チリクワガタ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Jump to navigation Jump to search
チリクワガタ
Chiasognathusgranti.JPG
チリクワガタ Chiasognathus grantii 雄(左)と雌(右)
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: 甲虫目 w:Coleoptera
亜目 : カブトムシ亜目 Polyphaga
上科 : コガネムシ上科 Scarabaeoidea
: クワガタムシ科 Lucanidae
亜科 : クワガタムシ亜科 Lucaninae
: コガシラクワガタ族Chiasognathini
: チリクワガタ属 Chiasognathus
: チリクワガタ C. grantii
学名
Chiasognathus grantii
Stephens, 1832
シノニム
  • Tetropthalma chiloensis
  • C. affinis
  • C. brevidens
  • C. pygmaeus
  • C. grantii holometallicus

チリクワガタChiasognathus grantii)は昆虫綱甲虫目クワガタムシ科チリクワガタ属に属するクワガタムシの一種、コガシラクワガタグラントチリクワガタ、英語でDarwin's beetleダーウィン・ビートル)とも呼ばれ、チリアルゼンチンに生息し、奇抜な外見を持つ南アメリカ最大のクワガタムシである。

オスの標本、金属光沢が落とし、赤褐色の地色となる

形態[編集]

体長は33mm~90mm(オス)25.1mm~37.1mm(メス)、南アメリカのクワガタムシの中で最大となる。チリクワガタ属の共通点として、低温を好む・腹面に白い毛が密生する・頭部は極端に小さい・触角の片状節は6つ・1対の複眼は眼縁突起に仕切られて4つ目のように見える等の特徴を持つ。

腹面を除く全身は赤褐色の地色に虹色の金属光沢を持ち、前翅の光沢はやや弱い。前翅は腹部より長くて両縁は腹部と縫合せず、腹面から見ると後翅も少し映えるほどの隙間がある。

最大の特徴はオスの奇抜な大アゴで、本属中でも例外的に体長の半分以上を占めるほど細長い。 根元から先端まで多数の細かい小歯が並ぶ。この大アゴは上向きに伸びた後、⅓の辺りで下向きに折れるように曲がり、先端は内側に湾曲し、少し毛を備え、上向きの鈎状となる。

また、大アゴ基部の腹側に牙のような突起があり、長さはおよそ大アゴの⅓~¼、その内側にも細かい小歯が並ぶ。 メスの大アゴはニッパーの様な形になり、頭部より少し長いくらい太短く、先端辺りに小歯が並ぶ。

他にもオスの頭部に小さな二股状の突起を持ち、この突起は大アゴ基部の内歯と嚙み合せる。触角の屈折部にも放射状に並ぶ毛が生える。脚は長く、特に前脛節と中後符節は発達する、脛節外縁に多くの棘が並び、前脛節は内縁にも棘が並ぶ。前胸部背側に不明瞭な毛が生え、後縁両側に鈎のような突起を持ち、メスとアゴの短いオスの場合はこの突起は太短い。

生態[編集]

ナンキョクブナ科の植物で構成される温帯雨林という他のクワガタより寒冷な地域に生息する。幼虫は土中で生活し、成虫は数メートルの樹にも登り、高密度の縄張りに集まる、夕暮れに集団で飛行する行動が見られ、光源に引き寄せられる[1]

筋肉の少ない小さな頭に備え、オスの大アゴは大きさに反して挟む力は弱い。チャールズ・ダーウィンが南アメリカを訪れた際にこのクワガタムシに指を挟ませたが、意外にも痛みすら感じさせないほど力が弱いというエピソードが日記に残っており、「過剰適応」の例とされる。この話から本種はダーウィン・ビートル(ダーウィンの甲虫)とも呼ばれる。

華奢な外観に似合わず、気が荒くて非常に好戦的であり、オスだけではなく、メス同士も激しく争い合う。その闘争の流れも一般のクワガタより特殊である。

オスは大アゴの長さを利用して、鈎状の先端を相手の前翅の隙間へ差し込み、そのまま相手を縄張りから引き上げて、樹の下へ投げ落とす。 一方、メス同士はオスにメイトガードされる相手を挑発し、お互い太短い大アゴで相手の脚を噛む。その一方が持ち上げられて決着が付くと、元々メイトガードするオスは勝利したメスと協力してメス同士の争いに敗れた個体を縄張りから取り除く[2]。 一般のクワガタムシカブトムシ類と同様、オスは交尾済みのメスを縄張りから投げ落とす習性がある。

分布[編集]

チリビオビオ州)、アルゼンチンネウケンチュブ州)。 ナンキョクブナ科の植物で構成される温帯雨林に生息する。

分類[編集]

かつて独立種として記載されたC. pygmaeusは本種の小型個体であり、亜種として記載されたC. g. holometallicusの記載は不完全とされ、変異として見通し、全てシノニムとなる。

C. g. grantii
原名亜種。地色、特に大アゴと脛節の赤味が強い、金属光沢は部分によって異なる。腿節、頭部と大アゴは緑青色、前胸部中心は金色で両側は紫色、前翅は淡いピンクの地色で金属光沢は弱い。
C. g. holometallicus
シノニムとなる亜種。地色と前翅とも暗い。金属光沢は強くてより均一、全体的に青に近い。タイプ産地はコイハイケ

脚注[編集]

[ヘルプ]