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冨田酒造

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
冨田酒造有限会社
Tomita Shuzo Inc.
北国街道よりのぞむ主屋
種類 特例有限会社
本社所在地 日本の旗 日本
529-0425
滋賀県長浜市木之本町木之本1107
設立 1534年
業種 食料品
法人番号 7160002007310
事業内容 清酒製造
代表者 代表取締役社長 冨田泰伸
従業員数 13名
関係する人物 冨田光彦(経済学者、14代目当主)
外部リンク http://www.7yari.co.jp
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冨田酒造有限会社(とみたしゅぞう)は、滋賀県長浜市木之本町にある酒造メーカー。創業は天文3年(1534年)であり[1]、現存する日本の酒造会社としては5番目に古い[2]。仕込水には蔵の井戸から湧き出る奥伊吹山伏流水(中軟水)を用いている。

地理

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琵琶湖の最北端、賤ヶ岳の近く、北国街道北国脇往還が交わる宿場町「木之本宿」に所在する。木之本宿は牛馬市がたったほど宿場町としては大きく、参勤交代を始め多くの人々が行き交い七本鎗を飲んだことと思われる。酒蔵の近くには木之本地蔵院があり、門前町としても栄えていた。

沿革

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冨田家は近江国守護職京極家に仕える武家であったが、戦国時代に京極家が没落すると当地に帰農し、醸造業を生業としながら庄屋などの村役人を代々歴任した[3]明治維新後は11代目冨田忠利により、学校の開設や伊香相救社の運営、融通会社(後の江北銀行)の創設に尽力している。12代目冨田八郎はさらに事業を発展させるとともに、伊香郡木之本町長や伊香郡長、衆議院議員としても活躍した[4]。『近江伊香郡志』を刊行した冨田八右衛門が13代目、経済学者で滋賀大学名誉教授江北図書館名誉館長の冨田光彦は14代目である。

滋賀の他の酒蔵にもみられたように、能登杜氏を招いての酒造りを行っており、五百万石など他県産の酒米を使用した造りであった[5]。しかし、現当主になってからは杜氏招へいをせず、地酒の「地」の部分に重きを置く方針へと変更している。これにより、酒米も地元長浜市の篤農家が育てる地元産の酒米を使用し、酒米銘柄も滋賀県で生まれた玉栄滋賀渡船吟吹雪を用いた酒造りに力を入れている。また、ビンテージの概念を日本酒に取り入れた熟成酒や、無農薬米を使った酒造り、伝統的な製法である生酛造り、木桶による造りにも取り組んでいる[6]

年表

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  • 1534年(天文3年)- 創業
  • 1913年(大正2年)~1914年(大正2年)頃 - 福田大観と名乗っていた若き北大路魯山人が、長浜をはじめ湖北地域に逗留。その際、12代目当主冨田八郎と交流があった縁から「七本鎗」「酒猶兵」の作品を蔵に残している[7]。尚、「酒猶兵」とは「酒はあたかも兵と同じである。一日として手元に備えておかないわけにはいかない。」の意[8]
  • 2001年(平成13年) - 地元篤農家と酒米の契約栽培を開始[9]
  • 2005年(平成17年) - 日本酒の国外輸出を開始[10]
  • 2007年(平成19年) - 滋賀県立長浜農業高校の生徒が育てた酒米で造る「長農高育ち」の共同生産を開始[11]
  • 2010年(平成22年) - 完全無農薬による酒造りを開始(七本鎗無農薬純米 無有)[12]

建築物

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主屋

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2019年(令和元年)9月10日には冨田酒造主屋が国の登録有形文化財に登録された[13]。なお、2021年(令和3年)2月26日には同じく木之本町にある山路酒造主屋も登録有形文化財に登録された[14]。長浜市は木之本町の重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)選定を目指している[15]

主屋が建築されたのは延享元年(1744年)。切妻造桟瓦葺二階建。大屋根前面を二段に重ねて南を落棟とし、北側に平屋棟がつづいている。落棟を含む南の広い土間沿いに3室を並べ、平屋棟に座敷等4室を配する。輻輳する屋根が街道景観を豊かにしている大型町家である。

銘柄

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主屋の内部
銘柄「七本槍」
北大路魯山人による銘柄「七本槍」のロゴ

