ゴンチャロフ (1973年の映画)

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『ゴンチャロフ』イタリア語: Goncharov)は、イタリアのナポリを舞台とした1973年ギャング映画マーティン・スコセッシが製作に携わっており、主要キャストはロバート・デ・ニーロアル・パチーノジョン・カザールジーン・ハックマンシビル・シェパードハーヴェイ・カイテルなど。

『ゴンチャロフ』が特にSNSで人気になったきっかけは、Tumblrのあるユーザーが、ブランドロゴの代わりにこの映画のタイトル(Goncharov)が入った靴のタンの画像を「コピー商品のブーツ」として投稿したことに対し、2020年8月にこの投稿がリブログされたときである。画像の投稿と、このリブログの際につけられた、この映画を見たことがないことをあざけるコメントはインターネット・ミームにもなった。2022年11月には『ゴンチャロフ』ファンによるポスターがつくられてオンラインで公開されたことで、人気が再燃した。ストーリーやプロダクションについてさまざまな二次創作が始まり、Tumblrだけでなくいろいろな場所で拡散された。『ゴンチャロフ』は、インターネットでファンダムが生まれた好例としてメディアにも広く取り上げられ、スコセッシをはじめとする著名人もコメントを残している。

ストーリーとプロダクション[編集]

ゴンチャロフ
Goncharov
監督
脚本 マッテオ・JWHJ0715[2]
製作 ドメニコ・プロカッチ[3]
出演者
公開 1973年 (supposedly suppressed from release)[1][5]
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この映画は、共同作業的な発想からはじまったためにディテールの多くで整合性を欠くものの、おおむねマフィア映画と表現されることは一貫している[1][4][6]。この映画の存在についてはメタフィクション的な語り方がされることが多く、その製作過程でトラブルがあったのではともいわれており、実際に作品の正式な公開はついにされていないため、いわゆる失われた映画になりかけていた。この映画についてあいまいなとところが多いのはそのせいであるという説がある[1][5][7][4]

ソビエト連邦の崩壊の余波がのこるなか、ナポリを舞台として、主人公のゴンチャロフことロー・ストラニエロをロバート・デ・ニーロが演じたといわれている[2][5]。ゴンチャロフは、ロシア人のヒットマンでありディスコの元店長である。ストーリーには、ゴンチャロフとその妻カーチャ(シビル・シェパードがキャスティングされたといわれる)、そしてアンドレイととの三角関係もサブプロットとして含まれている。ゴンチャロフとアンドレイの関係にはホモセクシュアルなニュアンスがある[8][5][9][1]。そしてカーチャはソフィア(ソフィア・ローレン)という名の女性との禁じられた関係を結ぶためゴンチャロフの前から消える[8][1][2]。このゴンチャロフ/アンドレイとカーチャ/ソフィアの関係性は、ゴンチャロフのファンダムでも人気のカップリングである[6][1][9]。「アイスピック・ジョー」ことジョセフ・モレッリ(ジョン・カザール) も有名なキャラクターで、アイスピックを殺しの道具に使うことで悪名高いサイコパス気質の殺し屋であることをうかがわせる。ゴンチャロフとモレッリのサブプロットは、この映画における心の病と幼少期のトラウマというテーマを描いているとされる[7][5][6][10]。この作品では、時計のモチーフも繰り返し登場する[1][5][8]

受容[編集]

『ゴンチャロフ』の人気が再燃したのは、チェコプラハを拠点に活動するアーティスト、アレックス・コロチュクが、キャストたちの姿や、映画クルーの名前が書かれたポスターのデザインを作成して、2022年11月18日にTumblrで投稿したのがきっかけである[9]。このポスターがSNSなどで拡散されて、それ以前に確立されたディテールをもとに映画の存在についてさらなる議論が進んだ[5][4][2][11][12]。二度目の流行によりこの映画についての議論が進む中で、 ストーリーやテーマ、シンボリズム、キャラクターについての分析も深いものが行われ、同時に作品を題材にしたgifやファンアート、(エロティックな)ファンフィクションがつくられていった[4]。アメリカの音楽教師は、少なくとも30人以上の人間から支援をうけながら、この映画のテーマ曲も作曲している。映画に特化したSNSであるLetterboxdにも『ゴンチャロフ』のページがつくられ、レビューも投稿されたが、後にアプリからはページごと削除されている[13][9][12]。この作品に関する様々なストーリーやメタフィクショナルな視点を収集・整理するためのGoogle Documentも公開されている[5]。ファンフィクションサイトの Archive of Our Ownでは、2022年11月24日の時点で500件もの二次創作がアップロードされている[14][12]

評価と分析[編集]

