駆潜艇

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駆潜艇(くせんてい)とは潜水艦の駆逐を主任務とし、局地での警備、艦船の護衛に当たる小型艦艇である。おおむね基準排水量は1,000トン以下で、100トン以下の小艇も多い。沿岸部・近海部での行動を想定した航洋性を持ち、対潜戦用の兵装・センサーを主とした装備を備える。

第一次世界大戦時、潜水艦が多数投入されるようになると、各国でこれを制圧するための軽快な運動性と武装を持った様々な艦艇が建造された。これらが駆潜艇の始祖と言える。このころの代表的な駆潜艇がアメリカ海軍の建造したイーグル型哨戒艇である。第二次世界大戦の際も、各国で多数の駆潜艇が整備され、実戦に投入された。

両大戦では、多くの漁船が徴用・改造され、特設駆潜艇として用いられたほか、第二次世界大戦では、日本海軍ととイギリス海軍は、漁船型の駆潜特務艇を多数建造した。これは遠洋漁船が、量産に適し小型の割りに航洋性に優れているためである。

第二次世界大戦後、潜水艦の高性能化が進むに連れ、対潜艦艇も高性能のセンサーや兵装を備えるために艦が大型化し、対潜任務に特化した小型艇としての駆潜艇は廃れた。しかし、高速戦闘艇(FAC)やミサイル艇の中には、対潜兵装を備え、かつての駆潜艇的任務に就くものもある。

ソ連では戦後、駆潜艇はフリゲートクラスの警備艦小型対潜艦駆逐艦巡洋艦クラスの大型対潜艦に発展した。

日本の駆潜艇

第二次世界大戦期に大日本帝国海軍では駆潜艇を大量に建造した。当時の日本海軍の駆潜艇は対潜センサーとして水中探信儀水中聴音器を備え、攻撃兵装として爆雷を装備していた。駆潜艇は基本的に港湾防備や中国航路などの近海航路護衛用であったが、対潜護衛艇の不足を補うために南方向けの船団護衛にも投入された。日本海軍では多くの木造漁船を徴用し、特設駆潜艇としたほか、自らも木造漁船を基本構造とした駆潜特務艇を建造した。

海上自衛隊は1980年代まで駆潜艇を保有していたが、小型で発展性が無い駆潜艇では、高性能化する原子力潜水艦への対応が困難と考えられ、現在では整備を取り止めている。

日本海軍が保有した第二次世界大戦時の駆潜艇

海上自衛隊の駆潜艇