コンテンツにスキップ

五フッ化アンチモン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
五フッ化アンチモン
物質名
識別情報
3D model (JSmol)
ChemSpider
ECHA InfoCard 100.029.110 ウィキデータを編集
EC番号
  • 232-021-8
RTECS number
  • CC5800000
UNII
国連/北米番号 1732
性質
SbF5
モル質量 216.74 g/mol
外観 無色の油状の液体
吸湿性
匂い 刺激臭
密度 2.99 g/cm3 [1]
融点 8.3 °C (46.9 °F; 281.4 K)
沸点 149.5 °C (301.1 °F; 422.6 K)
水と反応する
溶解度 フッ化カリウムと液体二酸化硫黄に溶ける
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性
極めて有毒、腐食性、健康に有害。水や生体組織と接触するとフッ化水素酸を放出する。強力な酸化剤。
GHS表示:
急性毒性(高毒性)腐食性物質急性毒性(低毒性)水生環境への有害性支燃性・酸化性物質経口・吸飲による有害性
Danger
H300+H310+H330, H314, H411, H412
P260, P261, P264, P270, P271, P273, P280, P301+P312, P301+P330+P331, P303+P361+P353, P304+P312, P304+P340, P305+P351+P338, P310, P312, P321, P330, P363, P391, P405, P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
引火点 不燃性
致死量または濃度 (LD, LC)
270 mg/kg (マウス, 皮下)
270 mg/m3 または 30 ppm (マウス, 吸入)
LCLo (最低致死濃度)
15 mg/m3 または 1.69 ppm (ラット, 吸入, 2時間)
NIOSH(米国の健康曝露限度):
TWA 0.5 mg/m3 または 0.05 ppm (as Sb)[2]
TWA 0.5 mg/m3 または 0.05 ppm (as Sb)[2]
50 mg/m3 (5 ppm)
安全データシート (SDS) ICSC 0220
関連する物質
その他の
陰イオン
五塩化アンチモン
その他の
陽イオン
五フッ化リン
五フッ化ヒ素
五フッ化ビスマス
関連物質 三フッ化アンチモン
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
☒N verify (what is  ☒N ?)

五フッ化アンチモン(ごフッかアンチモン、英語: Antimony pentafluoride)は、アンチモンフッ化物化学式は SbF5分子量 216.8、融点 8.3 ℃、沸点 141 ℃。 無色透明の油状の液体で、吸湿性が強い。強力なルイス酸であり、超酸であるヘキサフルオロアンチモン酸は五フッ化アンチモンとフッ化水素酸の様々な比の混合物であり、フルオロスルホン酸との 1:1 の混合物はマジック酸と呼ばれる。強力なルイス酸性により、ほぼ全ての既知の化合物と反応する[4]

合成

[編集]

五フッ化アンチモンは、五塩化アンチモンと無水フッ化水素の反応によって合成される[5]

また、三フッ化アンチモンフッ素の反応からも得られる[6]

構造

[編集]

気体では、SbF5点群対称性D3h三方両錐形構造(図参照)をとり、液体、固体ではさらに複雑な構造をとる。液体では、それぞれのSbが八面体構造をとるポリマー構造が含まれ、[SbF4(μ-F)2]n((μ-F)はフッ素中心が二つのアンチモン中心を架橋していることを示す)で表される。結晶は四量体となり、[SbF4(μ-F)]4で表される。Sb-F結合は、Sb4F4環内で結合長2.02 Åであり、四つのアンチモン中心から放射状に結合する残りのフッ素配位子の結合位置は1.82 Åとそれよりも短い[7]。関連した化合物である五フッ化リン五フッ化ヒ素は、固体と液体ではモノマーであるが、これは中心原子が小さく配位数が制限されるためだとされている。なお五フッ化ビスマスはポリマーである[8]

反応

[編集]

