アジ科

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アジ科
カッポレ Caranx lugubris
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: アジ科 Carangidae
学名
Carangidae Rafinesque1815

アジ科 Carangidae は、スズキ目の下位分類群の一つ。和名にあるアジ類の他にも、ブリコバンアジイケカツオ等、約30属150種が所属する。全てが海生で、遊泳力の高い中型から大型の肉食魚である。

形態[編集]

全長は数十cmのものから1mを超えるものまで種類によって異なる。肛門と臀鰭の間に2本の遊離棘があることで他のスズキ亜目魚類と区別される。

体型は広葉樹の葉のように側扁し体高が高いものが多いが、ブリ属やムロアジ属のように身が厚く紡錘形に近いものもいる。側扁したものは沿岸性、紡錘形は回遊性のものが多い。マアジは同種内でこの2種類の体型が見られる。

鰭は小さいが尾鰭は大きく、V字形に二叉している。ただし属によっては第二背鰭と臀鰭の前半部が長く伸びるものがいる。特にイトヒキアジ属の幼魚は背鰭と臀鰭の鰭条が糸状に伸び、体よりも遥かに長くなって後ろにたなびく状態となる。またムロアジ属、オニアジツムブリでは第二背鰭-尾鰭-臀鰭の間に小離鰭をもつ。一般に遊泳力は高く、かなりの速度で泳ぐ。回遊性のブリは1日に90km泳ぎ続けることもできる[1][2][3]

生態[編集]

全世界の熱帯・温帯海域に分布し、日本近海でも南ほど種類数が多い。沿岸の浅海、特に熱帯海域のサンゴ礁周辺で種類が豊富だが、マアジ(回遊型)、ブリ、ヒラマサ等のように群れで沖合いを回遊するものもいる。成魚は全て海生だが、ギンガメアジ属イケカツオ属の幼魚は河口等の汽水域に侵入することがある。インド太平洋産のギンガメアジ Caranx sexfasciatus では純淡水域まで進入し、小型の淡水魚を捕食するのが観察されている[2][4]

食性は肉食性で、小魚、甲殻類貝類頭足類多毛類等の小動物を捕食する。マアジ等は鰓耙が発達し、海中に浮遊するプランクトン濾過摂食することもできる。またカイワリシマアジ等は遊泳するネクトンを追って捕食する他、海底の砂泥を掘ってベントスも捕食する。

繁殖期は種類や地域個体群によって異なる。卵は分離浮遊卵で、親の保護を受けずプランクトンとして浮遊しながら発生する。種類によっては、幼魚が汽水域や純淡水域に侵入するもの(先述)、クラゲや他の魚に寄り添って泳ぐもの等がいる[2]

人との関係[編集]

ほぼ全ての種類が食用として利用され、沿岸各地で漁獲される。日本におけるマアジやブリのように地域の文化に根ざした大衆魚、或いはシマアジやヒラマサのように高級食材として扱われるものも多い。ただしヒラマサやギンガメアジ属等ではシガテラ中毒も報告されており、サンゴ礁域の大型個体では注意が必要である[2][5]

食用以外では、イトヒキアジの幼魚が背鰭と臀鰭の鰭条が糸状に伸び、体も銀色に光るため、観賞魚として飼育されることがある。このほか大型種であるロウニンアジなどはゲームフィッシュとしての対象魚として人気が高い。

分類[編集]

コバンアジ亜科 Trachinotinae(21種)、イケカツオ亜科 Scomberoidinae(10種)、ブリモドキ亜科 Naucratinae(13種)、アジ亜科 Caranginae(102種)の4亜科に分けられる[6]。アジ亜科は側線上、特に体の後半部に稜鱗(りょうりん : 俗称ゼイゴ、ゼンゴとも)という大き目の硬い突起のあるが並ぶが、他の3亜科では稜鱗が発達しない[1][2][7][8]

系統[編集]

分子系統解析では、アジ亜科ブリモドキ亜科イケカツオ亜科単系統群となった。アジ科全体は側系統群となり、コバンザメ科シイラ科スギを内部に含むという結果が得られている[9]Campogramma glaycos は解析に含まれていないが、形態学的特徴からブリ属に近縁だと考えられる[10]

コバンザメ科

スギ

シイラ科

Lichia amia

コバンアジ属

イケカツオ亜科

スジイケガツオ

オオクチアジ属

イケカツオ属

ブリモドキ亜科

ツムブリ

アイブリ

ブリ属ブリモドキを含む)

アジ亜科

参考文献[編集]

  1. ^ a b 檜山義夫監修『野外観察図鑑4 魚』1985年初版・1998年改訂版 旺文社 ISBN 4010724242
  2. ^ a b c d e 岡村収・尼岡邦夫監修『山渓カラー名鑑 日本の海水魚』(アジ科解説 : 木村清志)1997年 ISBN 4635090272
  3. ^ 岩井保『魚学入門』2005年 恒星社厚生閣 ISBN 4769910126
  4. ^ 川那部浩哉・水野信彦・細谷和海編『山渓カラー名鑑 改訂版 日本の淡水魚』(ギンガメアジ解説 : 木下泉)1989年初版・2005年第3版 ISBN 4635090213
  5. ^ 蒲原稔治著・岡村収補訂『エコロン自然シリーズ 魚』1966年初版・1996年改訂 保育社 ISBN 4586321091
  6. ^ Carangidae in Fishbase specieslist”. 2015年4月15日閲覧。
  7. ^ FAMILY Details for Carangidae - Froese, R. and D. Pauly. Editors. 2009. FishBase. World Wide Web electronic publication. version (11/2009)
  8. ^ ITIS Standard Report Page: Carangidae
  9. ^ Santini, Francesco, and Giorgio Carnevale (2015). “First multilocus and densely sampled timetree of trevallies, pompanos and allies (Carangoidei, Percomorpha) suggests a Cretaceous origin and Eocene radiation of a major clade of piscivores”. Molecular phylogenetics and evolution 83: 33-39. doi:10.1016/j.ympev.2014.10.018. 
  10. ^ Smith-Vaniz, William F., and Jon C. Staiger (1973.), Comparative Revision of Scomberoides, Oligoplites, Parona and Hypacanthus: With Comments on the Phylogenetic Position of Campogramma (Pisces: Carangidae)