政治決断

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政治決断(せいじけつだん)とは、賛否が分かれて結論の出せない問題、法令に反する問題、または法令に規定のない問題について政治家が方針を決定すること[1]政治判断とも呼ばれる[1]

概要[編集]

政治家は、政治を行う上で重大な決断を求められる場合があるが、特に賛否の分かれる事案についての決断、多数の反対意見に対向する判断、あるいは法的判断を超えた事項について内閣総理大臣国務大臣は、特に決定権限を有していることから「首相の政治判断で乗っ取り犯を釈放する」などのように使用されることが多い[1]

法治国家において、法令が想定していない非常事態などの場合に、法令に規定されていない特別な措置を行うには、内閣が政治的責任に基づいて判断することになる。例えば、テロなどで人質の命が脅かされた場合に法律を逸脱して犯人の要求に従ったり、法律が想定していない有事において立法を行わず強硬な措置を行う場合などに政治的判断が行われる。こうした政治的判断により国家が法律に規定された範囲を超えて行う特別な行為を「超法規的措置」と呼び、日本国憲法に反する行政権の行使ではなく、違憲ではないとされている(第183回国会衆議院内閣答弁書)。

外交問題でも、刑事司法上の判断とは別に、内閣が外交上の判断を行い、それに基づいて最終的な刑事処分を決定することが必要となる。この種の事案に対しては、国家の主権と他国との外交関係の兼ね合いで判断することが求められるが、これは刑事司法機関の所管外の事項であるため、内閣が政治的責任に基づいて判断することになる。その場合、刑事事件としての対応や処分に外交上の判断を反映させる制度として、検察庁法14条但書に基づき、内閣の一員である法務大臣には検事総長に対する指揮権が認められている[2]

過去に政治決断と称された事案[編集]

  • 1977年、フランスのパリにおいて日本航空機が、経由地のインド、日本赤軍によりハイジャックされ、身代金の要求等がなされた。日本国政府は議論の末、当時の福田赳夫首相人命は地球より重いと述べて、身代金の支払い及び、超法規的措置としてメンバーなどの引き渡しを決断。身代金と、釈放に応じたメンバーなど6名をダッカへ輸送した。この決断に関しては、賛否両論の声があった。
  • 2001年(平成13年)、熊本地裁は、国立ハンセン病療養所にいる入所者がらい予防法による国の隔離政策の継続は違憲であると判断した。当時の小泉純一郎首相は控訴することを断念した。これまで厚生労働省では、薬害公害等による訴訟に関しては最高裁まで争うことが通常であったが、政治決断により、控訴を断念している。
  • 2007年薬害C型肝炎問題で原告側は裁判の長期化等を避けるために、国に対して政治決断を声高に求めた。当時の福田康夫首相は、原告側の声や世論の声等を背景に、最終的に被害者を一括救済することを決めた。大阪高等裁判所から提示されていた和解案は病状に応じて補償額を変えているものであったため、患者側の反発を受けていたが、これを政治決断で解消した形となった。福田内閣の支持率低下が背景にあるとも言われている。
  • 2021年、広島への原爆投下直後に、黒い雨を浴びて健康被害を受けたとして、国が指定した援護区域の外にいた原告の住民が被爆者に該当するかについて争われた裁判で、広島高裁は、原告全員を被爆者と認め、被爆者健康手帳を交付するよう国に命じた。菅義偉首相は上告することを断念した。厚生労働省では、公害による訴訟に関しては最高裁まで争うことが通例であるが、政治決断により、上告を断念している[6]

脚注[編集]

関連項目[編集]