両動向」 pp. 187-209
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻597号「新車年鑑1994年版」(1994年10月・電気車研究会)
    • 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 80-95
    • 「1993年度車両動向」 pp. 167-189
  • 『鉄道ピクトリアル』通巻597号「新車年鑑1996年版」(1996年10月・電気車研究会)
    • 藤井信夫、大幡哲海、岸上明彦「各社別車両情勢」 pp. 88-105
    • 「1995年度車両動向」 pp. 183-210
  • 『鉄道ファン』通巻440号(1997年10月・交友社)
    • 「叡山電鉄900系形式図・主要諸元表」
  • 『私鉄車両編成表 2012』(2012年7月・交通新聞社
    • 「叡山電鉄」 pp. 117
  • 『鉄道ファン』通巻641号(2014年9月・交友社)
    • 寺田裕一「日本のローカル私鉄 30年前の残照を訪ねて その16」 pp. 98-103