智天使
智天使(ちてんし、ヘブライ語ケルブ(ケルーブ) כְּרוּב kĕrûḇ、複数形ケルビム (ケルービーム) כְּרוּבִים kĕrûḇîm、 ギリシア語: χερούβ、複数形 Χερουβείμ, χερουβίμ、ラテン語 Cherub, 複数形 Cherubim、英語Cherub、複数形cherubim又はcherubs)は、天使の一種。偽ディオニシウス・アレオパギタに由来する「天使の階級」では第二位に位置づけられる。
転写「ケルビム」「ヘルヴィム」
日本のキリスト教教会では大抵「ケルビム」と呼ばれ、日本聖書協会も「ケルビム」との表記を用いているが、日本ハリストス正教会では「ヘルヴィム」(明治時代の文献では『ヘルワィム』と書いてヘルウィムと読ませていたものが多数存在する)と呼ばれている。いずれもギリシャ語転写の"Χερουβείμ"が基になっているが、こうした違いが発生したのはギリシャ語発音が時代によって変化した事に由来する。
ギリシャ語表記"Χερουβείμ"は、古典再建音では「ケルーベイム」であり、中世以降の発音は「ヘルヴィム」である。前者を西方教会が継承し、後者を正教会が継承した。これらの転写の違いが日本においても、教派ごとに異なる片仮名表記に結果している。
概要
旧約聖書の創世記によると、主なる神はアダムとエバを追放した後、命の木への道を守らせるためにエデンの園の東に回転する炎の剣とともにケルビムを置いたという。また、契約の箱の上にはこの天使を模した金細工が乗せられている。神の姿を見ることができる(=智:ソフィア)ことから「智天使」という訳語をあてられた。
エゼキエル書10章21節によれば、四つの顔と四つの翼を持ち、その翼の下には人の手のようなものがある。ルネッサンス絵画ではそのまま描写するのではなく、翼を持つ愛らしい赤子の姿で表現されている。これをプット(Putto)という。
「彼はケルブに乗って飛び、」(サムエル記下22章11節)「主はケルビムの上に座せられる。」(詩篇99編1節)といった記述があり「神の玉座」「神の乗物」としての一面が見られる。
ケルブの起源をアッシリアの有翼人面獣身の守護者「クリーブ(kurību)」とする説がある。
旧約聖書によるとケルビムの姿は「その中には四つの生き物の姿があった。それは人間のようなもので、それぞれ四つの顔を持ち、四つの翼をおびていた。・・・その顔は"人間の顔のようであり、右に獅子の顔、左に牛の顔、後ろに鷲の顔"を持っていた。・・・生き物のかたわらには車輪があって、それは車輪の中にもうひとつの車輪があるかのようで、それによってこの生き物はどの方向にも速やかに移動することができた。・・・ケルビムの"全身、すなわち背中、両手、翼と車輪には、一面に目がつけられていた"(知の象徴)・・・ケルビムの一対の翼は大空にまっすぐ伸びて互いにふれ合い、他の一対の翼が体をおおっていた(体をもっていないから隠しているという)・・・・またケルビムにはその翼の下に、人間の手の手の形がみえていた(神の手だという)」とされている。
なお絵画表現において、セラフィムと混同されて描かれているものもある。
フィクションに登場する智天使
他の天使の階級や固有名詞と同様、数多くの漫画やアニメ、ゲーム、ライトノベルといったサブカルチャー作品に、智天使の名を冠した、あるいはその特徴をモチーフとした登場人物やメカニック、モンスターが登場することがある。
関連項目
- 天使の一覧
- ヘルヴィムの歌 - ヘルヴィムに倣うべきことを記憶する正教会の聖歌。
- リピタ - ヘルヴィムが描かれ、もしくは彫られた、正教会の祭具。
- 交響曲第9番 (ベートーヴェン)(第九):コーラスにゲルビムが登場する。
- エホバの証人
- ものみの塔聖書冊子協会
- 黒い天使
外部リンク
- 見ゆると見えざる万物 - 正教会における天使・悪鬼・人間・罪悪の捉え方についての概説