モトクロス・オブ・ネイションズ
モトクロス・オブ・ネイションズ(Motocross of Nations,"MXoN")は、FIMが主催するモトクロスの国別対抗戦。毎年秋開催。モトクロスのワールドカップと称される。
フランス語で『モトクロス・デ・ナシオン(Motocross des Nation)』と呼ぶ場合もある。
2008年から2010年までレッドブルが[1]、2011年から現在までモンスターエナジーがタイトルスポンサーとなっている。
ルール
[編集]現在
[編集]2023年時点の規則による[2]。規則の多くはモトクロス世界選手権(MXGP)及びそのサポート選手権と共通している。
MX1、MX2、オープンの3クラスがあり、それぞれ一人ずつの国の代表選手で競う。バイクのブランドは同国内の各ライダーで異なっても良い。各クラスの参加条件は以下の通り。
- MXGP- 排気量175cc~250ccの2ストローク、または290cc~450ccの4ストローク。16~50歳が参戦可能。
- MX2 - 排気量100cc~125ccの2ストローク、または175cc~250ccの4ストローク。15~50歳が参戦可能。
- オープン - MXGPまたはMX2車両が使えるが、年齢下限はバイクの年齢制限の下限に従う。上限は50歳まで。
各クラス20分+2周の予選レースが行われ、各国内の上位2クラスの順位をポイントとして計算し、合計ポイント数の少ない順に上位19カ国が予選通過となる。20~31位の国では「Bファイナル」、32~44位のチームで「Cファイナル」がそれぞれ行われるが、45位以下はこの時点で敗退終了となる。
Cファイナルが最初に行われ、優勝者のみがBファイナルへ進める。次に行われるBファイナルでも優勝者のみが予選通過となり、トロフィーを争うことができる。
決勝は2クラスの混走のレース1(MXGP/MX2)、レース2(MX2/オープン)、レース3(MXGP/オープン)で、各レース30分+2周で行われる。つまり各ライダー2レースずつ、延べ6レースを戦うことになる。
各国内で順位の数字をそのままポイントとして計算し、6レース中上位5レース分のポイントを合算。その合計ポイント数の少ない順に総合順位を決める。延べ2人以上のリタイアを出したチームは失格となる。個人成績も表彰の対象となり、2レースの合計の合算が最も少ないライダーが総合優勝となる。
1位のチームには「ピーター・チェンバレン・トロフィー」、2位には「トロフィー」、3位には「クープ」という賞がそれぞれ一年間授与される。また1~14位には賞金が与えられ、1位の賞金額は2023年時点で3,420ユーロ(50万円程度)に設定されている。
歴史
[編集]第二次世界大戦後の1947年に、初のモトクロスの国際大会として誕生[3]。第一回大会はオランダ、ベルギー、イギリスの3ヶ国のみで争われた[3]。
FIMのピーター・チェンバレン副会長が強力なサポートを行い、大会は発展を遂げていった。1954年に彼は死去したが、最高の栄誉となるトロフィーにその名を遺した[3]。初期はイギリスが非常に強力で、他国を圧倒していた。1980年代からアメリカが猛威を振るうようになり、前人未到の14連覇を達成した。1990年代はベルギー勢が躍進した。
元々は500ccのバイクで争われたが、1961年に250ccクラスとなる「トロフィ・デ・ナシオン」が、1980年に125ccクラスの「クープ・デ・ナシオン」が発足した[3]。1985年に2クラスずつが混走する、現在の方式が導入された[3]。
2009年のイタリア開催は23年ぶりとなった[3]。2011年にモンスターエナジーがタイトルスポンサーに就任した[3]。
日本チームの最高順位は2000年と2003年の6位[4]。
2018年アメリカ・ミシガン州のレッドバッド戦では、曇天ながら独立記念日の10倍となる6万人の観衆を集めた[5]。2023年フランス大会では週末を通じて10万人の観客が詰めかけ、母国チームの優勝を目撃した[6]。
歴代優勝国
[編集]勝利数は2022年までで、1位アメリカ(23勝)、2位イギリス(16勝)、3位ベルギー(15勝)となっている。
