セルゲイ・スクリパリ

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セルゲイ・ヴィクトロヴィチ・スクリパリ
Сергей Викторович Скрипаль
生誕1951年6月23日
団体ロシア連邦軍参謀本部情報総局
ロシア内務省

セルゲイ・ヴィクトロヴィチ・スクリパリロシア語: Серге́й Ви́кторович Скрипа́ль英語: Sergei Viktorovich Skripal1951年6月23日 - )は、ロシア情報機関員である[1]

ロシア連邦軍参謀本部情報総局大佐を務めた[2]イギリススパイとして活動していたことを理由に、2006年にロシアで禁錮13年の判決を言い渡された[2]。ロシアとアメリカ合衆国とのスパイ交換により、2010年7月9日ウィーンでアメリカ側に引き渡され[1]、のちイギリスに亡命した[2]

毒殺未遂事件[編集]

事件の概要[編集]

2018年3月4日ソールズベリーショッピングセンター前のベンチに娘とともに倒れているのを発見され、意識不明の重体となっている[3][2][4]。同年5月18日、入院していた病院から退院したことが公表されている[5]

同年11月、現場に最初に駆け付けた巡査部長がBBCのドキュメンタリー番組「パノラマ」に出演し、玄関のドアノブに吹き付けられていた神経剤ノビチョクに汚染されたことを明かした。その結果、知らずに家族を自宅を汚染してしまい「子供たちが持っていたもの全てを失くした。車も、何もかも失くした」と語っている。巡査部長本人はスクリパリの自宅を訪れて数時間後に体調を崩し、2日後に入院。2週間半の入院中は常に5つか6つの点滴が打たれ、医療スタッフは防護服を着ていたという[6]

事件後、英国軍人約190人と専門業者から成る除染チームが汚染が疑われていた場所の除染作業を11か月かけて行い、2019年3月1日、ソールズベリーは除染の終了宣言を出している[7]

容疑者の特定[編集]

2018年10月10日、調査報道サイト・ベリングキャットザ・インサイダーとの協力)はロンドン警視庁が公表した監視カメラ映像に収められている男性は、ロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)所属の医師アレクサンデル・ミシュキンと特定したことを発表した[8]。ベリングキャットの創設者エリオット・ヒギンスと研究員クリスト・グロゼフは同年10月9日に英議会で記者会見し、ミシュキンがウクライナや、モルドバからの分離独立を主張する親ロシア地域「沿ドニエストル共和国」で秘密工作に関与していたこと、2014年秋にプーチン大統領からロシア最高の栄誉勲章である「ロシア連邦英雄」も授与されていたことを突き止めたと話した。もう一人の容疑者は、2014年にクレムリンで最高栄誉勲章を授与されたGRUのアナトリー・チェピーガ大佐と特定している[9]

2019年6月28日、その後の追跡調査(BBCとの協力)の結果、セルゲイ・フェドトフという偽名でロンドン入りしていたデニス・セルゲーエフというGRU将校を特定したことを公表した。ロシアの携帯電話会社に勤める内部告発者が、偽名で登録された電話番号のメタデータログを提供しており、その分析によるものであるという。内部告発者は登録された人物(セルゲイ・フェドトフ)は実在しないため、データプライバシー法に違反しないとしている。偽名で登録された番号に、セルゲーエフの妻が登録している電話番号から電話がかかって来ていたという傍証も得ている。2017年から2018年末までセルゲーエフの行動範囲はGRUの拠点であったが、事件当時はロンドン市内で作戦の調整を担当していた可能性が高い。BBCの情報源によると少将の地位にある人物で、ミシュキンとチェピーガの上司と見られる[10]

2021年9月22日、イギリス内務省がセルゲーエフが国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、国際手配されたことを報告したと報じられた[11]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ a b 米露、冷戦時代のスパイ交換を完了”. フランス通信社 (2018年2月27日). 2018年3月8日閲覧。
  2. ^ a b c d 「元英国のスパイ」 ロシア人男性ら重体 「未確認物質に暴露」”. フランス通信社 (2018年3月6日). 2018年3月8日閲覧。
  3. ^ 元スパイ毒殺未遂、英警察が容疑者特定し「ロシア人と確信」”. AFP BB News (2018年7月19日). 2020年8月12日閲覧。
  4. ^ ロシア諜報機関元大佐の襲撃、3人目の容疑者特定 英警察”. 産経ニュース (2021年9月22日). 2021年9月22日閲覧。
  5. ^ 毒殺未遂のロシア人元二重スパイが退院”. フランス通信社 (2018年5月18日). 2018年5月19日閲覧。
  6. ^ 【ロシア元スパイ】神経剤で「家族は全てを失った」 被害警官語る” (日本語). BBCニュース (2018年11月23日). 2022年8月4日閲覧。
  7. ^ 英神経剤襲撃、現場の町が「除染完了宣言」 作業に11か月”. AFP (2019年3月2日). 2019年3月2日閲覧。
  8. ^ 【ロシア元スパイ】第2の毒殺未遂容疑者、プーチン氏から称号授与された軍医か” (日本語). BBCニュース (2018年10月10日). 2022年8月4日閲覧。
  9. ^ 英神経剤襲撃、容疑者はロシアの最高勲章受章者 英検証サイト発表 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News”. www.afpbb.com (2014年10月10日). 2022年8月4日閲覧。
  10. ^ The GRU Globetrotters: Mission London” (英語). bellingcat (2019年6月28日). 2022年8月31日閲覧。
  11. ^ ロシアの元スパイ暗殺未遂事件、英当局3人目の容疑者を特定:朝日新聞デジタル” (日本語). 朝日新聞デジタル (2021年9月22日). 2022年8月31日閲覧。