2022年11月、ニューヨーク・タイムズは『ゴンチャロフ』がTumblrのトップトレンドになり、スコセッシもそれに次ぐ人気のトピックになっていると報じている[9][15][1]。なかには『ゴンチャロフ』の人気とイーロン・マスクによるTwitterの買収を関連付けて、TwitterをやめてTumblrに移行するユーザーが多くいたことを話題にするライターもいた[16][1][13]バズフィードのケルシー・ウィークマンは、『ゴンチャロフ』について、「tumblrユーザーのクリエイティブでコラボ好きのマインドがユニークな力をもっていることを証明した」とコメントした[10]ギズモードのリンダ・コデガは、この映画をめぐる熱的な人気について「コミュニティそれ自体がきっかけとなって、ストーリーテリングが修正されていき、と同時にファンダムがうまれたという、はっとさせる実例である。本質的には『ゴンチャロフ』(1973年)は映画ではなく、ゲームなのだ。そしてTumblrのユーザーだけがそのルールを知っている。なぜなら『ゴンチャロフ』(1973年)のルールは、Tumblrそれ自体のルールだからである」と指摘している[2]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j Baker-Whitelaw (2022年11月21日). “Martin Scorsese's 'Goncharov' is the hottest film on Tumblr. It doesn't actually exist.” (英語). The Daily Dot. 2022年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月21日閲覧。
  2. ^ a b c d e f g h i j k Codega (2022年11月22日). “Martin Scorsese's Goncharov (1973) Is the Greatest Mafia Movie Never Made”. Gizmodo. 2022年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月24日閲覧。
  3. ^ a b Edwards (2022年11月21日). “Did Martin Scorsese direct Goncharov 1973? Tumblr fiction debunked” (英語). The Focus. 2022年11月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月24日閲覧。
  4. ^ a b c d e O'Keefe (2022年11月21日). “Where to Stream 'Goncharov' (1973), The Mysterious Martin Scorsese Movie Dominating Tumblr” (英語). Decider. 2022年11月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月21日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h Radulovic (2022年11月21日). “'Martin Scorsese's lost film' Goncharov (1973), explained” (英語). Polygon. 2022年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月22日閲覧。
  6. ^ a b c 'It's Me, Goncharov,' AKA Tumblr's Greatest Mafia Movie Never Made” (英語). The Mary Sue (2022年11月23日). 2022年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月25日閲覧。
  7. ^ a b Johnson (2022年11月23日). “Where to Stream 'Goncharov,' Martin Scorsese's Lost Masterpiece”. Lifehacker. 2022年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月24日閲覧。
  8. ^ a b c Tumblr wills fake Martin Scorsese movie into existence” (英語). The A.V. Club (2022年11月22日). 2022年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月25日閲覧。
  9. ^ a b c d e Kircher, Madison Malone (2022年11月22日). “The Fake Scorsese Film You Haven't Seen. Or Have You?” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. オリジナルの2022年11月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221124195941/https://www.nytimes.com/2022/11/22/style/goncharov-scorsese-tumblr.html 2022年11月22日閲覧。 
  10. ^ a b Weekman, Kelsey (2022年11月24日). “Tumblr Is Obsessed With A 1973 Scorsese Movie That Doesn't Exist”. BuzzFeed. 2022年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月24日閲覧。Weekman, Kelsey (2022年11月24日). “"Tumblr Is Obsessed With A 1973 Scorsese Movie That Doesn't Exist"”. オリジナルの2022年11月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20221124202836/https://www.buzzfeednews.com/article/kelseyweekman/goncharov-tumblr-movie-fake 2022年11月24日閲覧。 . Retrieved 24 November 2022.
  11. ^ 'Goncharov' isn't a real Martin Scorsese movie, but Tumblr convinced the internet it's a classic” (英語). NBC News. 2022年11月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月26日閲覧。
  12. ^ a b c Goncharov: why has the internet invented a fake Martin Scorsese film?” (英語). The Guardian (2022年11月25日). 2022年11月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月25日閲覧。
  13. ^ a b DiBenedetto (2022年11月26日). “Is fake Martin Scorsese film 'Goncharov' the internet's best shared delusion?” (英語). Mashable. 2022年11月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月27日閲覧。 “Ryan Reynolds posted about his favorite Goncharov line on his new Tumblr account.” [italics original]
  14. ^ Rowe (2022年11月23日). “How A Fake Martin Scorsese Movie Became A Real Video Game”. Inverse. 2022年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月24日閲覧。
  15. ^ Colombo (2022年11月21日). “Lost Martin Scorsese movie, Goncharov, takes over the internet” (英語). The Digital Fix. 2022年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月21日閲覧。
  16. ^ Haasch. “A deep dive into 'Goncharov (1973),' the completely made-up Martin Scorcese movie that Tumblr users are obsessed with” (英語). Insider. 2023年1月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月25日閲覧。

外部リンク[編集]