神戸電鉄6500系電車

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神戸電鉄6500系電車
6513F(2022年6月11日 木幡駅付近)
基本情報
運用者 神戸電鉄
製造所 川崎重工業車両カンパニー
製造年 2016年 -
製造数 7編成21両
運用開始 2016年5月21日
主要諸元
編成 3両編成(2Ⅿc先頭車両 1T中間車両)
軌間 1,067 mm
電気方式 直流1,500V
架空電車線方式
最高運転速度 80km/h
設計最高速度 100 km/h
起動加速度 3.0 km/h/s
減速度(常用) 3.3 km/h/s
編成定員 354名
全長 18,290 mm (先頭車)
18,140 mm(中間車)
全幅 2,700 mm
全高 4,030 mm
車体 ステンレス
主電動機 全閉式かご形三相誘導電動機
主電動機出力 140 kW × 4個
駆動方式 WNドライブ
編成出力 1,120 kW
制御方式 三菱電機SiC適用MOSFET素子VVVFインバータ制御
制御装置 MAP-144-15VD283
制動装置 MBSA形電気指令式電磁直通ブレーキ(電力回生・発電ブレーキ付き)・保安ブレーキ
保安装置 神鉄形ATS 防護無線
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神戸電鉄6500系電車(こうべでんてつ6500けいでんしゃ)は、神戸電鉄2016年平成28年)より導入を開始した通勤形電車

本記事では、編成単位で表記する必要がある場合は有馬・三田・粟生方の先頭車の車番を代表し、6513編成の様に表記する。

概要[編集]

既存車両の1000系列の代替として、2015年平成27年6月9日に導入を発表[1][2]2016年平成28年5月21日より営業運転を開始した[3]。建造は川崎重工業で、神戸電鉄の新造車両としては2010年平成22年)導入の6000系第2編成以来となる[2]

「人と環境にやさしく、安全・快適な車両」をコンセプトととし[4]、積極的に新型機器を採用した[4]

車体[編集]

外観やデザインは2010年平成22年)に導入した6000系を踏襲し、ステンレス車体で片側3扉とした[4]。構体と台枠はステンレスであるが、先頭車の前頭部は普通鋼を使用している[4]。 側面はステンレスそのものの特徴を活かし[4]、前頭部はブラックを基調にゴールドとレッドを組み合わせたデザインとしている[4]

車内[編集]

客室[編集]

編成定員は354名、うち座席定員は117名である[2]。インテリアデザインは木目調と白色の化粧板を採用し[4]、従来車両の車内空間を継承している[4]

座席にはモヘアモケットを使用した大型袖仕切りを採用し、急ブレーキや衝突時の乗客の保護を高めている[4]ほか、袖仕切り上部を透明の強化ガラスとする[4]ことで、高級感と開放感あふれる車内空間を演出させている[4]

大型袖仕切り部と座席間の中仕切り部にはスタンションポールが新設され、高齢者の座席からの立ち上がりの負担軽減などが配慮されている[4]

つり革は従来の高・低の2段に加え、更に低い段を追加した3段階で設置された[4]。また出入り口部には枕木方向にもつり革を設置している[4]

乗務員室[編集]

主幹制御器は従来のツーハンドル式を採用、各スイッチ類やモニタ表示器などの機器類は、ワンマン運転時の操作性を考慮した配置となっている[5]

車内外表示装置、自動放送装置、空調装置などの操作は、モニタ表示器のタッチ画面による一括操作が可能になっている[5]

主要機器[編集]

台車・駆動方式[編集]

台車は従来車と同様、軸梁式でダイレクトマウント構造の空気ばね方式とし、駆動方式はWN継手によるカルダン駆動方式を採用した[6]

制御装置・主電動機[編集]

制御装置は、SiC適用のMOSFET素子による2レベルVVVFインバータ制御装置(三菱電機製MAP-144-15VD283)を新形式車両では日本で初めて本格採用して省エネルギー化を図り[7]、1C4M方式のユニットを両先頭車に搭載する[7]主電動機は定格出力140 kWの全密閉かご形三相誘導電動機を採用、高効率化による電力損失の低減や低騒音化、保守性の向上が図られた[7]

なお新形式車両でフルSiCを本格採用したのは、本形式が日本初である(更新での関西初採用は神鉄グループ北神急行7000系)。

車内案内装置[編集]

車内案内表示器は、32インチハーフサイズの大型ディスプレイを1両あたり3ヶ所千鳥状に配置し視認性の向上を図っている[7]</ref>[2]。停車駅や扉の開く方向の案内のほか、駅間では2画面に分割して旅客案内と映像の再生を行う[7]インバウンド対応として日本語英語中国語韓国語の4ヶ国語で表記される[7]

