日本製鉄八幡製鉄所くろがね線

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戸畑第一操車場を出発する貨物列車(2009年3月)

くろがね線(くろがねせん)は、日本製鉄福岡県北九州市戸畑区八幡東区に設けている八幡製鐵所の、戸畑地区と八幡地区を結ぶために敷設した専用鉄道の通称である。

概要[編集]

E8501が牽引する列車。枝光駅近くの宮田山トンネル八幡側坑口付近にて。周辺は住宅地である(2009年2月)
かつては複線であったが、現在片側の線路は撤去されている。戸畑区中原にて。(2010年11月)

八幡製鉄所では、戸畑で操業していた東洋製鐵と1921年に合併した当時から、戸畑地区で生成する熔銑を船舶で八幡へと輸送していたが、海上輸送のリスクと不経済性が指摘されていた。一方八幡地区では、製錬過程で発生する鉱滓の処理が問題化していた。これらの打開策として建設されたのが、くろがね線である。

1927年3月に起工し、1930年2月に開業した。開業当初は、戸畑から八幡へは銑鉄を輸送し、鉄の製錬工程の一端を担う一方、八幡から戸畑へは埋め立て用の鉱滓を輸送し、戸畑地区の拡張に寄与した。

開業時は炭滓線(たんさいせん)と命名されていた[1]が、炭滓の輸送がほとんどなくなったことから1972年に社員公募を実施し、現在のくろがね線という通称が生まれている。

日本国有鉄道(現:九州旅客鉄道日本貨物鉄道)とは運用上の繋がりのない路線ではあるものの、国鉄線を介して原料・製品輸送を行う都合上、軌間車両限界については国鉄在来線と同等である[2]。開業時より直流600Vで電化されている。総延長はおよそ6kmで、当初は輸送量も多かったことから複線であった。戸畑地区への設備集約と八幡地区の縮小によって当路線の輸送量も減り、現在では単線化されている。途中、鹿児島本線と二回立体交差する(スペースワールド駅枝光駅間、九州工大前駅の東方)。また山を避けて敷設された鹿児島本線とは異なり、当専用鉄道は山をトンネルで突き抜けるように敷設されたが、その宮田山トンネル(総延長1,179m)は出水に見舞われて難工事となった。

運行[編集]

電気機関車が本務機として列車の先頭にたち、ディーゼル機関車が後部補機として連結されるのが標準的な編成である。当製鉄所構内の貨車には、一般的な鉄道車両のようにブレーキ管が引き通されていない[3]ため、停止時のブレーキ力を得るために緩急車として後部補機が連結される。列車によっては、ディーゼル機関車2両によるプッシュプルや、補機が連結されない場合もある。

貨車は台車(国鉄でいう長物車)が中心で、積荷は列車によって異なり、半製品のスラブやホットコイル、鉄スクラップ(鋼矢板や鉄道用レール)など多様である。日本国内ではあまり馴染みが無いが欧州各国ではよくみかける防水フード付台車[4]が使用されているのも特徴である。

機関車は、沿線が宅地化されてから1970年代以降に導入されたものが使用されており、防音対策が施されている。軌道は工場敷地外では切通や高架区間が多い。かつて複線だった頃は戸畑の第一操車場の南側に踏切が存在したが、現在では公道と交差する踏切はない[5]。公道と並走する区間もあるが、高いフェンスが張られていて、部外者の侵入を防いでいる。

現在は人員用としては利用されていないが、以前は戸畑・八幡地区に在住する製鉄所社員に対し、一部を戸畑-八幡間の通勤・移動用に開放しており、実際に本列車を移動用に利用したという社員の証言が残っている。[要出典]

車両[編集]

機関車[編集]

  • 85ED-1形[6](E8501 - E8504)
    電気機関車。1976年三菱重工製。軸配置BBで電気方式は直流600V。定格出力560kVA。運転整備重量85t。
  • 70DD-3形[2](D704, D705)
    ディーゼル機関車。1975年日本車輌製造製。軸配置BB。機関は神鋼造機製DMF31SB×2機搭載。運転整備重量70t。携帯用無線操作器による遠隔操縦に対応している[3]

貨車[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 『世界の鉄道』朝日新聞社、1970年。
  2. ^ a b 鉄道史資料保存会編, 編纂.『日車の車輌史-戦後産業車両 輸出車両編-』、日本車輌鉄道同好部、1998年。
  3. ^ a b 永瀬 和彦「入換用ディーゼル機関車の自動運転」『日本機械学会誌』、社団法人日本機械学会、1975年。
  4. ^ a b 2008年現在、日本国内の各鉄道会社線には同タイプの貨車が存在しないため、ドイツ鉄道の同型車「Rils/Rilns」が「Flachwagen mit Planenhaube」と呼称されていることに倣い、便宜上付与した名称であることに注意されたい。当貨車に形態・用途面で類似する車両としては、かつて国鉄に存在した貨車トキ1000形がある。
  5. ^ 参考:岩堀春夫『製鉄所・鉱山の機関車』ないねん出版、DVD(1986年12月11日撮影)、ISBN 978-4-931374-60-7 C0865
  6. ^ 杉田 肇「新日鉄八幡製鉄所 新形電気機関車85ED-1形概説」『電気車の科学』、電気車研究会、1977年9月。