蚊取線香
蚊取線香(かとりせんこう)とは主にカ(蚊)を駆除する目的で、線香に除虫菊の有効成分(ピレトリン)や類似のピレスロイド系成分を練り込んだ燻煙式殺虫剤である。古くは蚊遣火(かやりび)とも呼ばれていた。
材料・薬効
原料は粕粉(除虫菊の地上部分を半年間乾燥させたもの)、タブ粉、でんぷん、ピレスロイド、染料など。粉末状、棒状、渦巻状などに成形される。渦巻き状のものでは、製品によって右巻きのものと左巻きのものとがある[要出典]。色は緑色がほとんど。一般には6~7時間燃焼するものが多いが、燃焼時間2~3時間程度の小巻の物やペット用などでは12時間程度燃焼するものもある。
使用するには先端に着火し、最初に出る炎を吹き消して燠(おき)の状態にする。このようにすると不完全燃焼によって煙が立ちのぼるようになる。この煙そのものに蚊を殺す効果があると思われがちだが、実際には燃焼部分の手前で高温により揮発する化学物質(ピレスロイド)に殺虫作用がある(煙と異なり目には見えず、周囲に拡散して殺虫効果を生じさせる)。現在は、化学的に合成したピレスロイドが主に使われている。除虫菊の代わりにレモングラスの成分などを使用した製品もあるが、そちらには忌避効果はあるものの殺虫効果はない。
産地
形状
初期には粉末状、棒状のものが製造されていたが粉末のものは扱いにくく、棒状のものは立てて使うために線香が倒れ火災が発生することも少なくなかった。最大の欠点は、一度の点火で長時間にわたって燃焼させることが、線香の形状から難しかったことである。棒状線香を単純に伸ばしただけでは燃焼中に倒れやすくなるので延長にも限度があった。
現在一般的に普及している渦巻き形の蚊取線香のデザインは、上山英一郎(大日本除虫菊株式会社の創業者)の妻・上山ゆきの発案とされる(倉の中でとぐろを巻くヘビを見て驚き、夫の元に駆けつけ告げたのが発想の元になったという)。このデザインにすると、燃焼時間が長くなり、かつ嵩張らない。例えば、大日本除虫菊の製品では渦巻きを解きほぐすと全長は75cmに達し、一度の点火で長時間使用できる。また、寝かせた状態で使うので従来の形状よりも安全に取り扱えるようになった。
なお、考案されてから長きにわたり、人の手によって渦巻き状に成形してから固める生産方式を採っていたが、1955年ころから自動化のため現在の渦巻き型の打ち抜き機械による成形に移行した。
使用法
蚊取線香は皿・台などに載せて使うのが一般的であるが、こういった皿・台には形状に工夫を凝らしたものも多い。代表的なものではブタを模した陶器の線香入れがあり、蚊遣り豚などと呼ばれて夏の風物詩となっている。またキャンプや野外作業など、屋外での利用を想定した吊り下げ方式のものもある。これらの台やホルダーに類する用具を用いることで、燃焼を伴う製品ながら安全に使用できる。
日本で発明されたものであるが、その他の国々でも生産・輸出されている。アメリカでは Mosquito Coil として売られており、電化が遅れている地区でも火種さえあれば使用できるので、蚊をはじめとする羽虫の駆除を要する東南アジアを中心に普及し、蚊帳と共にマラリア予防に貢献している。外国産のものには四角形や六角形のものもある。
蚊取線香の歴史
- 1885年(明治18年) 除虫菊がアメリカから伝来し、和歌山県で栽培される。
- 1888年(明治21年) 粉末状の蚊取線香が作られる。
- 1890年(明治23年) 棒状の蚊取線香が作られる。
- 1895年(明治28年) 渦巻き型の蚊取線香が作られる。
- 1955年(昭和30年)頃 合成ピレスロイドの実用化が始まる[1]。
時代考証の間違いとして、まれに江戸時代を舞台とする時代劇で蚊取り線香を使用しているシーンがある。
主な蚊取り線香メーカー
など
関連項目
外部リンク
- 和歌山県除虫菊工業協同組合
- 「蚊取線香」で世界に躍進 安住伊三郎(鳥取県広報課メルマガ編集部 とっとり雑学本舗)
- 「蚊取り線香のできるまで」 - 和歌山県有田市にある金鳥の紀州工場を取材した動画(全14分) 2000年 サイエンスチャンネル