ヴァイオリン協奏曲第7番 (モーツァルト)

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ヴァイオリン協奏曲第7番 ニ長調 K. 271a (271i) は、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト1777年に作曲したとされているヴァイオリン協奏曲であり、現在では新モーツァルト全集において疑作扱いされている楽曲である。『コルプ』(Kolb)の愛称で呼ばれることもある。

概要[編集]

自筆譜は(もし存在したとすれば)現在紛失している。現在残されているのは、フランスのヴァイオリニスト、ウジェーヌ・ソゼーフランス語版が師で義父であるピエール・バイヨのために作成したパート譜パリ国立図書館所蔵)と、ドイツの楽譜コレクター、アロイス・フックスドイツ語版が作成した総譜ベルリン州立図書館所蔵)である[1]1907年に、フックス版に基づいて初めて出版された。

ソゼーの筆写譜には「アブネック氏所有の自筆譜に基づき1837年にソゼーが筆写した」、とバイヨにより書かれており、自筆譜には「1777年7月16日ザルツブルクで作曲した」というイタリア語での書き込みがあったという。しかし、2つの筆写譜には異同があり(特に終楽章の終結部においてフックス版の方が長い)、ソロパートの重音技法管弦楽法(特に第2楽章のピッツィカート)、各楽章の形式など、当時のモーツァルトの様式にそぐわない点が出版直後から指摘され、現在では、モーツァルト作ではないか、少なくとも他人による加筆があることは間違いないとされる。モーツァルト作品の真贋鑑定の権威だったフックスも、「ザルツブルクにて自筆譜で発見されるであろうか? とりわけ真性はこれから明らかになるであろう」と判断を保留している[1](フックスが元にした楽譜は現在も不明)。

野口秀夫は、本曲の主題の他のモーツァルト作品との類似点を指摘しつつ、モーツァルト作曲のオリジナル版を19世紀のヴァイオリン奏法に精通した人が勝手に編曲した版である、と推測している[1]

現在では第6番英語版と共に演奏・録音の機会がほとんどない曲であるが、かつては疑いを持たれることもなく演奏されていたため、ユーディ・メニューインジャン=ジャック・カントロフヨゼフ・スークらの録音で耳にすることができる。これらは主にフックス版を用いている(カントロフのみソゼー版を使用)。

編成[編集]

独奏ヴァイオリン、オーボエ2、ホルン2、弦五部。

構成[編集]

全3楽章、演奏時間は約26分。

脚注[編集]

  1. ^ a b c ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 K.271a (271i) の真正性について―ロンドのエピローグから分かること、野口秀夫、神戸モーツァルト研究会

外部リンク[編集]

演奏[編集]

ユーディ・メニューイン独奏、ジョルジェ・エネスク指揮、パリ交響楽団1932年6月録音)。カデンツァ:ジェルジェ・エネスク