ウェージャーの海戦

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ウェージャーの海戦
Wager's Action off Cartagena, 28 May 1708.jpg
カルタヘナ沖の海戦、国立海事博物館英語版所蔵。
戦争スペイン継承戦争
年月日1708年6月8日
場所カルタヘナ・デ・インディアス
結果:グレートブリテン王国の勝利
交戦勢力
グレートブリテン王国の旗 グレートブリテン王国 フランス王国の旗 フランス王国
スペイン スペイン王国
指導者・指揮官
グレートブリテン王国の旗 チャールズ・ウェージャー英語版 スペイン ホセ・フェルナンデス・デ・サンティーリャン(José Fernández de Santillán
フランス王国の旗 ジャン=バティスト・デュ・カッセ英語版
戦力
戦列艦5隻
火船1隻[1]
ガレオン船3隻
商船14隻[1]
損害
ガレオン船1隻沈没、1隻拿捕、1隻座礁[1]

ウェージャーの海戦(ウェージャーのかいせん、英語: Wager's Action)はスペイン継承戦争中の1708年6月8日に行われた海戦。チャールズ・ウェージャー英語版率いるイギリス艦隊がスペイン財宝艦隊に攻撃して勝利した。

背景[編集]

チャールズ・ウェージャーの肖像画、トマス・ギブソン英語版作、1731年。

1708年春、チャールズ・ウェージャーは下記のイギリス艦4隻を率いてカリブ海へ遠征した。

  • エクスペディション英語版、70門艦、ヘンリー・ロング艦長(Henry Long
  • キングストン英語版、60門艦、サイモン(ティモシー)・ブリッジス艦長(Simon (Timothy) Bridges
  • ポートランド英語版、50門艦、エドワード・ウィンザー艦長(Edward Windsor
  • ヴァルチャー(Vulture)、8門艦、火船、シーザー・ブルックス艦長(Caesar Brooks

4月、イギリス艦隊はカルタヘナ・デ・インディアスから約30マイルのロサリオ諸島英語版のペケーニャ・バル島(Pequeña Barú、「小バル」)で補給した。スペイン当局はイギリス艦隊に気づき、カルタヘナ総督はポルトベロのスペイン艦隊に警告を発令した。

財宝艦隊の指揮官ホセ・フェルナンデス・デ・サンティーリャンは時期がハリケーン・シーズン英語版に近く、艦隊の残りとジャン=バティスト・デュ・カッセ英語版率いる護衛艦隊がハバナで待っている上に合流を待たずに出発すると脅されたためもう待てないとして5月28日にポルトベロからカルタヘナに航行する決定を下した。

スペイン艦隊は商船14隻、軽く武装したハルク船1隻、そして護衛艦3隻で構成されており、護衛艦は下記の通りである[1]

  • サン・ホセ英語版、64門艦、サンティーリャン艦長
  • サン・ホアキン(San Joaquín)、64門艦、ビリャヌエバ艦長(Villanueva
  • サンタ・クルス(Santa Cruz)、44門艦、デ・ラ・ローサ艦長(de la Rosa

戦闘[編集]

スペイン艦隊は6月7日の夜にバル島英語版に到着して錨を下ろした。翌日には風もあまり吹かず、午後3時頃にウェージャーの艦隊が接近してきた。スペイン艦隊は守備の陣形をとったが、イギリス艦隊は最も大型な船が財宝を最も多く積んでいることを知っていたため、最も大型な船へ攻撃を集中させた。

午後5時頃、キングストンはサン・ホアキンを攻撃したが、2時間の戦闘ののちサン・ホアキンはコンセプション(Concepción)の助力を借りて夜に紛れて逃走した。

エクスペディションはサン・ホセを攻撃、さらに接近して移乗攻撃をしようとした。1時間半の激しい戦闘を経て午後7時ごろ、両艦の距離がわずか60メートルだったところ、サン・ホセが突如爆発して、財宝と船員もろとも沈没した。その乗員600人のうち、生還したのは11人だけだった。

夜はすでに訪れていたが、満月だったためウェージャーは午前2時にサンタ・クルスを捕捉することに成功した。サンタ・クルスは短期間の戦闘を経て拿捕されたが、サンタ・クルスには財宝は載せておらず、レアル・デ・オチョ英語版を載せた箱18個と銀のインゴット14個だけであり、いずれも公的なものではなく私有財産のようだった。

黎明にはサン・ホアキンが発見され、ウェージャーはキングストンとポートランドに追撃を命じた。しかし、数回の一斉射撃の後、サン・ホアキンがカルタヘナ港への逃走に成功、イギリス艦隊はカルタヘナ港の砲台からの攻撃を冒してまで追撃しなかった。

