ヒョウモンダコ

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ヒョウモンダコ
Hapalochlaena lunulata2.JPG
オオマルモンダコ Hapalochlaena lunulata
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 頭足綱 Cephalopoda
上目 : 八腕形上目 Octopodiformes
: タコ目(八腕目) Octopoda
亜目 : マダコ亜目 Incirrina
: マダコ科 Octopodidae
: ヒョウモンダコ属
Hapalochlaena
学名
Hapalochlaena
Robson, 1929
和名
ヒョウモンダコ(豹紋蛸)
英名
Blue-ringed octopus
本文参照

ヒョウモンダコ(豹紋蛸)は、マダコ亜目 マダコ科 ヒョウモンダコ属に属する4種類のタコの総称。小型だが唾液腺および筋肉・体表に猛テトロドトキシンを含むことで知られ、危険なタコとされる。オーストラリアではヒトの死亡例もある[1]日本ではその中の一種Hapalochlaena fasciata を指す場合が多い。

分布[編集]

一般に日本の小笠原諸島南西諸島以南[2]の太平洋からオーストラリア[1]にかけての西太平洋熱帯域・亜熱帯域に分布し、浅い海の岩礁、サンゴ礁、砂礫底に生息する。しかし、海水温の上昇により分布北限が北上を続け、1999年には大阪湾での捕獲が記録されている[3]ほか、2009年になってからは九州北部(福岡県佐賀県長崎県大分県)で多く目撃されていることから、警戒を呼び掛けられている[4]。また、日本海側や浜名湖での捕獲や目撃も報告されている[5][6]

特徴[編集]

体長は10cmほど[1]の小型のタコである。他のタコと同様に体色を素早く変化させることができ、周囲の岩や海藻擬態するが、刺激を受けると青い輪や線の模様のある明るい黄色に変化する。この模様がヒョウ柄を思わせることから、ヒョウモンダコという和名がついた。

他のタコ同様に肉食性で、カニエビを捕食するが、捕まえられるならば魚類も食べる。なお、野生では観察されたことはないが、実験室では共食いする。人間でさえ、触られたり近づかれたりした場合は噛み付かれることがある。

メスと出会ったオスはメスの外套膜をつかみ、精子嚢を渡すための交接腕を外套膜腔に何度も挿入する交尾を、メスの中に十分に精子嚢が入るまで続ける。メスは秋の終わり頃に50個ほどの卵を産み、すぐに触手で抱えて食料を取らず、この状態を6か月間続ける。メスは卵の孵化と共に体力を使い果たして寿命を終えるが、幼生は次の年には性成熟する。

後述のように防御、攻撃、餌の捕獲[7]に毒を利用するように進化しているためか、ヒョウモンダコの吸盤は小さくて弱々しく、「スミ」を蓄える墨汁嚢も退化している。泳ぎは不得意で、たいていは海底をゆっくり這っている。こうした身体は強力な獲物を押さえつけたり、スミを吐き散らしたりしながら敵から逃げる必要がないためと考えられている。危険が迫ったり興奮したりすると、鮮やかなルリ色のリング紋様の警告色を発することで、有毒生物であることを知らせて外敵を威嚇する。

毒性[編集]

ヒョウモンダコは唾液にフグと同じ毒のテトロドトキシンを含み、身の危険を感じるとこの唾液を吐いたり、噛み付いて注入したりする。咬症により噛まれた生物はテトロドトキシン中毒により死亡することがある。ただし、個体によっては噛まれたときにテトロドトキシンによる麻痺症状ではなく難治性の皮膚潰瘍のみが生じることが知られている。また、食しても危険とされる[8]

従来、唾液腺のみにテトロドトキシンが含まれていると考えられていたが、2018年9月の日本水産学会にて長崎大学水産・環境科学総合研究科竹垣毅准教授らのグループが報告した内容によると、ヒョウモンダコには筋肉、体表にもテトロドトキシンが含まれていることがわかり、同報告で食したり素手で触れないよう注意喚起を行った[9]

テトロドトキシンはヒョウモンダコの獲物である甲殻類には無害だが、唾液腺中に含まれるもう一つの毒「ハパロトキシン(Hapalotoxin)」は、甲殻類を麻痺させる毒性を持つ。ヒョウモンダコはカニなどを捕らえる際に、この毒を海水中に放出することであらかじめ獲物の動きを奪い[10]、捕食に伴うリスクを減らしていると考えられる。[要検証]

分類[編集]

備考[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 毒をもつ生き物(1)青い点々が出たら要注意日本経済新聞』朝刊2020年1月26日(サイエンス面)2020年9月12日閲覧
  2. ^ 上里博「海洋危険生物による皮膚障害(III)」『西日本皮膚科』2013年 75巻 2号 p.154-163, doi:10.2336/nishinihonhifu.75.154 (認証必要)
  3. ^ 有山啓之「大阪湾で採集されたヒョウモンダコ」『南紀生物』41(1), 23-26, 1999-06, NAID 40002787853
  4. ^ 猛毒タコ九州北上、かまれると死ぬことも[リンク切れ]読売新聞』2010年7月22日(2010年7月23日閲覧)
  5. ^ ヒョウモンダコ 「殺人ダコ」日本海北上 温暖化影響か毎日新聞』東京夕刊2016年2月22日(2020年9月12日閲覧)
  6. ^ 浜名湖で猛毒のタコ相次いで見つかるNHK NEWS WEB(12月16日 13時20分更新)2016年12月16日閲覧
  7. ^ 野口玉雄、橋本周久「水産動物毒の化学」『化学と生物』1987年 25巻 1号 p.44-52, doi:10.1271/kagakutoseibutsu1962.25.44
  8. ^ 奥谷喬司編著『日本のタコ学』(東海大学出版会、2013年)11頁。
  9. ^ 食用ダメ!「ヒョウモンダコ」筋肉や表皮にも猛毒 長崎大が分析”. 『西日本新聞』 (2018年10月17日). 2018年10月17日閲覧。
  10. ^ 松居 隆(東京大学農学部)「フグ毒の起源を探る」『ファルマシア』20(3), 219-221, 1984 公益社団法人 日本薬学会

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]