年 | 会場 | 優勝国 | ライダー |
---|---|---|---|
1947年 | オランダ | イギリス | ニコルソン、リスト、レイ |
1948年 | ベルギー | ベルギー | ジョンソン、コックス、Milhoux |
1949年 | イギリス | イギリス | ライン、マンス、Soovell |
1950年 | スウェーデン | イギリス | Draper、ホール、ライン |
1951年 | ベルギー | ベルギー | Leloup、ジョンソン、Meunier |
1952年 | イギリス | イギリス | Stonebridge、ワード、Nex |
1953年 | スウェーデン | イギリス | アーチャー、Draper、ワード |
1954年 | オランダ | イギリス | ワード、Stonebridge、カーティス |
1955年 | DEN | スウェーデン | ニルソン、ランディン、グスタフソン |
1956年 | ベルギー | イギリス | スミス、ワード、Draper |
1957年 | イギリス | イギリス | スミス、カーティス、マーティン |
1958年 | スウェーデン | スウェーデン | ニルソン、グスタフソン、ランデル |
1959年 | ベルギー | イギリス | リックマン、スミス、Draper |
1960年 | フランス | イギリス | リックマン、カーティス、スミス |
1961年 | オランダ | スウェーデン | ニルソン、Tibblin、ランデル |
1962年 | スイス | スウェーデン | Tibblin、ヨハンソン、ランデル |
1963年 | スウェーデン | イギリス | D・E・リックマン、D・J・リックマン、バートン |
1964年 | イギリス | イギリス | スミス、D・E・リックマン、D・J・リックマン |
1965年 | ベルギー | イギリス | スミス、イーストウッド、ランプキン |
1966年 | フランス | イギリス | Bickers、リックマン、イーストウッド |
1967年 | オランダ | イギリス | イーストウッド、Bickers、スミス |
1968年 | ソビエト | ソビエト | Shinkarenko、Petushkov、Pogrbniak、Angers |
1969年 | イギリス | ベルギー | ロジャー・デコスタ、Teuwissen、ロバート、ゲボス |
1970年 | イタリア | スウェーデン | Hammargren、ヨハンソン、キング、アベルグ、ジョンソン |
1971年 | フランス | スウェーデン | ジョンソン、アベルグ、ペターソン、Hammargren |
1972年 | オランダ | ベルギー | ロジャー・デコスタ、Van Velthoven、バンデビスト |
1973年 | スイス | ベルギー | ロジャー・デコスタ、ヘーレン、Van Velthoven、ゲボス |
1974年 | スウェーデン | スウェーデン | アベルグ、キング、アンダーソン、ジョンソン |
1975年 | チェコスロバキア | チェコスロバキア | Barbovsy、Churavy、Novacek、Velky |
1976年 | オランダ | ベルギー | ロジャー・デコスタ、Rahler、ハリー・エバーツ、Van Velthoven |
1977年 | フランス | ベルギー | Malherbe、Van Velthoven、ロジャー・デコスタ、Mingels |
1978年 | イギリス | ソビエト | Moisseev、Kavinov、Korneev、Khudiakov |
1979年 | フィンランド | ベルギー | ロジャー・デコスタ、ハリー・エバーツ、Malherbe、バンデンベルク |
1980年 | イギリス | ベルギー | Malherbe、ジョルジュ・ジョベ、Vromans、バンデンベルク |
1981年 | イギリス | アメリカ | チャック・サン、ジョニー・オマラ、ダニー・ラポルテ、デニー・ハンセン |
