熾天使
熾天使(してんし)は、天使の位階のひとつ。ヘブライ語で単数形は שְׂרָפ Śĕrāp_ セラフ、複数形はשְׂרָפִים Śĕrāp_îm セラフィム(セラーフィーム)となる。ギリシア語ではΣεράφ, Σεραφείμ/Σεραφίμ、ラテン語では Seraph, Seraphim と呼ばれており、ヘブライ語の音写がそのまま使われている。「熾」は「火が盛んに燃える」の意で[1]、神への愛と情熱で体が燃えていることを表す。
偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた天使の九階級のうち最上とされる。三対六枚の翼を持ち、2枚で頭を、2枚で体を隠し、残りの翼で羽ばたく。
『民数記』にはネハシム-セラフィム(「燃える蛇たち」)が出てくるが、これは火のごとき空を飛ぶ蛇の姿であるという。元々セラフィムの一説には起源は、セラピムと呼ばれるカルデア神話に登場する稲妻の精であり、六枚の翼を持つ蛇の姿をして炎の様に飛んだといわれている[2]。これが後にユダヤ教に影響された可能性もあるが、学術的には結論が出ていない。
神の御前にいるとされるラファエル、ウリエル、ミカエル、ガブリエルの四大天使は偽ディオニシウス・アレオパギタが定めた天使の九階級のうち下から二番目の階級の大天使と記されているが、イギリスの詩人ジョン・ミルトンの『失楽園』では、この四大天使は熾天使として扱われている。また、悪魔の王となったルシファーも、堕天する以前は最上級の熾天使であったとされている(ルシファーは特別に、12の翼を有し、なによりも美しく光輝いている、と言われる)。
『イザヤ書』の熾天使[編集]
『イザヤ書』には以下のような描写がある。
私は、主が王座の上に座って、顔を上げられるのを見ました。 彼の上に、セラフィムは立っていました。それぞれには、6つの翼があり、2つの翼で、彼は顔を隠した。そして、2つの翼で足を覆った。そして、2つの翼で飛翔されたのです。 — 『イザヤ書』6:1–2
『ヨハネの黙示録』の熾天使[編集]
セラフィムはまた、いつまでも神の存在が永遠であるようヨハネの黙示録で言及されて、絶えず彼を称賛している。『「昼夜、彼らは、言うのを決して止めません」 「聖なるかな、聖なるかな、聖なることは、主の元に来ることができる。(Sanctus, Sanctus, Sanctus Dominus Deus Sabaoth. Pleni sunt cæli et terra gloria tua)』と常に称えている。
ギャラリー[編集]
「神の母」。ハリストス・生神女・セラフィムが描かれている。ヴィクトル・ヴァスネツォフ(1901年)
『ベリー公のいとも豪華なる時祷書(Très Riches Heures du Duc de Berry)』に描かれた、パトモス島の福音書記者ヨハネの図。王座の周りを4人の熾天使(セラフィム)が囲み、純粋をあらわす白いローブに身を包む24人の長老が両側に座る。
アギア・ソフィア大聖堂内に描かれた熾天使には顔も手足もなく、中央の星と6枚の翼だけで表現されている。14世紀の作画を復元したもの。
熾天使、ステンドグラス、聖ミカエル及諸天使教会、ソマートン、サマセット、イングランド。
出典[編集]
参考文献[編集]
- フレッド・ゲティングス著、大瀧啓裕訳 『悪魔の辞典』 青土社、1992年。
- 真野隆也 『天使』 新紀元社、1995年。
- 真野隆也 『堕天使』 新紀元社、1995年。