地溝油

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地溝油(ちこうゆ)とは、中国で社会問題化している再生食用油のこと。工場などの排水溝下水溝に溜まったクリーム状(あるいはスカム状)の油を濾過し、精製した安物の食用油脂。 日本では下水油(げすいあぶら)と紹介されることも多い。 ドブ油(どぶゆ)などとも言われる。

製造、物性など[編集]

製造方法[編集]

マンホールの蓋を開け、下水道内の黒く濁り、赤みを帯びたのり状の物体を掻き出す役割の者がおり、毎日一人当たり桶4杯くらいを収集する。それを一昼夜かけて濾過した後、加熱、沈殿、分離など複数の工程を経て、再生食用油に仕上げる。悪臭を放っていた物質は、これでほとんど無臭になるという。ただし新品の食用油に比較すれば、その色はどす黒く一目で判別できる。武漢工業学院教授の何東平[1]によると、1トンの地溝油にかかる費用は300前後で、販売価格は通常のサラダ油の半額程度という。これらは、メーカー、生産者、生産日の3つがないため、中国では「三無商品(さんむしょうひん)」と呼ばれ、多くの需要がある。

毒性[編集]

「中国青年報」が伝える医学的研究によれば、地溝油に含まれる最も危険な成分は発がん性物質のアフラトキシンであり、その毒性はヒ素の100倍にも及ぶ。劇毒の農薬である「666」と「DDT」も基準値以上が検出されている。

社会問題の概要[編集]

以前から噂はあり、一部の報道により2005年ごろまでにはその存在が知られていたが[1]、中国の全国紙「中国青年報」が2010年3月17日に報じた「围剿地沟油(地溝油を包囲殲滅しよう)[2]」という記事で、その存在が公のものとなった。[3]

現在では、中国国内で人民的関心事に発展している。「中国青年報(2010年3月17日)」による報道以降、2010年5月現在、今も連日繰り返し報道されている。その中には国営テレビ局(CCTV)も含まれており、同局の看板ニュース番組「新聞1+1」でも取り上げられた。[4][5]

地溝油の使用は、重罪であり、最高で死刑まである。

中国で全国食糧と油標準化委員会油料油脂チーム長を務めている湖北省武漢工業大学の何東平教授は、年間200万から300万トンの地溝油が現在レストラン等で利用されていると推測する。中国全土の動物油と植物油の年間使用量が2250万トンであるが、食用植物油の生産量は2000万tに過ぎない。この差が、地溝油であると推測する。全体の1割程度以上の規模であり、10回外食をすると、そのうち1回は地溝油を食している計算になる。「誰もが口にしているはず」と何教授は懸念を示す。 このため、中国人の中には外食をする際にレストランへ手持ちの食用油を持ち込み、使用を依頼する者もいるという。

背景[編集]

こうした危険な油が蔓延する背景には、下水から地溝油の製造に携わる人々の平均月収はエリートサラリーマン並の1万元にもなり、原料の収集から製造工程も含め地溝油で生計を立てている人々が多数存在することなどがある。購入する側も、調理に使って売却すれば自分の口には入らない。禁止や取締りが行われにくいのは、政府の縦割り行政に弊害があると専門家は指摘する。監督省庁がいくつにも分かれており、責任の所在があいまいで、政府の管理がおろそかなためである。

日本での報道[編集]

2006年12月15日付の日経ビジネスオンライン上にて、住友商事総合研究所、中国専任シニアアナリストの北村豊により「え!中国では下水溝から食用油が作られる?」と題するレポートで2006年8月2日に浙江省温嶺市新河鎮塘下村にある豚油加工企業「繁昌油脂廠」が地溝油を製造していた現場に対して、浙江省台州市衛生監督所による立ち入り検査から地溝油の押収までの様子が紹介された。台州市衛生監督所の調査によると、繁昌油脂廠は「下水溝に溜まった油を原料として食用ラードを生産している」という通報を受け、調査を始めたところラードの包装缶にマークが入っていないことを発見し、関連規則違反として生産の一時停止命令を出したが、昼間は生産停止を装い夜間に操業をおこない、監督部門の退勤後、早朝まで操業していた。このため執行官らは繁昌油脂廠の監視と製品の追跡という両面作戦から販売店を割り出し、繁昌油脂廠の製品20数缶を発見し、サンプルを台州市疾病予防センターに分析を依頼し、食用ラードの油の酸化の指標である酸価値が国家基準(1.5mg)の11倍にあたる、1g当たり17mgを超えていることを突き止めた。また他の販売店から採取したサンプルからは、劇毒の農薬である「666」と「DDT」が、1kg当たり0.027~0.088mg検出された。

2010年3月30日テレビ朝日スーパーモーニング」の若一光司の「世界びっくりニュースウオッチ」というコーナーで、地溝油の特集が組まれた。内容は「中国青年報」の記事をベースにしたものだったが、名称は地溝油ではなく、下水油と紹介された。若一光司が地溝油の説明を一通り終えたあと、番組レギュラーの鳥越俊太郎が「僕はよく中国に行くけど、ということは、僕も地溝油を食べた可能性があるということ?」と語り、それに対し若一光司は「私も中国に何度も行っていますが、鳥越さんも私も間違いなく下水油を摂取していると思いますよ」と答えた。

2010年5月3日、テレビ朝日「ビートたけしのTVタックル」で食用下水油という名称で紹介された[6]富裕層外食時に自分で油を持ち込む事もあるという。番組では、日本に輸入されている中国製加工食品に関しても言及された。ジャーナリストの有本香は「今現在、日本に入ってきている(中国産)加工食品が、100%安全とは言い切れない。副材料になっているようなものまで把握しきれない」と発言した。東アジア評論家を名乗る元中国国営テレビ局(CCTVアナウンサー張景子は「(下水油の件は)これは本当です。中国の人はほとんどみんな知っていることです。屋台がとくに危ないのですが、おいしいので私はついつい食べてしまいます」と語った。味で区別はできず、一般的な基準検査してもわからない、低コストで暴利が得られるという。危険を承知で食べる理由を問われ、「タバコがやめられないのと同じでは」と答えた。張景子はこの後、自らのブログ上で、1960年代の日本でも作られたが、規制が厳しく台湾に密輸出されたとしている。[7]。 日本人出演者からは「ある意味究極のエコ食品」と諷され、政治評論家三宅久之は、人口抑制策などと皮肉った。

燃料としての使用[編集]

KLMオランダ航空がバイオ燃料の材料として導入を進めている。2012年7月中旬に上海から2000トンが出荷され、今後は中国各地から年間12万トンが供給される予定と報じられている [2]

地溝油問題を扱った作品[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]