派遣切り

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派遣切り(はけんぎり)とは、派遣契約労働者を使用する企業等派遣先事業所において、派遣元である人材派遣業者との当該派遣労働者の派遣契約を打ち切ること。または、派遣契約解約に伴い、当該派遣労働者が派遣元人材派遣業者により解雇もしくは雇用契約の更新拒否(雇い止め)にあうこと。

派遣先企業の業績悪化や経営方針変更その他の要因を理由として行われる。

法令上の定義はなく、厚生労働省による定義は前者[1]だが、一般的には、前者と後者を明確に区別して使われておらず、どちらかというと後者を念頭に置いて使われることが多いと思われる。

背景

2008年11月に始まる金融危機を発端とする世界的不況において、自動車産業家電メーカーなどを中心とする製造業による大規模な労働者派遣契約の打ち切りとそれに伴う派遣業者による労働者解雇・雇い止めが発生し、マスメディアを通じて一般の注目を集めるようになったことが、「派遣切り」ということばを広める契機となった。

一般的に、労働者派遣は労働力の需要に柔軟に対応して供給することを目的としたものだという背景もあり、派遣先企業が中途解約可能な派遣契約を結んだり、そうした規定が無くとも気にせず派遣契約の中途解約を行われたりする。一方、派遣企業とって顧客先企業である派遣先企業(製造業等)に対して契約の中途解約で損害賠償請求したり、損害賠償請求できるような派遣契約を結ぶのは実際上躊躇される。こうした結果、派遣契約の中途解約が横行していると考えられる。
このように派遣業という業種が需要変動の大きいことを背景として、派遣労働者の場合、しばし仕事が無くなり、通常の給与の6割の休業手当(労働基準法により通常の賃金の6割以上が義務づけ)で我慢することとなったり、さらには雇い止めや解雇に至る状況となっている。

雇用契約の期間満了による雇用終了だけでなく、雇用契約の期間満了以前の契約切りも横行している[2]。当然ながら契約途中で雇用契約を一方的に切ることは、労働者を「解雇」することに他ならない。

不況を理由にするとはいえ、解雇された労働者のその後の生活を鑑みず、ないがしろに扱う手段について、人権問題からの観点や企業のモラルから問題視する声も多い。満了以前の契約切りは「解雇」であり、整理解雇四要素(または四要件)の観点に照らして十分な対応がなされていないと不当解雇にあたり、労働契約法にも抵触するが刑事および行政上の罰則は全くないため、民事で訴えるしかない。派遣業者の立場からは、派遣先の企業の都合により、契約満了以前に打ち切ることが契約条項に入っているので違法性がないというのに対し、労働者側の立場では、構造改革による派遣関係の規制緩和政策により、人材関連業界の拡大が図られたこともあり相対的に弱く、訴訟の出費に比して敗訴する見込みが高く、労働者が泣き寝入りしているのが現状である。また製造業においては派遣労働者を直接雇用することを迫られる2009年問題もあるため、便乗して解雇を行っているのではないかとの指摘もある。

全国におよそ100万人いる製造業の派遣・請負労働者は2009年3月末までに40万人が失業するという試算が製造派遣・請負会社の業界団体などに出されているが[3]、70万~100万人が失業するという試算もある[4]

マスコミ報道後

「派遣切り」の実態がマスコミで大々的に放映されるにつれ、企業においてはイメージを損なうことを避けるために、中途期間内の契約解除を撤回したり、一定期間、宿舎の提供を行う企業も出てきている。

脚注

  1. ^ 厚生労働省報道発表資料「労働者派遣契約の中途解除等への対応について」の資料『いわゆる「派遣切り」と「解雇」との関係』を参照。
  2. ^ 途中で契約解除される「派遣切り」の実態は。毎日新聞、2008年12月29日[リンク切れ]
  3. ^ 製造業派遣・請負、40万人失業見通し 業界団体試算朝日新聞、2009年1月27日
  4. ^ 派遣切り失業者は3月末までに100万人を突破する (ゲンダイネット)日刊ゲンダイウェブ魚拓

関連項目