夜間学部

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夜間学部(やかんがくぶ)とは、大学教育において、夜間の時間帯に授業を行うことを主とする学部をいう。文部科学省では、文部科学白書および「わが国の文教施策」において「夜間学部」と総称している。

概要[編集]

第二次世界大戦後、「働きながらも学びたいという勤労学生のために教育の場を」という理念の元、夜間学部は多くの大学で設置された。当時、学習意欲の高い学生によって夜間学部は有意義な学問の場として機能した。

夜間学部は、多くのケースで独立した「学部」として専任教員を確保していない為、昼間学部の専任教員が夜間学部の講義を担当する(但し理科系の場合は、実習のため、学生が各研究室に配属されることから、小規模ながら専任教員を擁する(例:東京理科大学))。昼間学部と夜間学部で教員が重なることを利用し、夜間学部と昼間学部で相互履修を可能とする大学もある[1]

夜間学部の俗称として使用される二部(にぶ)とは、「学校教育法 施行規則 第一章 総則」第九条中に一日を二つに分けて授業を行うことを「二部授業」としていることから発生したもので、昼間に授業を開講していない夜間のみの学部学科であっても二部と呼ぶケースがあるが、これは法的には誤りである。そのため、文部科学省では白書などで「夜間学部」と総称している。なお、第九条の規定は大学のみならず学校教育法が適用される全ての教育機関に関する記述であるので注意が必要である。

学部名は前述の経緯から「○○学部第二部○○学科」などと学部名のあとに「第二部」が付加されることが多いが、大学により漢数字のほかにアラビア数字で「第2部」、ローマ数字で「第II部」と称するところ、「第」をつけずに単に「二部」と称するところ、昼間学部とは独立した学部として名の前に「第二」をつけるところなど様々なパターンがある。

授業料も夜間学部は昼間学部の半額程度に設定されている大学もある。

なお、第二部(学校教育法第九条)と昼夜開講制の夜間主コース(大学設置基準第二十六条)、夜間のみ開講される学部(学校教育法第八十六条、大学院は第百一条)は、文部科学省では全て夜間学部としてまとめているが法的な位置づけとしては異なる。

歴史[編集]

第二次世界大戦前から既に、旧制大学で、夜間の時間帯にも講義が行われていた。また、戦前の旧制専門学校などでは、黎明期の戦前から夜間教育という伝統を有していた学校(非大学)が数多く存在していた。

太平洋戦争期、大学を含む多くの校舎は、空襲等により罹災したり、軍の施設や戦時物資の生産工場への転用がなされていた。加えて、戦後の建築資材の不足と財政事情により、日本の教育現場は、戦後しばらくまでのあいだ、「青空教室」に見られるような、慢性的な校舎不足・設備不足に悩まされた。(太平洋戦争による『教育施設の罹災状況』:[1]

校舎の復旧・整備については、まず、『6・3制』が導入された小中の義務教育にその予算が割かれ[2]、国の財政事情から、私立の設備については設置者による自己負担が原則とされ、国公立についても義務教育のそれが優先されたため、大学は後回しとされた。よって、大学の校舎・設備の復旧・整備は遅々として進まなかった。そのような状況にもかかわらず、戦後の人口増加に進学率の上昇が加わり、大学生の数は急拡大を続けたため、大学の校舎設備や専任教員の補充が、これに追いつかなかい事態が恒常化した。このような問題への解決策として採用されたのが二部制であった。大学を『二部制』とすることにより、より多くの学生を、同じ施設に収容することが可能となり、収容定員の拡大が可能となった。加えて、学生にとっては、「一部」と同じ教授陣の講義が、負担の少ない授業料で受講できるといった利点が有り、教育の機会均等を保障する上でも大きな役割を果たした。さらに戦後の学制改革により、もともと夜間学校として存在していた東京理科大学青山学院大学のような旧制専門学校新制大学としての認可を得て、大学へと昇格したケースも少なくなく、これらの学校では新制大学への移行とほぼ同時に昼間学部とともに夜間学部を設置する「二部制」を採用した。東京理科大学では新制大学の認可が下りた1949年に、青山学院大学では新制大学認可の翌年1950年に「二部制」を採用している。

働きながら学ぶ勤労学生のために設置された夜間学部ではあったが、時代の流れとともに、高卒就職も少なくない公務員は別として、高卒事務職員の採用を減らした一般企業に勤めながら大学に在籍する勤労学生は減少し、昼間学部の受験に失敗した一般学生の受け皿へと姿を変えていった。夜間学部の試験日程が昼間学部より後の場合が多く、志望する大学の昼間学部に合格できなかった志願者が同一年度中に再志願の対象とするケースが多かったためである。

さらに近年の少子化により、上述のような「二部制」とすることで、より多くの学生を収容する必要が無くなったことから、教職員の負担軽減・効率化のため、これを廃止する大学が目立っている。

外国人留学生の受け入れの可否[編集]

夜間学部(夜間課程)は、外国人留学生を受入れられない。これは、「出入国管理及び難民認定法」にもとづく法務省省令に、『専ら夜間通学』する課程に在籍する学生には、留学に必要な『在留資格』の取得・更新を認めない、とする規定による。

その意図するところは、就労目的の外国人労働者が、教員による「在籍管理」の甘い、夜間学部に在籍し、それ以外の時間帯を利用して不法就労するといった事態を防止することにある。従って、大学などの夜間学部(夜間課程)は、法務省令が定める『専ら夜間通学』する教育課程に該当し、外国人留学生を受け入れられないのである。

夜間学部の今後[編集]

先述の通り、勤労学生の減少により夜間学部本来の存在意義が薄れ、役目は終わったという意見が大勢を占める傾向にある。そのため多くの大学で昼夜開講制へ移行したり、夜間学部を廃止・縮小して、需要の高い社会人向けの夜間開講の専門職大学院を強化する方向となっている。

一方で、わずかではあるが、現在も夜間学部を維持し続けることを表明している大学も存在しており、中でも東京理科大学は理系学部で、東洋大学は文系学部で、それぞれ都心キャンパスに設置する全学部において夜間学部を設置する唯一の存在となっている。特に東洋大学は2001年に社会学部第2部社会福祉学科を新たに設置しただけでなく、2009年に板倉キャンパスから白山第2キャンパス移転してきた国際地域学部にも第2部を2010年設置する[3]など、大勢に反して夜間学部の拡大充実を図っている。東洋大学によれば2013年現在で夜間学部の定員数は815で、日本最大の夜間学部定員数となっている[4]

なお、2002年度には103の大学で夜間学部が置かれていたが、2007年度には37大学減少して、国立26、公立5、私立35の計66大学になっている。

脚注・出典[編集]

関連項目[編集]