「静止エネルギー」の版間の差分
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'''静止エネルギー'''(せいしエネルギー、{{Lang-en-short|rest energy}}<ref>{{Cite book|和書 |
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|author = [[文部省]] |
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|coauthors = [[日本物理学会]]編 |
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|title = [[学術用語集]] 物理学編 |
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|url = http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi |
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|year = 1990 |
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|publisher = [[培風館]] |
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|isbn = 4-563-02195-4 |
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で表される静止エネルギー <math>E_0\,</math> を持つ。[[運動エネルギー]]や[[位置エネルギー|ポテンシャルエネルギー]]とは異なるもので、質量が存在するだけで生じる。 |
で表される静止エネルギー <math>E_0\,</math> を持つ。[[運動エネルギー]]や[[位置エネルギー|ポテンシャルエネルギー]]とは異なるもので、質量が存在するだけで生じる。 |
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この式は、質量を持つ物体には膨大なエネルギーが内在していることを示している。そして、実際に質量をエネルギーに変換することは可能である。例えば、[[電子]]と[[陽電子]]を衝突させると、これらの粒子が[[対消滅]]し、元の質量に応じたエネルギーが発生する。また、[[原子核反応]]でエネルギーが発生する場合には、反応後の質量はわずかに減少するし([[質量欠損]])、一般の[[化学反応]]でも、非常にわずかではあるが質量が変化する。 |
この式は、質量を持つ物体には膨大なエネルギーが内在していることを示している。そして、実際に質量をエネルギーに変換することは可能である。例えば、[[電子]]と[[陽電子]]を衝突させると、これらの粒子が[[対消滅]]し、元の質量に応じたエネルギーが発生する。また、[[原子核反応]]でエネルギーが発生する場合には、反応後の質量はわずかに減少するし([[質量欠損]])、一般の[[化学反応]]でも、非常にわずかではあるが質量が変化する。 |
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==相対論におけるエネルギー== |
== 相対論におけるエネルギー == |
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特殊相対性理論によれば、運動する物体のエネルギーは次の式で表される。 |
特殊相対性理論によれば、運動する物体のエネルギーは次の式で表される。 |
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ここで、<math>E\,</math> はエネルギー、<math>m\,</math> は質量、<math>\boldsymbol{p}</math> は[[運動量]]、<math>c\,</math> は光速である。また、運動量 <math>\boldsymbol{p}</math> と速度 <math>\boldsymbol{v}</math> の関係は次の式で表される。 |
ここで、<math>E\,</math> はエネルギー、<math>m\,</math> は質量、<math>\boldsymbol{p}</math> は[[運動量]]、<math>c\,</math> は光速である。また、運動量 <math>\boldsymbol{p}</math> と速度 <math>\boldsymbol{v}</math> の関係は次の式で表される。 |
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これらから、エネルギーと速度の関係は次の様になる。 |
これらから、エネルギーと速度の関係は次の様になる。 |
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この式を[[テイラー展開|テーラー展開]]すると次の様になる。 |
この式を[[テイラー展開|テーラー展開]]すると次の様になる。 |
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この式は、速度 <math>\boldsymbol{v}</math> が光速に対して充分小さい (<math>|\boldsymbol{v}|^2 \ll c^2</math>) 場合は、次のようになる。 |
この式は、速度 <math>\boldsymbol{v}</math> が光速に対して充分小さい (<math>|\boldsymbol{v}|^2 \ll c^2</math>) 場合は、次のようになる。 |
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<math>mc^2\,</math> は最初に述べた静止エネルギーであるので、結局式は次のようになる。 |
<math>mc^2\,</math> は最初に述べた静止エネルギーであるので、結局式は次のようになる。 |
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つまり、速度が小さい場合は、質量 <math>m\,</math> の物体が速度 <math>\boldsymbol{v}</math> で動いている場合の運動エネルギーが <math>\frac{1}{2}m|\boldsymbol{v}|^2</math> になるという[[ニュートン力学]]と同じ結論になる。 |
つまり、速度が小さい場合は、質量 <math>m\,</math> の物体が速度 <math>\boldsymbol{v}</math> で動いている場合の運動エネルギーが <math>\frac{1}{2}m|\boldsymbol{v}|^2</math> になるという[[ニュートン力学]]と同じ結論になる。 |
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なお、式1を導出するのに、<math>E_0 = mc^{2}\,</math> の <math>m\,</math> に相対論的質量 |
なお、式1を導出するのに、<math>E_0 = mc^{2}\,</math> の <math>m\,</math> に相対論的質量 |
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> アインシュタイン自身はこの二つの質量をどう考えていたのでしょうか? |
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>1948年6月19日付けでLincoln Barnettという知人に送った手紙に、 |
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>体の運動量とエネルギーの表式を話に出す方がよいのです。」 |
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とあり、また、 |
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1989年にロシア人物理学者 Lev B. Okun は、普通に相対論的質量と呼ばれるM は使わないようにしようという提案を初めてしました。 |
1989年にロシア人物理学者 Lev B. Okun は、普通に相対論的質量と呼ばれるM は使わないようにしようという提案を初めてしました。 --> |
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2012年5月9日 (水) 06:16時点における版
静止エネルギー(せいしエネルギー、英: rest energy[1])は、アインシュタインの特殊相対性理論によって示された、質量が存在することにより生じるエネルギー。質量 の物体は、光速 を用いて、
で表される静止エネルギー を持つ。運動エネルギーやポテンシャルエネルギーとは異なるもので、質量が存在するだけで生じる。
この式は、質量を持つ物体には膨大なエネルギーが内在していることを示している。そして、実際に質量をエネルギーに変換することは可能である。例えば、電子と陽電子を衝突させると、これらの粒子が対消滅し、元の質量に応じたエネルギーが発生する。また、原子核反応でエネルギーが発生する場合には、反応後の質量はわずかに減少するし(質量欠損)、一般の化学反応でも、非常にわずかではあるが質量が変化する。
相対論におけるエネルギー
特殊相対性理論によれば、運動する物体のエネルギーは次の式で表される。
ここで、 はエネルギー、 は質量、 は運動量、 は光速である。また、運動量 と速度 の関係は次の式で表される。
これらから、エネルギーと速度の関係は次の様になる。
- …(式1)
この式をテーラー展開すると次の様になる。
この式は、速度 が光速に対して充分小さい () 場合は、次のようになる。
は最初に述べた静止エネルギーであるので、結局式は次のようになる。
つまり、速度が小さい場合は、質量 の物体が速度 で動いている場合の運動エネルギーが になるというニュートン力学と同じ結論になる。
なお、式1を導出するのに、 の に相対論的質量
を代入するという説明がなされることがあるが、正しい説明とは言えない。まず、相対論的質量という概念自体にあまり意味がない(相対論的質量を参照)。そして、 という式は、静止エネルギーと質量の関係を表している式であるから、相対論的質量という質量とは異なるものを代入して、運動している物体のエネルギーが得られるかどうかは定かではない。
脚注
関連項目