ゲルセミウム・エレガンス

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ゲルセミウム・エレガンス
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 Core eudicots
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : 真正キク類I Euasterids I
: リンドウ目 Gentianales
: ゲルセミウム科 Gelsemiaceae
: ゲルセミウム属 Gelsemium
: ゲルセミウム・エレガンス G. elegans
学名
Gelsemium elegans
Benth.[1][2]
和名
冶葛
英名
Chinese Gelsemium

ゲルセミウム・エレガンス学名: Gelsemium elegans)は、ゲルセミウム科またはマチン科ゲルセミウム属つる性常緑低木。別名は冶葛(やかつ)、鉤吻、断腸草[2]、胡曼藤(草)[2]、野葛[2]、毒根、黄藤、大茶薬(藤)[2]、除辛、爛腸草[2]、ランゴン、シュア・ノーツァ。

形態・生態[編集]

常緑の蔓性樹木で、長さは3 m から12 m になる[2]黄色である。は革質で対生し、光沢を持ち厚みがある。形は楕円形または狭卵状披針形[2]花弁は黄色で期は5月から11月[2]果実蒴果で2筋の縦線をもち、熟すとこれに沿って裂ける。種子は腎形または楕円形。[2]

分布[編集]

原産は東南アジアから中国南部[2] で、この付近に自生する。日当たりの良い山の斜面、道端の草むら、低木の茂み、雑木林を好み、海抜 500-2,000 m [2]の地域に分布する。

人間との関わり[編集]

世界最強の植物を持っているといわれるほどの猛毒植物。有毒成分はゲルセミン英語版コウミン (koumine)、ゲルセミシン (gelsemicine)、ゲルセヴェリン (gelseverine)、ゲルセジン (gelsedine)、フマンテニリン (humantenirine) などのアルカロイド。毒部位は全草で、もっとも毒の強い部位は若芽である。植物体のどの部分を食したかによって中毒症状の出る速さが違い、新鮮な若葉・根の煎汁・葉の乾燥粉末を摂取した場合は速く、根本体では遅いという。平均すれば1時間前後となる。消化管から最もよく吸収される。最もポピュラーな中毒症状は呼吸麻痺であるが、これはゲルセミウム・エレガンスの毒が延髄呼吸中枢を麻痺させることに起因する。心拍ははじめ緩慢だが、のち速くなる。ほかに、眩暈、嘔吐、口腔・咽頭の灼熱感、流涎、腹痛、下痢、筋弛緩、呼吸筋周囲の神経麻痺、視力減退、瞳孔散大、呼吸の浅深が不規則になる(これが副次的にアシドーシスを引き起こす場合も)、嗜睡、全身痙攣、後弓反張、運動失調、昏迷などがある。

漢方医の方面では根を水洗いして乾燥させたものを「鉤吻」と呼び、喘息治療や解熱、鎮痛などに用いる。しかし、あまりに毒性が強いため、『本草綱目』をはじめ数多の医学書には、「内服は厳禁」と記されている。

正倉院宝物の中にも冶葛が残されている。冶葛壷[3]に32斤(16kg)収められていたが、記録によればかなり使われた形跡がある(用途は不明)という(現存するのは390g)。1996年千葉大学薬学部の相見則郎教授が依頼を受けて提供された2.8gの冶葛を分析したところ、1200年以上経っていたにもかかわらず、ゲルセミン、コウミン、ゲルセビリン、センペルビリン (sempervirine) の計4種のゲルセミウムアルカロイドが検出され、冶葛がゲルセミウム・エレガンスであることが証明された[4]。正倉院の「冶葛」は、文献に記録された冶葛としては「唯一現存するもの」である[5]

注と出典[編集]

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  1. ^ International Organization for Plant Information (IOPI), “Plant Name Search Results” (HTML), International Plant Names Index, http://www.ipni.org/ipni/idPlantNameSearch.do?id=546348-1 2016年4月18日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h i j k l 中国科学院中国植物志編輯委員会, ed (1992). “钩吻 Gelsemium elegans”. 中国植物志. 61. 科学出版社. pp. 251-253. http://frps.eflora.cn/frps/Gelsemium%20elegans 2016年4月18日閲覧。. 
  3. ^ 正倉院. “冶葛壷(やかつのつぼ)”. 宮内庁. 2017年11月8日閲覧。
  4. ^ 相見則郎「正倉院の「冶葛」(やかつ)」、『化学と教育』第48巻第2号、日本化学会2000年、 103-105頁、 ISSN 0386-2151NAID 110008591907
  5. ^ 『図説正倉院薬物』 宮内庁正倉院事務所編、柴田承二監修、中央公論新社2000年[要ページ番号]ISBN 4-12-002845-3

関連項目[編集]

外部リンク[編集]