主要銘柄は「七本鎗」であり、「賤ヶ岳の七本槍」に由来している。本能寺の変の翌年である天正11年(1583年)、織田信長の跡目をめぐって羽柴秀吉柴田勝家が戦った賤ヶ岳の戦いで、7人の若武者が勇猛果敢な働きによって秀吉を勝利へと導いた。「賤ヶ岳の七本槍」とは、この際の加藤清正福島正則片桐且元加藤嘉明脇坂安治平野長泰糟屋武則を指している。

鎗の字は木偏の「槍」ではなく、金偏の「鎗」である。魯山人が残した七本槍の篆刻の文字が金偏の「鎗」を用いていたことに由来する。金偏の「鎗」には”酒をいれる器”の意があることから、あえて金偏の「鎗」を用いたと推測される。

定番酒
  • 七本鎗
    • 純米大吟醸 玉栄
    • 純米大吟醸 渡船
    • 純米 77%精米 渡船
    • 純米 低精白80%精米 火入れ
    • 純米 14度原酒
    • 互楽(ごらく)
    • 上撰
限定酒
  • 七本鎗
    • 生酛 木桶仕込 生原酒
    • 木ノ環(きのわ) 木桶仕込 生原酒
    • 無農薬純米 無有(むう) 生もと木桶
    • 無農薬純米 無有 火入れ
    • 純米吟醸 玉栄60% 蔵付酵母
    • 純米吟醸 吟吹雪 無濾過生原酒
    • 純米 活性にごり
    • 純米 搾りたて生原酒 玉栄
    • 純米 搾りたて生原酒 吟吹雪
    • 純米 14号酵母 玉栄 火入れ
    • 純米渡船 77%精米 無濾過生原酒
    • awaibuki スパークリング日本酒
熟成酒
  • 七本鎗
    • 山廃純米 琥刻(ここく)2010年~
    • 無農薬純米 無有 熟成 2015
    • 純米シェリー樽熟成

受賞歴

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Kura Master
  • 2020年 - 純米酒部門 金賞 - 七本鎗 純米 無有
  • 2018年 - 純米酒部門 最高賞「プラチナ賞」 - 七本鎗 純米渡船 77%精米
  • 2018年 - 純米酒部門 審査員賞[16]
  • 2017年 - 純米酒部門 金賞 - 七本鎗 純米原酒14度

アクセス

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鉄道
自動車

脚注

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  1. ^ 湖北エリア | 滋賀の酒”. 2021年4月8日閲覧。
  2. ^ 18世紀までに創業して現在も醸造を継続する清酒・焼酎蔵元296社の創業年順リスト”. きた産業株式会社. 2021年4月8日閲覧。
  3. ^ 木之本宿: 冨田家住宅”. 2021年4月9日閲覧。
  4. ^ 歴史に残る人や文化財 冨田八郎(1876~1947)”. 長浜市教育センター. 2021年4月9日閲覧。
  5. ^ 冨田酒造15代目の挑戦”. 冨田酒造有限会社. 2021年4月9日閲覧。
  6. ^ “「最後の職人」の木おけ導入 木之本の老舗・冨田酒造”. 中日新聞社. (2021年3月13日). https://www.chunichi.co.jp/article/217105 2021年4月13日閲覧。 
  7. ^ 魯山人が愛した七本鎗”. 冨田酒造有限会社. 2021年4月9日閲覧。
  8. ^ 七本鎗のこと”. 冨田酒造有限会社. 2021年4月9日閲覧。
  9. ^ 篤農家とのタッグ”. 冨田酒造有限会社. 2021年4月9日閲覧。
  10. ^ 七本鎗、海を渡る”. 冨田酒造有限会社. 2021年4月9日閲覧。
  11. ^ 湖北の地酒「長農高育ち」”. 滋賀夕刊新聞社. 2021年4月9日閲覧。
  12. ^ 無農薬米”. 冨田酒造有限会社. 2021年4月9日閲覧。
  13. ^ 冨田酒造主屋 国指定文化財等データベース”. 文化庁. 2021年4月9日閲覧。
  14. ^ 山路酒造主屋 国指定文化財等データベース”. 文化庁. 2021年7月22日閲覧。
  15. ^ 長浜・木之本宿、登録文化財続々 新たに2件答申”. 朝日新聞 (2020=11-21). 2021年7月22日閲覧。
  16. ^ 審査員賞とは、プラチナ賞受賞酒の中から「純米大吟醸・純米・にごり」各部門より厳選された日本酒に贈られる賞。

参考文献

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  • 山同敦子『日本酒ドラマチック 進化と熱狂の時代』講談社、2016年5月26日。ISBN 978-4062199322 

関連項目

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外部リンク

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