冷暖房装置[編集]

冷房装置は、24.42 kWの「セミ集中式クーラ」を1両あたり2台搭載している[7]。また「低騒音型ラインデリア」を天井部に設置し、冷風を拡散させることで室内温度の均一化を図っている[7]。 

暖房装置は片持ち式の座席に吊り下げる構造とし、足元スペース拡大と暖房効率向上を目指した設計としている[7]

また冬季の車両仕立て時には、乗務員室から「急速暖房」操作を行い、客室温度を急速に上昇させることができるようになっている[7]

冷暖房制御は、外気温・車内温度・車内湿度・乗車率等から快適な車内温度を保つ「マイコン制御方式」としている[7]

照明装置[編集]

車内灯は色温度5000ケルビンLED灯を採用、前照灯もLED灯を採用して視認性向上と長寿命化を図った[7]。また、標識灯や計器灯など他の照明設備についてもLED灯としている[7]

放送装置[編集]

放送装置は「自動音量調節機能」により客室内に適切な音量で放送できるようになっている[7]。またワンマン運転に対応した自動放送装置を搭載し、モニタ装置で設定した運行情報により自動案内放送を行う。

消費電力[編集]

これらの環境面が配慮された機器類の採用によって、消費電力抵抗制御の1000系と比べ約60%低減された[2]

車種構成[編集]

Mc-T-Mcの3両編成で、Mc車は6500形、T車が6600形である[4]。6500形にVVVFインバータ・電動空気圧縮機 (CP)が、6600形には静止形インバータ (SIV)が搭載されている。パンタグラフは電動車の連結部寄りに付けられている。

 
形式 6500形 6600形 6500形
車種 Mc1 T Mc2
機器 VVVF,CP SIV×2 VVVF,CP
6501 2017年2月10日 鈴蘭台駅
6601 2017年2月10日 鈴蘭台駅
6502 2017年2月10日 鈴蘭台駅

編成表[編集]

2021年4月1日現在[8]

← 有馬温泉・三田・粟生
新開地・ウッディタウン中央 →
竣工 備考
Mc1 T Mc2
6501 6601 6502 2016年2月29日[9]
6503 6602 6504 2017年2月1日[10]
6505 6603 6506 2018年2月1日[11]
6507 6604 6508 2018年3月12日[11]
6509 6605 6510 2019年2月15日[12] 国家試験用メーター装備
6511 6606 6512 2019年3月5日[12]
6513 6607 6514 2020年2月27日[13]

運用[編集]

2016年平成28年5月21日より営業運転を開始し、神戸電鉄全線で運用されている。

脚注[編集]

  1. ^ 2016年春 新型車両「6500系」を導入します』(プレスリリース)神戸電鉄、2015年6月9日。 オリジナルの2015年6月9日時点におけるアーカイブhttps://web.archive.org/web/20150609221052/http://www.shintetsu.co.jp/release/2015/150609.pdf 
  2. ^ a b c d e 神戸電鉄6500系、新型車両を2016年春導入! 川崎重工が製造、1000系を置換え”. マイナビニュース (2015年6月9日). 2016年12月24日閲覧。
  3. ^ 神戸電鉄6500系が営業運転を開始”. railf.jp(鉄道ニュース). 交友社 (2016年5月23日). 2024年4月14日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 吉田 2016, p. 44.
  5. ^ a b 吉田 2016, p. 45.
  6. ^ 吉田 2016, p. 46.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n 吉田 2016, p. 47.
  8. ^ ジェー・アール・アール 編『私鉄車両編成表 2021』交通新聞社、2021年、173頁。ISBN 9784330032214 
  9. ^ ジェー・アール・アール 編『私鉄車両編成表 2016』交通新聞社、2016年、196頁。ISBN 9784330701165 
  10. ^ ジェー・アール・アール 編『私鉄車両編成表 2017』交通新聞社、2017年、195頁。ISBN 9784330813172 
  11. ^ a b ジェー・アール・アール 編『私鉄車両編成表 2018』交通新聞社、2018年、196頁。ISBN 9784330897189 
  12. ^ a b ジェー・アール・アール 編『私鉄車両編成表 2019』交通新聞社、2019年、195頁。ISBN 9784330982199 
  13. ^ ジェー・アール・アール 編『私鉄車両編成表 2020』交通新聞社、2020年、202頁。ISBN 9784330060200 

参考文献[編集]