撞着語法
撞着語法(どうちゃくごほう、英語: oxymoron)とは、修辞技法のひとつ。「賢明な愚者」「明るい闇」など、通常は互いに矛盾していると考えられる複数の表現を含む表現のことを指す。形容詞や連体修飾語、句、節などが、修飾される名詞と矛盾することとしては、形容矛盾(けいようむじゅん)とも言う。論理的には、「Aであって、かつ、not A」であるということはありえない(矛盾律)のにもかかわらず、そうであるかのように語ることである。狭い見方をすればつじつまがあわず、単なる誤謬にすぎないように見えるが、複雑な内容を簡潔に表現する修辞法として用いられている場合もある。
撞着語法の例[編集]
一目瞭然の撞着語法[編集]
- 急がば回れ
- ゆっくり急げ
- 負けるが勝ち
- 黒い白熊
- 良い悪人
- 小さな巨人
- サウンド・オブ・サイレンス
- 無知の知
- 見えざるピンクのユニコーン
- 白いカラス
- 生ける屍
- 公然の秘密
ひねった撞着語法[編集]
基本的な撞着語法においては、前述のとおり論理的に矛盾した表現を指していう。 一方、文化や偏見といった前提となる価値観の下でのみ成立する撞着語法に類した表現も可能となる。
例
- 明るいオタク
- 「オタクは暗い」という前提の下においてのみ、明るい“暗い人”という形容矛盾が成立する。
- 美人女優
- 「悪魔とは優しくないものである」との前提。悪魔という語自体が表現的であるため、前提がないと成立しない。
- 誠実な政治家
- 冷たい情熱
- 「情熱とは熱いものである」という前提をあえて裏切る表現。「冷たい」と形容される情熱があるという前提を認めないと成立しない。
撞着語法の効果[編集]
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撞着語法を用いて、受け手に強い違和感を与えることで、言及している内容への興味を誘引したりすることができる。 また、敢えて矛盾した語を以って対象を説明することにより、対象への皮肉としての効果をもつ場合がある。 一方で、一見「深い意味や含蓄のある」ように見えて、内容の伴わない単なる言葉遊びに終始してしまう恐れがあるため、注意が必要である。
文学では、シェイクスピアが『マクベス』のなかで「きれいは汚い、汚いはきれい・・・」という表現を用いたのが有名。