尿素

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尿素
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識別情報
CAS登録番号 57-13-6 チェック
PubChem 1176
ChemSpider 1143 チェック
UNII 8W8T17847W チェック
E番号 E927b (その他)
DrugBank DB03904
KEGG D00023 チェック
ChEBI
ChEMBL CHEMBL985 チェック
RTECS番号 YR6250000
ATC分類 B05BC02,D02AE01 (WHO)
特性
化学式 CH4N2O
モル質量 60.06 g mol−1
外観 白色の固体
密度 1.32 g/cm3
融点

133–135 °C

への溶解度 107.9 g/100 ml (20 °C)
167 g/100ml (40 °C)
251 g/100 ml (60 °C)
400 g/100 ml (80 °C)
溶解度 50g/L エタノール, 500g/L グリセロール[1]
塩基解離定数 pKb pKBH+ = 0.18[2]
構造
双極子モーメント 4.56 D
危険性
安全データシート(外部リンク) JT Baker
半数致死量 LD50 8500 mg/kg (oral, rat)
関連する物質
関連する チオ尿素
ヒドロキシカルバミド
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

尿素(にょうそ、: urea)は、化学式 (H2N)2C=O と表される有機化合物カルバミドともいう。無機化合物から初めて合成された有機化合物として、有機化学史上、重要な物質である。

性質

無色無臭の結晶で、哺乳類両生類の尿に含まれる。水に容易に溶け、その溶解度は 108 g/100 mL (20 ℃)。非線形光学現象を示す。加熱すると分解し、アンモニアビウレットシアヌル酸に変わる。

尿素の結晶の構造には、小分子が入るのにちょうど良い大きさの空孔がある。そのため尿素は、ヘキサンなど、さまざまな化合物と安定な包接化合物を作る。過酸化水素との包接化合物(尿素-過酸化水素付加体、略称 UHP)は、固体の形で取り扱える酸化剤として市販されている。

窒素の排泄

ヒトがタンパク質などから取り入れた窒素のうち、過剰分が尿の中に尿素の形で排泄される(尿には尿素が含まれており、成人は尿素を 1日 30 g ほど排泄する。)。生体内では、尿素回路によりアンモニアから尿素が産生される。

最も簡単な窒素化合物はアンモニアであるが、人体に有害なため、安全な尿素として蓄えられ水溶液として排泄される。ただし水溶性であるから水と共に捨てなければならず、濃縮にも一定のエネルギーを要する。水の確保が重要な問題となる生活ではこの点で尿酸にしたほうが有利である。

窒素の排泄は、硬骨魚類ではアンモニア哺乳類両生類軟骨魚類では尿素、鳥類爬虫類では尿酸のかたちで行われる[3][4][5][6]。なお、軟骨魚類は、浸透圧調節のため、尿素やトリメチルアミンオキサイドを体内に蓄積している[7][8]

用途

尿素の用途として、保湿クリーム・肥料などとして広く使われており、ホルムアルデヒド (HCHO) と反応させることで尿素樹脂(ユリア樹脂)も得ることが出来る。高濃度の水溶液はタンパク質、核酸変性させる作用がある。

水と混ぜると吸熱効果が現れる。硝酸アンモニウムと尿素の混合物を水の入った袋と同封し、衝撃を加えて混合物を反応させ冷却効果を得る携帯用の冷却パックとしての用途もある。

またディーゼルエンジンでは、尿素を水に溶かした尿素水を使って窒素酸化物を分解している[1]。具体的には、尿素をディーゼルエンジンの排熱で分解し、放出されるアンモニアと排気中に含まれる窒素酸化物を化学反応させ、水と窒素に還元させる。

歴史

フリードリヒ・ヴェーラーは尿素の合成法を発見した。

尿素は、人間の手によって初めて無機化合物のみから合成された有機化合物として、有機化学の歴史上非常に重要な化合物である。 1828年にその合成に成功した人物は、フリードリヒ・ヴェーラーである。彼は、シアン酸アンモニウム水溶液を加熱して尿素が生成することを確認した。この合成法はヴェーラー合成と呼ばれている。



その当時の化学では、有機化合物は生物にしか作り出すことができないという考え(生気論)が正当とされてきたが、ヴェーラーの実験結果はそれをくつがえすもののひとつとなった(ただし、尿素は炭酸アミドに相当し、炭酸は通常有機化合物に含まれない。このため尿素を真に有機化合物と呼んでよいかは議論がある)。

脚注

  1. ^ http://toxnet.nlm.nih.gov/cgi-bin/sis/search/f?./temp/~ZAvqWP:1:sol
  2. ^ pKa Data” (2001年10月24日). 2009年11月27日閲覧。
  3. ^ http://dictionary.goo.ne.jp/leaf/jn2/168507/m3u/%E5%B0%BF%E4%B8%AD/
  4. ^ http://ci.nii.ac.jp/naid/110003360889
  5. ^ http://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textbiodiv/Chapt1-5.doc
  6. ^ http://pharm.ph.sojo-u.ac.jp/genometalk/genometalk31-40.pdf
  7. ^ http://www.my-pharm.ac.jp/~kishiba/postelectro.pdf
  8. ^ http://www.jstage.jst.go.jp/article/suisan/71/3/71_290/_article/-char/ja

関連項目