コウモリ爆弾

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Bat bomb
Bat Bomb Canister.jpg
冬眠したコウモリを収容するコウモリ爆弾キャニスター
種類 爆弾
原開発国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
運用史
配備期間 使用実績なし
配備先 USA
関連戦争・紛争 第二次世界大戦
開発史
開発者 ルイス・フィーザー
開発期間 1942年1月
諸元
重量 123 kg (270 lb)
全長 123 cm (48 in)

有効射程 32キロメートル (20 mi)
最大射程 64キロメートル (40 mi)
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コウモリ爆弾(コウモリばくだん、英語:Bat bomb)は、第二次世界大戦アメリカ合衆国によって開発された実験的な兵器である。

この兵器は、爆弾のような形をした千以上の区切りがされた箱で、各区画には時限式焼夷弾を付けられて冬眠させられたメキシコオヒキコウモリが収納され、夜明けに爆撃機から投下されたコウモリ爆弾は、降下中にパラシュートを展開し、半径20-40マイルの軒下や屋根裏へ入り込むコウモリを解放するようになっていた。

この焼夷弾の意図は、当時の敵国であった日本の都市の大部分が木と紙によって建てられていたことから、広範囲の通常では攻撃できない場所に火災を引き起こすことであった。

概要[編集]

Tadarida brasiliensis:メキシコオヒキコウモリ

コウモリ爆弾は、エレノア・ルーズベルト大統領夫人の友人で、ペンシルバニア州で歯科医をしていたLytle S. Adams医師のアイデアであった[1]。Adams医師は、1942年1月にホワイトハウスにアイデアを提出した。その後、動物学者のドナルド・グリフィン英語版の助言を受けて、フランクリン・ルーズベルト大統領は計画を承認した[2] [3]

この計画では、工業地帯が広く分散している日本の都市にコウモリ爆弾を投下することが計画されていた。コウモリは比較的高い場所から放出されることから遠くまで展開し、明け方には街中の建物に隠れることになる。そして、組み込まれたタイマーが爆弾を発火させ、広範囲に火災や混乱を引き起こすことを意図していた。

アメリカは、4つの生物学的な要因から第二次世界大戦中にコウモリ爆弾を開発することを決定した。まず第一に、米国内にはコウモリが生息する洞窟が大量にあったこと。第二に、コウモリが自分の体重以上の荷物を運べること。これは耐荷重試験も行われ確認された。第三は、冬眠中は食事などのメンテナンスが必要ないこと。最後に第四の要因は、コウモリは夜行性で、明るくなると隠れる場所を探して休むという習性である。

プロジェクトの詳細[編集]

1943年5月15日、実験的なコウモリ爆弾から逃げ出したコウモリが、ニューメキシコのカールズバッド補助飛行場空軍基地に火災を起こした時の写真

1943年3月までに適切な種が選択された。このプロジェクトには、ナパーム弾の発明者であるルイス・フィーザーが、コウモリに運ばせる17gと28gの焼夷弾の設計を行った。40匹のコウモリトレイを26段積みにする爆弾の外装に似たコウモリ爆弾用コンテナが設計された。アラスカから発進したB-24爆撃機10機は、大阪湾の工業地帯に100個のコンテナを投下し、104万匹のコウモリ爆弾を発火させられると考えられていた。

さまざまな運用上の問題に答える一連のテストが実施された。そんな中、1943年5月15日に、実験中に逃げ出した武装したコウモリがニューメキシコカールズバッド近郊のカールズバッド補助飛行場空軍基地の施設を炎上させる事故が発生した。

この挫折後、プロジェクトは1943年8月に海軍に任命され、Project X-Rayと改名され、12月に海兵隊に譲渡された。海兵隊は、日本家屋のモックアップ日本村でテストを行い上々の結果を確認した。これらのオブザーバーも好意的な意見を残している。

しかし、より多くのテストが1944年の夏に予定されていたが、1945年中頃まで戦闘準備が整っていない可能性があると聞き、アーネスト・キング海軍元帥はこのプログラムをキャンセルした。戦闘準備が整うまで、200万ドルがプロジェクトに費やされると推定された。コウモリ爆弾の開発はあまりにも開発が遅いと考えられ、原子爆弾プロジェクト(マンハッタン計画)との開発レースで追い抜かれた。

悪名高い「コウモリによる侵略」プロジェクトは、その後、ウィリアム・ドノバン将軍がこの計画を「Die Fledermaus Farce」(こうもり喜劇場)とみなすよう命令された戦略諜報局の調査開発ディレクターStanley P. Lovell博士によって紹介された[4]。Lovellはまた、試験中にコウモリが石のように地面に落ちていたことも述べている[5]

文化的な影響[編集]

ゲームや小説などに、度々コウモリを使った爆弾のアイデアが使われている。

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ Madrigal, Alexis C. (2011年4月14日). “Old, Weird Tech: The Bat Bombs of World War II”. The Atlantic. https://www.theatlantic.com/technology/archive/2011/04/old-weird-tech-the-bat-bombs-of-world-war-ii/237267/ 2014年1月31日閲覧。 
  2. ^ Drumm, Patrick; Christopher Ovre (2011年4月). “A batman to the rescue”. Monitor on Psychology 42 (4): 24. http://www.apa.org/monitor/2011/04/batman.aspx 2013年10月31日閲覧。. 
  3. ^ The Bat Bombers C. V. Glines, Air Force Magazine: Journal of the Airforce Association, October 1990, Vol. 73, No. 10. Retrieved 1 October 2006.
  4. ^ Lovell, Stanley P. Of Spies & Stratagems. Englewood Cliffs, N.J.: Prentice-Hall, 1963, p. 63.
  5. ^ Waller, Douglas C. Wild Bill Donovan: The Spymaster Who Created the OSS and Modern American Espionage. New York: Free Press, 2011, p. 104.

外部リンク[編集]