ニム
ニム (英: Nim) は、2人で行うレクリエーション数学ゲーム(組合せゲーム)の一つである。起源は古代中国からあるとされ、16世紀初めの西欧で基本ルールが完成したが、名前については、一般的に1901年にハーバード大学のチャールズ・L・バウトンによって名付けられたとされる。
歴史的には、最初に必勝法が数学的に解決したゲームである[1]。最善手を行うならば、どちらが勝つかは最初の個数の組で決まる(後述)。その必勝法と証明は組合せ論による。
ゲームのルール[編集]
有限個のコイン(石や豆でもよい)の山を有限個用意する。2人のプレイヤーが山からコインを好きな数ずつ交互に取り合っていく。
- 一度に取るコインは1つの山からとする。
- 回ごとに最低1個は取らなければいけないとする。
これを繰り返すと最後は全てのコインがなくなるが、ゲームの目的は、最後のコインを取ることである(正規形)。コイン(複数でもよい)を最後に取ったプレイヤーを勝者とする。
必勝法[編集]
山が2つの場合[編集]
特に山が2個の場合は、一般の場合よりも必勝法が簡単である。
山A, Bのコインの個数をそれぞれ a, b とする。このときの必勝法を考える。まず a ≠ b のときを考える。先手は、AとBの山のコインの数が同じになるように、コインが多い方の山からコインを取る。以後同様に、先手は自分の回では、後手の取るのを真似ればよい。つまり、後手が片方の山から c個コインを取ったとしたら、先手は他方の山から、同じ数の c個だけコインを取ればよい。これが先手の必勝法である。
a = b のときは、先手の取るのを真似ることで後手が必ず勝つ。
一般の場合[編集]
コインの山の数を n とし、各山のコインの枚数を A1, …, An とする。
とおき、 ならば先手必勝、 ならば後手必勝にできる。 はビットごとの排他的論理和である。
ビットごとの排他的論理和が 0 になるようにコインを取る戦略が必勝法である。
証明[編集]
先手がコインを取り除いた後の各山のコインの枚数を B1, …, Bn とし、 とする。コインが k番目の山から取り除かれるとき、 である。排他的論理和は結合法則と交換法則および を満たすため、次の等式が成り立つ。
次の2つの補題から従う。
補題1: のとき、任意の操作について である。
証明: であることから明らかである。
補題2: のとき、ある操作について である。
証明: の 0 でないビットのうち最高位の位置を d番目とする。Ak の d番目のビットが 0 でない k を1つ選ぶ(このような k は必ず存在する)。 であるため、k番目の山から何枚かのコインを取り除いて 枚にすることができる。このとき となる。
逆形[編集]
最後にコインを取った者を負けとするルールは「逆形」[2]「逆型」「双対ゲーム」などと呼ばれている。一般に、組合せゲームの正規形と逆形では、プレイヤーが逆のことに最善を尽くすため、正規形の後手必勝形が逆形の後手必敗形とはなっていない。
実際に逆形ニムにおいては、必勝形、必勝法は次の通りである[3]:
n個の山の内、コインが2個以上であるものの個数を i とする。
i = 0 である後手必勝形は
- 1個だけの山が奇数個のみ。… (1)
である。
i = 1 のときは、
- 1個だけの山が奇数個なら、2個以上の山を空にすることで必勝形にできる。
- 1個だけの山が偶数個なら、2個以上の山を1個にすることで必勝形にできる。
故に i = 1 のときは必敗形である。
i ≥ 2 のときは、プレイヤーがニム和を 0 にし続ければ、相手は i = 1 にせざるを得なくなる。
(なぜなら、 i = 1 のときのニム和は 0 でないから。)
故に、必勝形 (A1, …, An) は
に限られる。//
脚注[編集]
- ^ Richard J. Nowakowski (Dalhousie University) The History of Combinatorial Game Theory - ウェイバックマシン(2012年1月18日アーカイブ分) 2009年1月24日。p.4
- ^ [組み合わせゲーム理論] 組み合わせゲームとゲーム木について | DevelopersIO(クラスメソッド株式会社)2018.03.23
- ^ 石取りゲーム(Nim) [いかたこのたこつぼ]
関連項目[編集]
- 不偏ゲーム
- ニム和
- 映画『去年マリエンバートで』 - 作中でニムが重要な役割を担う