五フッ化アンチモンは、強力な酸化剤であり、リンは五フッ化アンチモンと接触することで燃焼する。と激しく反応してフッ化水素を生じ、ガラスなどを容易に腐食する。炭化水素などもイオン化する。

また、他の酸素に接近して電子を強く引き込み、酸性度を強める効果を持つ。

2 SbF5 + F2 + 2 O2 → 2 [O2]+[SbF6]

初めて発見されたフッ素化合物からフッ素を得る化学反応にも用いられた。

4 SbF
5
+ 2 K
2
MnF
6
→ 4 KSbF
6
+ 2 MnF
3
+ F
2

この反応は、SbF5のF
への高い親和力のために起こり、この特性はSbF5が超酸の生成に用いられる所以でもある。

ヘキサフルオロアンチモン酸塩

[編集]

SbF5は強力なルイス酸であり、特にFの供給源に対して極めて強く作用し、極めて安定なヘキサフルオロビスマス酸イオン[SbF6]を生成する。超酸のヘキサフルオロアンチモン酸の共役塩基である。[SbF6]ヘキサフルオロリン酸塩PF6に似た非配位性アニオンであり、弱塩基であるが、SbF5と反応し中心対称的な付加物を生成する。

SbF5 + [SbF6] → [Sb2F11]

[Sb2F11]は、HFとSbF5の混合物(ヘキサフルオロアンチモン酸)中に見られるイオンの一つである。

安全性

[編集]

SbF5は皮膚および眼に対して高い腐食性を示す。極めて有毒であり、健康に有害である。半数致死量は270 mg/kg(マウス、皮下)、最小致死濃度は15 mg/m3または1.69 ppm(ラット、吸入、2時間)と報告されている。NIOSH(アメリカ合衆国国立労働安全衛生研究所)が設定した職業曝露限界値は50 mg/m3または5 ppmであり、この濃度では生命と健康に直ちに危険を及ぼす[注 1]とされる。それ以外にも、SbF5は水や他の化合物と激しく反応し、危険なフッ化水素を生成しうるほか、強力な酸化剤でもある[9][10]

出典

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ Immediately dangerous to life or health(IDLH)と呼ばれる。

出典

[編集]
  1. ^ Lide, David R., ed (2006). CRC Handbook of Chemistry and Physics (87th ed.). Boca Raton, FL: CRC Press. ISBN 0-8493-0487-3 
  2. ^ a b NIOSH Pocket Guide to Chemical Hazards 0036
  3. ^ World of Chemicals SDS
  4. ^ Olah, G. A.; Prakash, G. K. S.; Wang, Q.; Li, X.-y."Antimony(V) Fluoride" in Encyclopedia of Reagents for Organic Synthesis (Ed: L. Paquette) 2004, J. Wiley & Sons, New York. doi:10.1002/047084289X.
  5. ^ Sabina C. Grund, Kunibert Hanusch, Hans J. Breunig, Hans Uwe Wolf "Antimony and Antimony Compounds" in Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry 2006, Wiley-VCH, Weinheim doi: 10.1002/14356007.a03_055.pub2
  6. ^ Handbook of Preparative Inorganic Chemistry, 2nd Ed. Edited by G. Brauer, Academic Press, 1963, NY. Vol. 1. p. 200.
  7. ^ Edwards, A. J.; Taylor, P. "Crystal structure of Antimony Pentafluoride" Journal of the Chemical Society, Chemical Communications 1971, pp. 1376-7.doi:10.1039/C29710001376
  8. ^ Holleman, A. F.; Wiberg, E. "Inorganic Chemistry" Academic Press: San Diego, 2001. ISBN 0-12-352651-5.
  9. ^ International Programme on Chemical Safety (2005年). “Antimony pentafluoride”. Commission of the European Communities (CEC). 2010年5月10日閲覧。
  10. ^ Barbalace, Kenneth (2006年). “Chemical Database - Antimony Pentafluoride”. Environmental Chemistry. 2010年5月10日閲覧。

外部リンク

[編集]