1982年 | スイス | アメリカ | デビット・ベイリー、ジョニー・オマラ、チャンドラー、ギブソン |
1983年 | ベルギー | アメリカ | デビット・ベイリー、マーク・バーネット、ジェフ・ワード、ブロック・グローバー |
1984年 | フィンランド | アメリカ | デビット・ベイリー、ジョニー・オマラ、ジェフ・ワード、リック・ジョンソン |
1985年 | イギリス | アメリカ | デビット・ベイリー、ジェフ・ワード、ロン・ラシーン |
1986年 | アメリカ | アメリカ | デビット・ベイリー、リック・ジョンソン、ジョニー・オマラ |
1987年 | アメリカ | アメリカ | ボブ・ハンナ、リック・ジョンソン、ジェフ・ワード |
1988年 | フランス | アメリカ | ロン・ラシーン、リック・ジョンソン、ジェフ・ワード |
1989年 | イギリス | アメリカ | ジェフ・ワード、ジェフ・スタントン、マイク・キドラウスキー |
1990年 | スウェーデン/ビンベルビュ | アメリカ | ジェフ・ワード、ジェフ・スタントン、デイモン・ブラッドショー |
1991年 | オランダ/バルケンスワード | アメリカ | マイク・キドラウスキー、ジェフ・スタントン、デイモン・ブラッドショー |
1992年 | オーストラリア | アメリカ | Liles、マイク・ラロッコ、ジェフ・エミッグ |
1993年 | オーストリア | アメリカ | マイク・キドラウスキー、ジェレミー・マクグラス、ジェフ・エミッグ |
1994年 | スイス | イギリス | カート・ニコル、ヘリング、マリン |
1995年 | スロバキア/スベルペック | ベルギー | ジョエル・スメッツ(500/フサベル)、マルニック・ベルブーツ(250/スズキ)、ステファン・エバーツ(125/カワサキ) |
1996年 | スペイン/ヘレス | アメリカ | ジェフ・エミッグ(500/カワサキ)、ジェレミー・マクグラス(250/ホンダ)、スティーブ・ラムソン(250/ホンダ) |
1997年 | ベルギー | ベルギー | マルニック・ベルブーツ(125/スズキ)、ステファン・エバーツ(250/ホンダ)、ジョエル・スメッツ(Open/フサベル) |
1998年 | イギリス/フォックスヒル | ベルギー | ステファン・エバーツ(250/ホンダ)、マルニック・ベルブーツ(Open/スズキ)、パトリック・カップ(125/ヤマハ) |
1999年 | ブラジル/Indaiatuba | イタリア | アレシオ・キオッディ(125/ハスクバーナ)、クラウディオ・フェデリッチ(250/ヤマハ)、アンドレア・バルドリーニ(Open/ヤマハ) |
2000年 | フランス/サン=ジャン=ダンジェリ | アメリカ | リッキー・カーマイケル、トラビス・パストラーナ、ライアン・ヒューズ |
2001年 | ベルギー/ナミュール | フランス | ルイジ・セギー(125/ヤマハ)、デビッド・ビーラマン(250/ヤマハ)、イブ・デマリア(Open/ヤマハ) |
2002年 | スペイン | イタリア | アンドレア・バルドリーニ、アレシオ・キオッディ、アレッサンドロ・プッザール |
2003年 | ベルギー/ゾルダー | ベルギー | ステファン・エバーツ、スティーブ・ラモン、ジョエル・スメッツ |
2004年 | オランダ/リーロップ | ベルギー | ステファン・エバーツ(MX1/ヤマハ)、スティーブ・ラモン(MX2/KTM)、ケビン・ストライボス(Open/スズキ) |
2005年 | フランス/エルネー | アメリカ | リッキー・カーマイケル、アイバン・テデスコ、ケビン・ウインダム |
2006年 | イギリス/ウィンチェスター | アメリカ | ジェームス・スチュワート(MX1/カワサキ)、ライアン・ビロポート(MX2/カワサキ)、アイバン・テデスコ(Open/スズキ) |
2007年 | アメリカ/バッズクリーク | アメリカ | リッキー・カーマイケル(MX1/スズキ)、ライアン・ビロポート(MX2/カワサキ)、ティム・フェリー(Open/カワサキ) |
