解散 (議会)

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解散(かいさん)とは、議会制度において、総選挙を実施するために立法機関の一院の全議員の資格を失わせることをいう。一般的に立法機関にはそれぞれの任期が定められているが、解散はその任期が満了する前に行われる。そのような早期に解散する制度は多くの国や地域でもうけられている。

概要

近代的な議会制民主主義の成立以前、議会は君主の専権を制限するために設けられた機関であったため、時に君主と対立して統治が困難となった。状況打開の手段として、君主は議会解散の特権を有し、全議員の資格を喪失させて総選挙を行なわせることができた。上院は勅撰議会であることが多いため、解散は下院に限って行われた。解散後の総選挙によって招集された議会は直近の衆意を反映したものであり、君主といえども一定の尊重が必要とされた。

議院内閣制成立により政府が議会の多数勢力から選任されるようになると、解散は政府が議会の信任を失ったとき、あるいは議会が民意を反映していないと思われるときに、政府の助言に基づき元首によって行われることが通例となった。重要政策の可否について国論が二分されている場合など、民意を正しく政治に反映させるために、解散総選挙を行うことが望ましいとされるが、実際には政府与党の党利を斟酌して解散時期が決められることが多い。

なお、大統領制では政府が議会の信任に基づいて成立しているわけではないため、任期満了以外の議会解散は通常行われることがない。

各国の制度

日本

日本では、衆議院のみに解散があり、参議院には解散の制度がない。また、戦前の貴族院にも解散制度はなかった。なお、地方議会では議会による自主解散と住民の直接請求による解散制度とがあるが、実際に地方議会が解散した例はほとんどない。

オーストラリア

オーストラリアの下院は総督によりいつでも解散することができる。下院の任期は開会から3年間で、解散すればそれより早く選挙になる。一方上院は、総督により両院解散の規定が発動された時にのみ解散され、上院のみが解散されることはない。

総督は首相の助言のもとに解散しなければならないという慣習となっている。しかし1975年に上下院の対立により予算が成立せず、政府機能が危機に陥った際には、総選挙の早期実施のために、総督がゴフ・ホイットラム首相を罷免したことがある。

カナダ

カナダ議会では、下院(庶民院)は首相の助言のもとでカナダ総督がいつでも解散することができる。上院(元老院)は解散されない。政府(内閣)が議会により予算の否決あるいは不信任となった場合には、首相は辞任のほかに、総督に議会を解散するよう助言することもできる。下院は5年間の任期となり、任期が終了すると自動的に解散となる。

ドイツ

ドイツでは、ドイツ首相の信任投票が否決された場合のみに、下院が解散される。しかし、1982年にヘルムート・コール首相が、2005年にもゲアハルト・シュレーダー首相が、早期に選挙を行うために故意に議会に不信任にさせたことがある。

ニュージーランド

ニュージーランド議会(一院制)は任期3年で、普通は首相の助言のもとでニュージーランド総督がいつでも解散することができる。

タイ王国

タイの議会では、下院(サパープーテーンラーサドーン、人民代表院)は首相の助言のもとで国王がいつでも解散することができる。上院(ウッティサパー)は解散されない。下院が4年間の任期を満了した場合は、自動的に解散となる。

アイルランド

ウラクタス(アイルランド議会)は、首相(ティーショク)に対する不信任が決議された場合に、大統領により解散される。しかし大統領は、選挙せず野党の党首に組閣させるために解散を拒否する場合もある。

イギリス

イギリスの首相はいつでも国王に庶民院の解散を願い出ることができる。ただし総選挙から任期の5年を経過した場合は必ず解散されなければならない。任期はまず“Septennial Act 1715”で7年とされ、“1911年議会法”で5年に短縮された。