海上保安庁訓練機不時着事故

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海上保安庁の不時着
事故の当該機
事故の概要
日付 2023年4月18日
概要 調査中
現場 日本の旗 日本大分県宇佐市
乗員数 2
負傷者数 2
死者数 0
生存者数 2 (全員)
機種 テキストロン・アビエーション式172 S型
運用者 海上保安庁
機体記号 JA395A
出発地 日本の旗 北九州空港
目的地 日本の旗 北九州空港(訓練飛行)
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海上保安庁訓練機不時着事故(かいじょうほあんちょうくんれんきふじちゃくじこ)は2023年(令和5年)4月18日大分県宇佐市で発生した、海上保安庁の小型機(練習機)による航空事故。エンジントラブルにより、農地に不時着した。

事故の経緯[編集]

海上保安学校宮城分校北九州航空研修センターに所属する訓練機(機種:セスナ 172、機体記号: JA395A。以下、「当該機」とする。)は4月18日午前9時15分頃[1]、北九州空港から出発した[注 1]。搭乗者は40代の教官と20代の訓練生の2名であった。

当該機の飛行目的は訓練であり、トラブル発生までは訓練生が操縦を行っていた。離陸後は宇佐市の上空でエンジンの出力を100%に上げるなどして操縦感覚を養う訓練を行っていた[3]ところ、航空管制を担当している築城基地[注 2]に教官から「エンジンの出力があがらない。緊急着陸する」との無線通信があり、10時2分頃に宇佐市松崎の畑に着陸した[4][5]Flightradar24の記録によれば、9時53分ごろには高度を下げ始めており[注 3]、10時1分にトランスポンダのスコークを7700に設定している[2]

不時着は教官の操縦によって行われた[1]。着陸後、乗員が自力で消防に通報した[4]

当初の予定では10時30分頃に北九州空港に戻る予定であった[1]

機体は不時着後に上下がひっくり返った状態になった[6]が、乗員の2名は軽傷(首の捻挫)であり、命に別条はないという[1]

機体[編集]

事故の当該機はセスナ172S(テキストロン・アビエーション式172 S型)で、2018年3月に海上保安庁に納入された[7]。海上保安庁における登録番号はSA395で、愛称は「あまつばめ5号」である[8]。当初は第一管区海上保安本部の千歳航空基地にて、教官要員予定者の技量維持を目的とした訓練機として使用されていた[7]

その後、2020年4月1日に新設された北九州航空基地に同月10日付けで移転し、飛行機操縦要員の養成に使用されるようになった[9]

なお、2018年8月に訓練飛行で千歳飛行場に着陸した際、バウンドによってポーポイズ状態に陥り、機体前部を損傷した[10]。その後、胴体前方の修理が実施されている[11]

事故の調査[編集]

2024年3月28日、運輸安全委員会は「1年以内に調査を終えることが困難」であるとして、途中経過を報告した。これによると、不時着のおよそ10分前にはエンジンの出力が100%から約60%に低下していた。これは本来であれば飛行を継続できる出力であるが、実際には高度を維持できなくなった。また、不時着直前には後方から黒い煙が出ていたとの報告もある[12]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 離陸時刻は9時19分頃。滑走路18であった[2]
  2. ^ 築城基地は同基地の自衛隊機のみならず、北九州空港山口宇部空港を発着する民間機など、周防灘におけるターミナルレーダー管制業務を行っている。
  3. ^ この降下開始がトラブルによるものか否かは、現時点では明らかになっていない点に留意が必要である。

出典[編集]

  1. ^ a b c d 海保小型機が不時着、訓練中に「出力上がらない」と無線連絡…2人が首を捻挫”. 読売新聞社 (2023年4月18日). 2023年4月19日閲覧。
  2. ^ a b Playback of flight JA395A”. Flightradar24. 2023年4月19日閲覧。
  3. ^ 海保の小型機が不時着 直前に「エンジンの出力あがらない」”. NHK (2023年4月18日). 2023年4月19日閲覧。
  4. ^ a b 海保練習機が不時着 乗員2人、命に別条なし―大分”. 時事通信 (2023年4月18日). 2023年4月19日閲覧。
  5. ^ 大分で海保セスナ不時着 2人搭乗、命に別条なし”. 山陽新聞 (2023年4月18日). 2023年4月19日閲覧。
  6. ^ 海保セスナ機、不時着で現地調査 運輸安全委、大分・宇佐”. 河北新報 (2023年4月18日). 2023年4月19日閲覧。
  7. ^ a b 海保初のセスナ172S全5機の納入が完了 JA391Aから395A”. FlyTeamニュース (2018年3月9日). 2023年4月19日閲覧。
  8. ^ 船艇・航空機”. 第七管区海上保安本部. 2023年4月19日閲覧。
  9. ^ 海上保安庁、9機の定置場を新拠点「北九州航空基地」へ移転登録”. FlyTeamニュース (2018年3月9日). 2023年4月19日閲覧。
  10. ^ AA2019-9 航空事故調査報告書”. 運輸安全委員会 (2019年10月31日). 2023年4月19日閲覧。
  11. ^ 平成31年3月1日 官報”. 国立印刷局. 2023年4月19日閲覧。
  12. ^ 海保小型機の不時着事故 1年以内の原因調査が困難との見解 運輸安全委員会が経過公表 大分”. テレビ大分 (2024年3月28日). 2024年3月29日閲覧。

関連項目[編集]