拡張条虫
拡張条虫 Moniezia expansa | |||||||||||||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
| |||||||||||||||||||||||||||
学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Moniezia expansa (w:Karl RudolphiRudolphi, 1805) Blanchard, 1891[1] | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
拡張条虫 |
拡張条虫(かくちょうじょうちゅう、学名:Moniezia expansa)は、ヒツジ、ヤギ、ウシ、シカ、トナカイ、カモシカなどの小腸に寄生する条虫の1種。ペルーからブタへの感染例[2]、エジプトからヒトへの感染例が報告されている[3]。
形態
[編集]体長100-500cm、体幅12-15mm。典型的な条虫であり、頭節と、それに続く無数の片節から構成されている。頭節には4つの大きな吸盤があるが、額嘴や棘などはない[4]。各片節は幅広くて短く、1対の生殖器がある。片節の間には片節間腺があるが、その機能は明らかでない。虫卵は丸みを帯びた三角形で、直径56~67μm、内部に六鉤幼虫を入れる洋梨状装置を有する。
生活環
[編集]反芻動物を終宿主、ササラダニを中間宿主とする[5][6]。虫卵は受胎片節として糞中に排出され、ダニに食べられる。食べられなかった場合1日で乾燥して死ぬが、ダニの数は膨大であるため、3%のダニに4-13匹が感染しているとした場合でも、牧草1kgあたり2,000匹の幼虫が存在する計算になる。虫卵はダニ体内で孵化してオンコスフェアとなり、血体腔に移動してシスチセルコイドとなる。この過程は4か月ほどかかることがある。ダニが終宿主に食べられると、幼虫は小腸に移動して5-6週間で成虫になる。子羊ではしばしば濃厚感染がみられ、その場合にはそれぞれの虫体が小さくなる密度効果と呼ばれる現象が認められる。
診断と治療
[編集]通常は無症状であるが、子羊での濃厚感染例では消化障害・下痢・体重減少などが認められることがある[7]。
診断は検便で虫卵や片節を検出することにより行われる。治療には主にニクロサミドが用いられる。アルベンダゾールは19-75%、プラジカンテルも99–100%の場合で有効である[8]。プラジカンテル+レバミゾールはさらに有効で、拡張条虫が減少したことにより体重の増加が見られた[9]。
予防
[編集]牧草地のササラダニ対策が中心となる。牧草地を耕すことにより一時的ではあるがササラダニの個体数を減少させることができる。また、休牧もある程度の効果がある。
脚注
[編集]- ^ 日本寄生虫学会用語委員会 「暫定新寄生虫和名表」 2008年5月22日 Archived 2011年4月14日, at the Wayback Machine.
- ^ Gómez-Puerta LA, Lopez-Urbina MT, González AE (2008). “Occurrence of Moniezia expansa (Rud, 1810) Blanchard, 1891 (Cestoda: Anoplocephalidae) in domestic pig (Sus scrofa domestica Linnaeus, 1758) in Perú”. Vet Parasitol 8 (4): 380–381. doi:10.1016/j.vetpar.2008.08.019. PMID 19028016.
- ^ el-Shazly AM, Morsy TA, Dawoud HA (2004). “Human Monieziasis expansa: the first Egyptian parastic zoonosis”. J Egypt Soc Parasitol 34 (2): 380–381. PMID 15287174.
- ^ Mehlhorn H (2008). Encyclopedia of parasitology, Volume 1 (3rd edn). Springer. ISBN 9783540489948
- ^ Sinitsin DF (1931). “A Glimpse into the life history of the tapeworm of sheep, Moniezia expansa”. J Parasitol 17 (4): 223–227. doi:10.2307/3271458. JSTOR 3271458.
- ^ Denegri G, Bernadina W, Perez-Serrano J, Rodriguez-Caabeiro F. (1998). “Anoplocephalid cestodes of veterinary and medical significance: a review”. Folia Parasitol (Praha) 45 (1): 1–8. PMID 9516990.
- ^ Elliott DC (1986). “Tapeworm (Moniezia expansa) and its effect on sheep production: the evidence reviewed”. N Z Vet J 34 (5): 61–65. doi:10.1080/00480169.1986.35289. PMID 16031272.
- ^ Bauer C (199o). “Comparative efficacy of praziquantel, albendazole, febantel and oxfendazole against Moniezia expansa”. Vet Rec 127 (14): 353–354. PMID 2260242.
- ^ Southworth J, Harvey C, Larson S (1996). “Use of praziquantel for the control of Moniezia expansa in lambs”. N Z Vet J 44 (3): 112–119. doi:10.1080/00480169.1996.35947. PMID 16031907.
参考資料
[編集]- 平詔亨ほか著 『家畜臨床寄生虫アトラス』 チクサン出版社 1995年 ISBN 9784885004100
- 今井壯一ほか編 『最新家畜寄生虫病学』 朝倉書店 2007年 ISBN 4254460279