2008年 | イギリス/ドニントンパーク | アメリカ | ジェームス・スチュワート(MX1/カワサキ)、ライアン・ビロポート(MX2/カワサキ)、ティム・フェリー(Open/カワサキ) |
日本代表
[編集]年 | 順位 | ライダー |
---|---|---|
1990年 | 15 | 東福寺保雄、(500-23/25・ホンダ)、宮内隆行(250-DNF/26・ホンダ)、岡部篤史(125-28/24・カワサキ) |
1991年 | 14 | 宮内隆行(500-23/23・ホンダ)、田淵武(250-25/32・ヤマハ)、荻島忠雄(125-32/27・スズキ) |
1996年 | 失格 | 小田切一剛(500-25/29・ホンダ)、榎本正則(250-DNS/DNS・カワサキ)、川島雄一郎(125-29/31・ホンダ) |
1998年 | 失格 | 熱田孝高(Open-16/DNF)、成田亮(250-17/24・ホンダ)、増田一将(125-DNF/DNF・ヤマハ) |
1999年 | 10 | 小池田猛(Open-9/15・ヤマハ)、熱田孝高(250-12/18・ホンダ)、加賀真一(125-16/DNF・ホンダ) |
2000年 | 6 | 高濱龍一郎(Open-14/23・ホンダ)、熱田孝高(250-7/12・ホンダ)、成田亮(125-17/12・ホンダ) |
2003年 | 6 | 成田亮(スズキ)、増田一将(スズキ)、熱田孝高(ホンダ) |
2004年 | 17 | 田中教世(MX1-40/DNS・カワサキ)、成田亮(MX2-25/24・ホンダ)、熱田孝高(Open-10/37・ホンダ) |
2005年 | 12 | 増田一将(MX1-16/17・ホンダ)、小島庸平(MX2-32/33・スズキ)、熱田孝高(Open-9/34・スズキ) |
2006年 | 12 | 成田亮(MX1-23/27・ヤマハ)、小島庸平(MX2-28/28・スズキ)、熱田孝高(Open-12/30・ホンダ) |
2007年 | 7 | 成田亮(MX1-36/23・ヤマハ)、増田一将(MX2-23/16・ホンダ)、熱田孝高(Open-8/7・ホンダ) |
2008年 | 17 | 新井宏彰(MX1-27/33・カワサキ)、北居良樹(MX2-38/37・スズキ)、小島庸平(Open-36/27・スズキ) |
脚注
[編集]- ^ 2008年世界選手権MX2へ参戦する「ヤマハ・レッドブル・デ・カルリ・チーム」を発足 ヤマハ発動機公式サイト 2023年9月20日閲覧
- ^ [https://www.fim-moto.com/fileadmin/user_upload/Documents/2023/2023_MXGP_RULES_Update_May_2023.pdf?t=1684861629 FIM MXGP/MX2 AND WOMEN’S MOTOCROSS WORLD CHAMPIONSHIPS, FIM JUNIOR MOTOCROSS WORLD CHAMPIONSHIPS/CUP AND FIM MOTOCROSS OF NATIONS REGULATIONS ] FIM公式サイト 2023年9月19日閲覧
- ^ a b c d e f g “History of Individual Motocross World Championships”. fim-live.com. 4 March 2016時点のオリジナルよりアーカイブ。11 October 2011閲覧。
- ^ INFORMATION 2022 モンスターエナジー FIM モトクロス・オブ・ネイションズ 日本代表チーム派遣決定! MFJ公式サイト 2023年9月24日閲覧
- ^ Motocross of Nations brings record crowd to Redbud WNDU 16 NEWS NOW 2023年10月8日閲覧
- ^ TEAM FRANCE ON TOP OF THE WORLD AT MONSTER ENERGY FIM MOTOCROSS OF NATIONS MXGP公式サイト 2023年10月9日閲覧