ヤマホトトギス
ヤマホトトギス | |||||||||||||||||||||
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分類(APG IV) | |||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||
Tricyrtis macropoda Miq. (1867)[1] | |||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||
ヤマホトトギス(山杜鵑草)[2] |
ヤマホトトギス(山杜鵑草、学名:Tricyrtis macropoda)はユリ科ホトトギス属の多年草[2][3][4][5][6]。
特徴
[編集]地下茎は垂直に地中に伸び、節からは細い根を出し、ときに横に走出枝を出す。茎は立ち上がり、高さは30-70cm、ときに1mに達し、斜め下向きの毛が生える。葉は互生し、葉身は長楕円形または楕円形で、長さ8-15cmになり、先端は短くとがる。下部の葉は両面ともに無毛で、表面に油滴状の濃い斑点がはっきりと現れ、基部は茎を抱かない。中部以上につく葉は、ふつう表面に毛があり、裏面には綿毛が密に生え、基部は茎を抱く[2][3][4][5][6]。
花期は7-9月。茎先および上部の葉腋に散房花序を出し、花を上向きにつける。花序には腺毛が密に生える。花は漏斗状鐘形、花被片は6個で、長さ15-20mm、白色地に紫色の斑点があり、ときに下部に黄色の斑点が出ることがある。3個の内花被片と3個の外花被片があり、内片は披針形で狭く、外片は広倒披針形で内片より幅が広く、6片ともに強く反り返る。外片の外面に腺毛が生え、基部に袋状のふくらみがあり、ふくらみの中央に溝があって2つに分かれる。雄蕊は6個で、花糸は互いに寄り添って束状に立ち、毛状突起と紫色の斑点があり、上部で反り返って先端につく葯は淡黄色で外向きつける。花柱の先は3つに分かれて球状突起があり、各枝の先はさらに2裂する。花柱と分枝に紫色の斑点がある。果実は披針形の蒴果で3稜があり、長さ約30mmになり、熟すと胞間裂開する。種子は楕円形で扁平。染色体数は2n=26[2][3][4][5][6]。
葉や茎に毛があるものが普通であるが、それがないものや、花被片や花柱に紫色の斑点がほとんどないものなど、かなりの変異がある[4][5]。
分布と生育環境
[編集]日本では、北海道南西部、本州(岩手県以南)、四国、九州に分布し、山地の林下に生育する。世界では、朝鮮半島に分布する[5]。
名前の由来
[編集]和名ヤマホトトギスは、「山杜鵑草」の意で、山地に生えるホトトギスの意味[6]。
種小名(種形容語)macropoda は、「長柄の」「太い軸の」の意味[7]。
分類
[編集]同属のヤマジノホトトギス Tricyrtis affinis に似る。同種はヤマホトトギスの変種 Tricyrtis macropoda Miq. subsp. affinis (Makino) Kitam. (1966)[8]とされていたこともある[4]。
ヤマジノホトトギスは茎先と葉腋に1-2個の花をつけるが、本種は茎先と上部の葉腋に散房花序をつける。また、同種は、花被片が平開して反り返らなく、花糸に紫色の斑点がないが、本種の花被片は強く反り返り、花糸に紫色の斑点がある[2][3][4][5][6]。
ギャラリー
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花被片に紫色の斑点があり、強く反り返る。花糸にも紫色の斑点がある。
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葉は互生し、葉身は楕円形で、先端は短くとがる。下部の葉の表面に油滴状の濃い斑点がはっきりと現れる。
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果実は披針形の蒴果で3稜がある。
下位分類
[編集]- ムテンヤマホトトギス Tricyrtis macropoda Miq. f. epunctata Akasawa (1970)[9] - 別名、イヨホトトギス。タイプ標本の採集地は、高知県高岡郡津野町の天狗高原[9]。品種名 epunctata は、e-punctata で、「斑点のない」「細点のない」の意味[10]。
- ムカゴホトトギス Tricyrtis macropoda Miq. var. bulbifera Y.Inoue, Nakamasu et Setoguchi (2020)[11] - 2020年記載発表の新変種。京都大学大学院人間・環境学研究科・総合人間学部の瀬戸口浩彰教授らによって発表された。開花期の後半に葉腋にむかごが生じる。タイプ標本の採集地は、佐賀県唐津市の天山。分布地は、九州北部で、長崎県、佐賀県および福岡県の脊振山地の周辺[12]。変種名 bulbifera は、「鱗茎のある」の意味[13]。
脚注
[編集]- ^ [1] 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b c d e 山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.80
- ^ a b c d 佐竹義輔 (1982)「ユリ科」『日本の野生植物 草本I 単子葉類』pp.24-25
- ^ a b c d e f 『原色日本植物図鑑・草本編III』p.147
- ^ a b c d e f 髙橋弘 (2015)「ユリ科ホトトギス属」『改訂新版 日本の野生植物 1』p.176
- ^ a b c d e 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.228
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1501
- ^ ヤマジノホトトギス(シノニム) 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ a b ムテンヤマホトトギス 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1491, p.1509
- ^ ムカゴホトトギス 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
- ^ Riku Nakamasu, Yasuhiko Inoue, Shota Sakaguchi and Hiroaki Setoguchi, A New Bulbil-Producing Variety, Tricyrtis macropoda var. bulbifera (Liliaceae) from Northwestern Kyushu Island, Japan, Acta Phytotax. Geobot. Vol.71, Issue 2, p.171–175 (2020)
- ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1486
参考文献
[編集]- 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本I 単子葉類』、1982年、平凡社
- 北村四郎・村田源・小山鐡夫共著『原色日本植物図鑑・草本編III』、1984年改訂、保育社
- 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
- 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』2015年、平凡社
- 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
- 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
- Riku Nakamasu, Yasuhiko Inoue, Shota Sakaguchi and Hiroaki Setoguchi, A New Bulbil-Producing Variety, Tricyrtis macropoda var. bulbifera (Liliaceae) from Northwestern Kyushu Island, Japan, Acta Phytotax. Geobot. Vol.71, Issue 2, p.171–175 (2020)
外部リンク
[編集]- 日本産ホトトギス、国立科学博物館
- 「ムカゴホトトギス」進化の変種だった!佐賀市の井上さん35年前発見、佐賀新聞Live - 2021年11月26日閲覧
- ムカゴホトトギス、4. 本会役員井上康彦さんの記事が新聞に掲載されました!、佐賀植物友の会 - 2021年11月26日閲覧