自然数 n の階乗(かいじょう、英語: factorial)をn!で表す。階乗とは、1 から n までの自然数の総乗
のことを言い、
例えば、6!=6・5・4・3・2・1=720 である。階乗数は n が大きくなるにつれて驚くほど大きな数になるので記号として「!」が使われるようになったという。
また、0!=1 と約束する。これは、(n-1)! = n! / n であるから、0! = 1!/1 = 1 と考えられるため、あるいは、n! が異なる n 個のものを並べる順列の総数 nPn に一致し、0 個のものを並べる順列は「何も並べない」という一通りがあると考えられるため、などと解釈できる。
順列では、互いに異なるn個のものから n 個全部またはn-1 個を選んで線状に並べる方法はn!通りあり、互いに異なるn個のものから n 個全部を選んで円環状に並べる方法は(n-1)!通りある。
階乗数
ある非負整数の階乗である自然数を階乗数という。
0! = 1
1! = 1
2! = 2
3! = 6
4! = 24
5! = 120
6! = 720
7! = 5040
8! = 40320
9! = 362880
10! = 3628800
また階乗数の逆数の総和は
となり自然対数の底eに等しい。
組み合わせ
スターリングの近似公式
大きな数の階乗はスターリングの公式によって近似することができる。
例えば、
である。
拡張
Γ関数
階乗は、自然数を変数とする写像と考えることが出来るが、この定義域を実数に拡張したものにガンマ関数
がある。定義域を正の実数に制限すれば、これは自然数 n に対し、Γ(n+1) = n! を満たす実数値連続関数である。ガンマ関数はさらに負の整数を除く複素数の範囲にまで拡張される。
これを使って、非負整数以外の階乗を定義できる。たとえば、
なので、n! = n×(n - 1)! より、半整数に対する階乗は
であり、よって 3.5! は、
となる。なお、n > 1 ならば n! < (n + 1/2)! < (n+1)! である。
(n - 1)! = n! / n より、負数の階乗も考えられる。ただし負の整数の階乗は(0での除算になるため)定義できないが、形式的に
と表せる。
多重階乗
二重階乗は、自然数 n に対し、n が奇数なら 1 から n までの奇数の総乗、n が偶数なら 2 から n までの偶数の総乗である。これを n!! と書き、逆正弦関数 Arcsin x のテイラー展開などに用いられる。なお、0! = 1 と同様に、0!! = (-1)!! = 1 である。
あまり使用されないが、三重階乗はn!!!またはn!3であらわし、四重階乗はn!!!!またはn!4であらわす。
一般のm重階乗はn!mであらわす。n < m のとき、n!m = 1 である。
0!! = 1
1!! = 1
2!! = 2
3!! = 3
4!! = 8
5!! = 15
6!! = 48
7!! = 105
8!! = 384
9!! = 945
10!! = 3840
(2n)!! = 2nn!
階乗冪
自然数xの階乗は1からxまでの数の乗積であるが、xから1に向かってx個の数の積でもある。これを一般化して、x個ではなくn個の数の積としたもの、謂わば不完全な階乗が考えられる。それを普通の階乗と区別するために階乗冪(factorial power)という。階乗冪には下降階乗(falling factorial)と上昇階乗(rising factorial)とがある。
下降階乗はxから負の向きにn個の数の乗積である。
上昇階乗はxから正の向きにn個の数の乗積である。
定義から階乗冪はすべての複素数に対しても定義できる。その場合、階乗による表記はガンマ関数を用いて書き直す必要がある。
具体的には次のようになる[1][2]。
特に上記二式の右辺の式はxが負の整数の場合に特に有効[3]である。
上記の式から、下降階乗と上昇階乗の間に次の関係が成り立つことが分かる。
ポッホハマー記号
ポッホハマー記号(Pochhammer symbol)は上昇階乗を表す記号である。
ただし、下降階乗をで表し、上昇階乗をで表している文献もある[4]。
関連記事
脚注および出典
- ^ 右辺は反射公式による。
- ^ x=0の場合、階乗冪は当然0であるがガンマ関数による表記はx=0の場合もカバーしている。また、x<n のときの自然数xに対する下降階乗、および-x<n のときの負の整数xに対する上昇階乗も0になるが、それもカバーしている。
- ^ ガンマ関数は0および負の整数で極を持つため、中辺の式では定義できない。
- ^ Wolfram Mathworld: Pochhammer Symbol
外部リンク