残りの艦隊のうち、コンセプションがイギリス艦隊に追い詰められてバル島に座礁した以外はカルタヘナに無事到着した。

結果[編集]

イギリス艦隊はスペイン船3隻を破壊、スペイン艦隊が金と銀をヨーロッパに運んでフランスとスペインに軍資金を与えることを防いだ。チャールズ・ウェージャーは金持ちになったが、もしサン・ホアキンを拿捕できた場合にはさらに大金を手に入れられたため彼は失望した。この失敗によりブリッジスとウィンザー両艦長は軍法会議にかけられた。

その後[編集]

サン・ホセはそのまま財宝とともに海に沈み、2015年に発見されたが打ち上げられたことはなかった。サン・ホセに載せられた財宝は逃走に成功したサン・ホアキンと同程度の700万スペイン・ペソと言われ、サン・ホセも「難破船の聖杯」と呼ばれた[2]

「シー・サーチ・アルマダ」(Sea Search Armada (SSA))という名前で操業していた、グロッカ・モラ・カンパニー(Glocca Mora Co.)というアメリカ会社の投資者は1981年にコロンビア沖でサン・ホセを発見したと主張、コロンビア政府に財宝の65パーセントを譲る代わりにサルベージの操業権を求めたが、コロンビア政府に拒否された[3]。その後、コロンビア議会は財宝が国有であるとし、SSAには発見者として5パーセントを与えるが、そこから45パーセントの税金をかけるとした。SSAは1989年にコロンビアの裁判所でコロンビアを訴え[3]、コロンビア最高裁判所は2007年7月に財宝がコロンビア政府と発見者の間で等分されるとの判決を出した。SSAはアメリカの裁判所でも訴えたが、2011年と2015年の訴えは技術的な問題により却下され、最終的にはアメリカの裁判所がサン・ホセの所有者はコロンビア政府であるとの判決を下した[3][4][5]。コロンビア政府はサン・ホセがSSAの主張した位置にあるかを確認していない[3]

2015年12月5日、コロンビア大統領フアン・マヌエル・サントスコロンビア海軍が11月27日にサン・ホセを発見したと公表した[5][6][7][8]。コロンビア海軍はREMUS英語版という自律型無人潜水機を使用してサン・ホセを発見した[9]。難破船の正体もすぐに判明、コロンビアの海洋考古学者は難破船の写真から[10]船体にある銅製の大砲にイルカが刻まれているのを見つけ、難破船がサン・ホセであると同定した。コロンビアはサン・ホセを海底にある世襲財産であると主張、サン・ホセの位置を国家機密と定めた[11]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d Fernández Duro, Cesáreo (1898). Armada española desde la unión de los reinos de Castilla y de León, tomo VI. Est. tipográfico "Sucesores de Rivadeneyra". p. 89. https://archive.org/details/armadaespaolade00durogoog. 
  2. ^ The Most Valuable Shipwreck: The San Jose. Treasure Expeditions.
  3. ^ a b c d Spilman, Rick (2012年2月29日). “Galleon San Jose, the 'Holy Grail of Ship Wrecks'”. The Old Salt Blog. 2015年12月8日閲覧。
  4. ^ Martinez, Michael; Prifti, Alba (2015年12月5日). “Colombia says it found Spanish galleon; U.S. firm claims half of treasure”. CNN News. http://www.cnn.com/2015/12/05/americas/colombia-spanish-galleon-san-jose-found/ 2015年12月8日閲覧。 
  5. ^ a b Reuters (2015年12月5日). “Spanish galleon with rumoured £1bn treasure hoard found, says Colombia's president”. The Guardian. https://www.theguardian.com/world/2015/dec/05/spanish-galleon-with-rumoured-1bn-treasure-hoard-found-says-colombias-president 2015年12月5日閲覧。 
  6. ^ San Jose galleon shipwreck with £1 billion treasure found off Colombia, says President Juan Manuel Santos”. The Independedt. 2015年12月5日閲覧。
  7. ^ Colombia treasure-laden San Jose galleon 'is found'”. BBC News (2015年12月5日). 2015年12月5日閲覧。
  8. ^ Spanish galleon may contain biggest treasure haul ever found on seabed, The Guardian
  9. ^ Hallazgo del Galeón San José - 5 de diciembre de 2015”. Presidency of Colombia. 2015年12月6日閲覧。
  10. ^ “found off the coast of Cartagena de Indias San Jose, a Spanish galleon sunk in 1708”. The Spanish. (2015年12月5日). http://www.elespanol.com/cultura/20151205/84491554_0.html 
  11. ^ “Holy grail of shipwrecks found off Colombia”. The Associated Press (CBS News). (2015年12月6日). http://www.cbsnews.com/news/holy-grail-of-shipwrecks-found-off-colombia/ 2015年12月9日閲覧。 

外部リンク[編集]