コクチバス

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コクチバス
Micropterus dolomieu.jpg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: サンフィッシュ科 Centrarchidae
: オオクチバス属 Micropterus
: コクチバス M. dolomieu
学名
Micropterus dolomieu
Lacépède1802
和名
コクチバス(小口バス)
スモールマウスバス
ブラックバス
英名
Smallmouth bass

コクチバス(小口バス、英名:Smallmouth bass )はオオクチバス属サンフィッシュ科に分類される淡水魚の一種、Micropterus dolomieuに充てられる標準和名である。2亜種を含む。日本に生息する個体群は原名亜種 Micropterus dolomieu dolomieu であり英名をノーザンスモールマウスバス(Northern smallmouth bass)というが、この場合の和名は確立していない。オオクチバス(ラージマウスバス) M. salmonides などと共に、通称「ブラックバス」と呼ばれることが多い。 オオクチバスと同様、北アメリカ原産であるため、分布拡大が問題となっている。

分布[編集]

北アメリカカナダ南部、アメリカ中東部)を原産地とする [1]

日本(北海道本州)に移入分布する[2][3]

亜種[編集]

  • Micropterus dolomieu dolomieu - Northern Smallmouth Bass、基亜種
  • Micropterus dolomieu velox - Neosho Smallmouth Bass、ミズーリ亜種

形態[編集]

成魚の体長は30-50cmほど[1]。記録されている最大個体は69cm。断面は側偏し、亜成魚以上の個体は頭部後方から第一背鰭前方にかけ、背面が盛り上がる。体色は背から体側にかけて茶銅色、腹面はやや褐色がかった白銀色を示す。危険を感じたり捕食行動をとったりする際、また夜間休息中には、体側に顕著な虎縞状の模様が現れる。

オオクチバスと比較して口が小さく、体色が茶色または褐色(オオクチバスも茶色いことがあるため、これだけを同定に使うのは不適)、多くの個体で上顎の後端は目より後ろには達しない[1]。また、コクチバスの方が体高が高く鱗が細かい。側線上部鱗数(そくせんじょうぶりんすう)はオオクチバスが8なのに対し、コクチバスは11-13である。

生態[編集]

オオクチバスが比較的温暖な止水域から緩い流れを棲み処とするのに対し、本種はより冷水、流水に適応している。原産地では水底に丸石が転がるような清流、渓流、清澄な湖沼等に多い傾向にあるが、日本では河川の中流域から泥底の汽水域まで広くみられる。

他の魚、水棲節足動物、水面に落下した昆虫等を捕食する。体長の44%から66%までの体長の小魚を捕食している[4]。寿命はオオクチバスよりもやや短く、通常8年程度とされている[5]

外来種問題[編集]

ルアーにより釣り上げられたコクチバス

オオクチバスよりも低水温を好み、流れの速い河川でも生息できるという性質から、オオクチバスが侵入できないような渓流域や流水域にも侵入し、在来生物へ影響を与えることが危惧されている[1]。捕食が確認されている生物種は、アユイワナウグイヒメマスヤマメヨシノボリワカサギなど幅広い[6]。こうした悪影響を考慮して、日本生態学会では本種を日本の侵略的外来種ワースト100に選定している[7]

外来生物法による特定外来生物に指定されており、無許可の生きたままの飼養・保管・運搬・輸入が一切禁止されている[1]。沖縄を除く都道府県の内水面漁業調整規則で移植が禁止されているほか、琵琶湖などでは採捕地点での同所的再放流も規制されているので注意が必要である[1]中禅寺湖本栖湖では、延縄や刺網を用いて駆除が行われている[7]

日本における歴史[編集]

日本では1925年に赤星鉄馬により本種もオオクチバスとともに芦ノ湖に放流された。原産地北米で釣魚価値がオオクチバスを凌ぐとされることから赤星はコクチバスの移植にも意欲を注いでいたが[8]、結局当時の移植事業で定着したのはオオクチバスだけだった[2]

1990年代はじめにコクチバスが福島県檜原湖で発見された後、長野県野尻湖木崎湖などでも生息が確認された[7][6]。また、1995年中禅寺湖[9]、2000年代前半に長野県千曲川をはじめ北海道から宮崎県まで日本各地[10]での繁殖が確認されている。分布が拡大した時期には、日本全国に移植放流されているアユゲンゴロウブナの生産地からは発見されていなかったため、これらに混じった放流による拡散ではなく、コクチバスそのものの移植を目的とした密放流が強く疑われている[7]

