植物人間 (架空の生物)

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植物人間(しょくぶつにんげん)とは、SF作品などに登場する架空の存在である。植物と共通する体構造や特徴を持つヒューマノイド型の生命体で、植物から進化した生命体として描かれることが多い。「人間植物」と呼ばれる場合もある。

大きな特徴は2つあり、

  1. 頭部や四肢を備えており、シルエットが人間に近い
  2. 自律行動をする(知性のある場合と、本能的な行動の場合の2種類に分類される)

となっているが、1については必ずしも人間の体型に近い場合ではない(非人間型を参照)。2については、例えば『ウルトラマン』のケロニアは植物人間に分類されるが、怪奇植物 スフランは植物人間とは見なされていない。これは、単に「蔓が延びる」などの場合や、実在の植物にも見られる行動(種子が飛ぶ、ひっつき虫のように実を動物にくっつけるなど)が除外されるからである。

主な事例[編集]

人間型と非人間型に大別できる。

人間型[編集]

マゾーン
松本零士の漫画(1977年-1979年)およびテレビアニメ(1978年-1979年)『宇宙海賊キャプテンハーロック』に登場。
見た目は美女で、人間(地球人)と見分けがつかない異星人である(緑系や青系に近い体色の者もいる)。複数が登場する。

頭部が違うタイプ[編集]

四肢があり、シルエットは人類に近いが、頭部が明らかに人間とは異なっているもの。

ゴドメス星人
円谷プロダクションの特撮テレビドラマ『恐竜戦隊コセイドン』(1978年-1979年)に、第1話から第28話まで登場。
宇宙を股にかける侵略者で、知性を持っている。人類に近い体型であるが、顔は明らかに違うタイプで、下級構成員はほとんど喋ることがない。また、死亡してもクローン化で蘇る、300年から400年生きるなど、人類とかけ離れた存在である。複数が登場する。

変身型[編集]

本体は人間と異なる外見だが、変身能力を持つタイプ。

吸血植物 ケロニア
円谷プロのテレビ特撮番組『ウルトラマン』(1966年-1967年)第31話「来たのは誰だ」に登場。
人類そっくりに化けることが可能で、高い知性と文明を持ち会話も可能であるが、本体は緑色で顔も人間とは違っている。目から怪光線を放ち、50メートルに巨大化できる能力も持っている。
ポイズン・アイビー(1966年-現在進行中)
アメリカン・コミックスバットマン』などに登場する女性ヴィラン(悪役)。アイビー自身は人間がベースだが、彼女の作り出した植物は自律行動をするものがいる。
ほとんどの場合は非人間型であるが、テレビアニメ『バットマン』(1990年代)の「地獄のスイート・ホーム」に登場したタイプは、人間そっくりに化けることができた。

非人間型[編集]

一目で「人間ではない」と判別できるタイプ。足が3本あるなど、体型が著しく異なっている。

植物人間
アメリカの作家エドガー・ライス・バローズのSF小説『火星の女神イサス』(1913年)に登場。
火星のドール谷に住む種族。身長は3メートルから4メートル。2メートルほどの尾がついており、先端は薄い刃のようで、戦闘の際に使用する。腕は短く、ゾウの鼻のようになっている。全身は青色系だが、見る者に薄気味悪い印象を与える色合いである。目は単眼で、顔から飛び出している。頭部以外は毛がない。髪は長さ20センチメートルから30センチメートルほどで、太さが大きなミミズぐらいあり、自在に動いている。胴体や脚のほとんどは人間に似ているが、踝から爪先までは1メートルほどの長さになっている。鼻の穴は円形だが歪んだ形で、顔の中央にある。口は頭部にはなく両手にあり、撫でるような仕草で植物を取り込む。カミソリのような鋭い爪がある。移動の際はカンガルーのように跳ね、一度に8メートルから9メートルも跳躍する。群れで行動し、リーダーが統率している。人間(火星人)を襲うほど獰猛である[1]
火星の伝説によれば、火星で初めて生まれた動物がこの植物人間とされる[2]
トリフィド
イギリスの作家ジョン・ウィンダムのSF小説『トリフィド時代』(1951年)に登場[3]
3本足(元は根であった部分)で移動する。トリフィド同士で意思の疎通はある模様だが、文化・文明と呼べるほどのものはない。良質な植物油が採れるので栽培していた物が野生化し、肉食なので人類の脅威となった(ほとんどの人類は物語冒頭で盲目化しているため、トリフィドは危険な存在となっている)。漏斗型の頭頂部から一本の蔓が生えて、これが伸びて鞭のような武器となる。この蔓を切除することで人類はトリフィドを家畜化していた。
同作を映画化した『人類SOS!』(1962年)にも登場するが、こちらは宇宙から来たという設定になっており、退治法も見つかっている。
人間植物リリー
藤子・F・不二雄の漫画『キテレツ大百科』(1974年-1977年)第23話「人間植物リリー」(初出は『こどもの光』1976年2月号)[4]に登場。
会話能力を持っている。

伝説・神話での類型[編集]

マンドラゴラ
マンドラゴラ(Mandragora)、またはマンドレイク(Mandrake)とも呼称される。根が二股になっており、歩き回ることができる。醜い顔をもち、聞いた者を即死させる叫び声をあげる。
アルラウネ
マンドレイクの亜種としてドイツにアルラウネ(Alraune)がある。断頭台の露と消えた罪人の血を吸って生長する植物。また、絞首刑になった男の精液から生じるという伝承がある。水木しげるの『妖花アラウネ』などの創作作品、『ソードワールドRPG』などのテーブルトークRPGなどでは美少女型に成長した個体が登場することも多い(外見は少女その物だが、植物なので怪我をしても出血せず、赤い樹液が代わりに流れる)。元になった人間の血から、姿なのみならず性格までコピーする個体も存在する(『新ソード・ワールドRPGリプレイ』に登場する「チビーナ」「プチーナ」「ロリーナ」ら三姉妹など)。

出典[編集]

  1. ^ エドガー・ライス・バローズ 『火星の女神イサス』 厚木淳訳、東京創元社創元推理文庫〉、1979年、20-27頁。
  2. ^ リチャード・A・ルポフ 『バルスーム』 厚木淳訳、東京創元社、1982年、214-215頁。
  3. ^ 『トリフィドの日』峯岸久訳 世界SF全集19 早川書房 1969年1月発行。
  4. ^ キテレツ大百科(2)|藤子・F・不二雄 大全集|小学館