ワイソフのゲーム

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ワイソフのゲームをチェス盤で表した図。クイーンの位置が青丸だと、後手が最善手を行えば必ず勝つ。

ワイソフのゲーム: Wythoff's game)は2人用のゲームで、2つの山からコイン(または石など)を好きな数だけ交互に取り合っていき、最後に取った者を勝者とする。ただし、1回での取り出し方は、片方の山からまたは、両方の山から同数ずつとする。

このゲームは、チェスにおけるクイーンによっても同等な説明ができる。碁盤上にあるクイーンを、各プレイヤーが碁盤上の南、西、南西のどれかの向きに好きな歩数だけ移動させていったとき、クイーンを左下隅に移動させた者を勝者とする、というものである。クイーンがあるマスのx座標、y座標は2山にあるコインの数に対応する。

マーティン・ガードナー1977年3月に、科学雑誌サイエンティフィック・アメリカン』での「数学ゲーム コラム」の中で、このゲームは中国で捡石子(jiǎn shízǐ(チャヌシッチ)、石取りの意)の名前でプレイされていたと主張している。

オランダ数学者であるウィレム・アブラハム・ワイソフ1907年にこのゲームの数学的分析を発表した[1]。最善手を行うならば、どちらが勝つかは最初の個数の組で決まる(後述)。歴史的には、ニムに次いで2番目に(必勝法が数学的に)解決したゲームである[2]

必勝形の原理[編集]

ワイソフのゲームの必勝形。一番左下の四角は位置 (1, 1) で、赤い四角は後手必勝形である。

後手必勝形のリストは、以下のようにして帰納的に見出せる。

後手必勝形、後手必敗形を表記の簡略化のためそれぞれ〇, ×で表す。

2山のコインの数を (x, y) (xy) とする。各点は〇, ×のどちらかである。

(0, 0) は〇である。

(x, y) ≠ (0, 0) が〇であるとは、任意の自然数 a に対して (xa, y), (x, ya), (xa, ya) が×であることである。(x, y) ≠ (0, 0) が×であるとは、ある自然数 a を取ると (xa, y), (x, ya), (xa, ya) のどれかは〇であることである。

故に、(0, 0) は〇より、x = 0 または y = 0 または yx = 0 は×である。

残りは (x, y ≠ 0), yx > 0 で、この中で x, y, yx がいずれも最小である (1, 2) は〇である。

(1, 2) は〇より、残りの内 x, y = 1, 2 または yx = 1 は×である。

残りは加えて (x, y ≠ 1, 2), yx ≥ 2 で、この中で x, y, yx がいずれも最小である (3, 5) は〇である。

(3, 5) は〇より、残りの内 x, y = 3, 5 または yx = 2 は×である。

残りは加えて (x, y ≠ 3, 5), yx ≥ 3 で、この中で x, y, yx がいずれも最小である (4, 7) は〇である。

これを繰り返すと、〇である (x, y) は次の表のようになる:

ワイソフのゲームの後手必勝形 (xy)
n 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
x 0 1 3 4 6 8 9 11 12 14 16 17 19 21 22 24 25 27 29 30 32
y 0 2 5 7 10 13 15 18 20 23 26 28 31 34 36 39 41 44 47 49 52
x の列はオンライン整数列大辞典の数列 A066096を参照)
y の列はオンライン整数列大辞典の数列 A090909を参照)
(x, y) を1列にしたものはオンライン整数列大辞典の数列 A072061を参照)

必勝形の床関数表示[編集]

ワイソフのゲームの後手必勝形は次のように表される:

  • n は 0 以上の整数、φ黄金比

ここで ⌊ ⌋ は床関数を表す。

これは、レイリーの定理

  • φ2φ = 1

より従う。

必勝形のゼッケンドルフ表現[編集]

ワイソフのゲームの (0, 0) 以外の後手必勝形は、次のようにゼッケンドルフ表現することができる。Fnn番目のフィボナッチ数とする。

〇である (x, y) ≠ (0, 0) (xy) は、yx のゼッケンドルフ表現を

n1 < n2 < … < nk はどの2つも連続しない正整数)

とすると、

となる。

脚注[編集]

  1. ^ Wythoff, W. A. (1907), “A modification of the game of nim”, Nieuw Archief voor Wiskunde 7 (2): 199-202, https://archive.org/details/nieuwarchiefvoo02genogoog/page/n219/mode/2up 
  2. ^ Richard J. Nowakowski (Dalhousie University) The History of Combinatorial Game Theory - ウェイバックマシン(2012年1月18日アーカイブ分) 2009年1月24日。p.4

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  • Weisstein, Eric W. "Wythoff's Game". mathworld.wolfram.com (英語).