地域振興[編集]

一方、1990年代前半に生息が確認された長野県野尻湖(1995年から)[11]や福島県桧原湖[12]ではルアーフィッシングの対象魚とされ地域の観光資源として利用されている。

駆除[編集]

本栖湖では、1997年から潜水士(ダイバー)による潜水調査を元に産卵床の埋没や刺し網、水中銃を利用した捕獲を2004年まで行い2012年まで発見例がないために根絶した[5]とされている(オオクチバスに関しては2014年現在も生息している)。他に中禅寺湖でも根絶に成功したとされている。

日本産コクチバスの遺伝的知見[編集]

mtDNAハプロタイプの分析によれば、原産国のアメリカ合衆国エリー湖の個体を対象とした調査では、112個体から8種類のハプロタイプを確認しているが、日本国内における遺伝的多様性は低く 208個体から o, n, p の3種類しか得られなかった。日本国内での分布には地域による偏りがあり、福島県檜原湖では n , p が確認され、長野県以西では、 p または n のどちらかが優占する傾向がある。従って、日本国内へは、遺伝的多様性の低い同一の原産地から1回或いは数回の移入で、2種類のハプロタイプが維持できる十分な個体数が福島県及び長野県に最初に密放流された後、各地に組織的な放流で広まった事が遺伝的な解析からも示唆される[13]

利用[編集]

釣り[編集]

コクチバスはオオクチバスと比較して引きが強いと言われている、また生息域も河川に多いため、それも引きの強さに起因していると思われる。

食用[編集]

上述のように生息域も河川、やや綺麗な水質の湖沼を好む事もあり、本種もまた優秀な食材となりうる。特に、河川に生息していた個体は身が特に締まっており、歯ごたえも良い。しかし、日本顎口虫などの寄生虫が着くため生食は推奨されない。また、寄生虫症の発症が報告されている[14]

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著) 『決定版 日本の外来生物』 平凡社2008年4月21日ISBN 978-4-582-54241-7
  2. ^ a b コクチバス 国立環境研究所 侵入生物DB
  3. ^ 炭素窒素同位体判別法により推定した北海道への移入種オオクチバスの食性変位 北海道立水産孵化場研究報告 第59号
  4. ^ 片野修、青沼佳方、コクチバスによって捕食されるウグイの最大体長 日本水産学会誌 Vol.67 (2001) No.5 P866-873, doi:10.2331/suisan.67.866
  5. ^ a b 大浜秀規、岡崎巧ほか、本栖湖に密放流されたコクチバス Micropterus dolomieu の根絶 日本水産学会誌 Vol.78 (2012) No.4 p.711-718, doi:10.2331/suisan.78.711
  6. ^ a b 片野修「外来魚コクチバス問題の現状と対策」、『日本水産学会誌』第71巻第3号、公益社団法人日本水産学会、2005年5月15日、 399-401頁、 NAID 110003161620
  7. ^ a b c d 村上興正・鷲谷いづみ(監修) 日本生態学会(編著) 『外来種ハンドブック』 地人書館2002年9月30日ISBN 4-8052-0706-X
  8. ^ (著)赤星鉄馬、 (編)福原毅 『ブラックバッス』 イーハトーヴ出版, 1996/6, ISBN 9784900779099
  9. ^ 中禅寺湖におけるコクチバスMicropterus dolomieuの生態と駆除方法の検討 栃木県水産試験場研究報告 (45), 3-12, 2002-03, ISSN 13408585
  10. ^ 淀太我、井口恵一朗:バス問題の経緯と背景 水研センター研報, 2004 第12号 (PDF)
  11. ^ 横山貴史:野尻湖におけるブラックバスフィッシングの導入とその地域的意義 地域研究年報 31, 2009 99-110 (PDF)
  12. ^ バスフィッシング 裏磐梯観光組合
  13. ^ 佐藤千夏、向井貴彦、淀太我、佐久間徹、中井克樹:日本国内におけるコクチバスのmtDNAハプロタイプの分布 魚類学雑誌 Vol. 54 (2007) No. 2 P 225-230, doi:10.11369/jji1950.54.225
  14. ^ 『ブラックバス』生で食べると危険です。 秋田県 秋田さきがけ 2002.4.5

参考文献[編集]