浸透圧
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浸透圧(しんとうあつ)は物理化学の用語である。半透膜をはさんで液面の高さが同じ、溶媒のみの純溶媒と溶液がある時、純溶媒から溶液へ溶媒が浸透するが、溶液側に圧を加えると理論上は浸透が阻止され、この圧を溶液の浸透圧という(岩波理化学事典・同生物学事典等)。溶液には浸透圧があるが、純溶媒にはない(後述)。定義に従うと半透膜に加わる圧となるが、逆向きの浸透する力として誤解されていることが多く、注意を要する。溶媒・溶質が同じで濃度の異なる溶液の場合は濃度の低い溶液から濃度の高い溶液に溶媒が移動するように働く。一般的には、溶液が持つ、溶媒を引き込む力ともとらえることができる。
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[編集] 概要
半透膜、すなわち溶媒(小さな分子)だけを透す膜で隔てられた2室に溶媒・溶質が同じで濃度の異なる2つの溶液があると、濃度の低い(溶質分子の密度が相対的に低い)溶液から濃度の高い(溶質分子の密度が相対的に高い)溶液に移動する溶媒分子の数は逆向きのものより多くなる。これは、溶液中に存在する溶質分子が溶媒分子の移動を阻害するためである。結果として、溶媒は濃度の高い溶液のほうへ移動し、ある平衡位置に達する。
浸透圧 π [atm] は次の式で表わされる(ファントホッフ (van’t Hoff) の式)。
- π = MRT
M はモル濃度 [mol / dm³]、R は気体定数 [atm · dm³ / K · mol]、T は 温度 [K] である。モル濃度は容積モル濃度ではなく、重量モル濃度を用いるのが正しい。これは理想気体の状態方程式と同じ形をしている。溶質の分子は気体の分子と同様の状態にあり、式は気体の状態方程式と同じ形になる。
浸透圧はその名称に反し「引き込む力」や浸透する力ととらえられがち(前述)であるが、正しくは、溶質が半透膜に与える(与えうる)圧力であり、名称に矛盾はなく、また、通常、半透膜が移動しないため、浸透圧の低い溶液から高い溶液へ溶媒が浸透する。
溶質のモル濃度は溶液中の溶質の粒子のものであるため、電解質の水溶液の浸透圧は式量によるモル濃度ではなく生じたイオンのモル濃度から求める。
前記の方法のほか、同じ浸透圧をもつ非電離質水溶液のモル濃度で浸透圧を示すオスモル濃度が用いられることもある。
溶液は純溶媒に比べ気化しにくく、沸点上昇を示すため、半透膜を介さず純溶媒と溶液を溶媒蒸気で満たした管でつないでも浸透と同様に溶液の液面が上昇する。このため、沸点上昇によって浸透圧を示すこともある。
[編集] 生物における浸透圧
細胞内の溶液と比較して、浸透圧が高い溶液を高張液hypertonic、低い溶液を低張液hypotonic、等しい溶液を等張液isotonicという。(図)
細胞内の溶液と浸透圧が等しい食塩水を生理食塩水と呼び、ヒトの場合その重量パーセント濃度は約 0.9% である。また生理食塩水にカリウムなどを入れ人間の体液に近づけた液をリンゲル液と呼ぶ。
水道水などで目を洗う際にしみて痛くなるのは、この浸透圧の作用による。濃度が0の真水や水道水に比べて眼球の細胞内の溶液の浸透圧が高いため、外側の水分子が細胞内へ移動して細胞が膨張し、その時に痛みを伴う。そのため目薬などの点眼薬は、浸透圧を生理食塩水に合わせ、目にしみないように作られている。
赤血球を真水に入れると、内部へ浸透した水の圧力により赤血球が破壊される溶血が起こる。
自然界の生物においては、淡水は細胞内より浸透圧が低く、海水は浸透圧が高いので、それぞれに浸透圧調節が必要となる。動物においては排出器の役割の一つである。
植物細胞には細胞壁があるため、陸上植物の細胞を高張液に入れた場合には原形質分離が起こり、真水に入れた場合には一部の細胞を除き膨らむだけで破裂することはない。細胞膜が細胞壁を内部から圧する力を膨圧と言い、細胞壁の薄い植物体を支えたり、気孔の開閉、オジギソウ・食虫植物の運動の原動力となっている。
砂糖類の結晶が基本的に腐敗しなかったり、極端に糖分や塩分が高い食品が腐敗しにくいのも浸透圧によるものである。菌類が取り付いて繁殖しようとしても、自身の細胞から水分が吸いだされ、死滅してしまったり非常に遅い速度でしか繁殖できないためである。
[編集] その他
浸透圧は溶液の持つ属性であり、語の使用に際して注意する必要がある。たとえば「細胞内部の溶液の浸透圧」という用法は妥当だが、「細胞の浸透圧」という記述は意味するところが不明瞭であり誤解を招くおそれがある。 「半透膜の両側に濃度の違う溶液があると、浸透圧が発生し…」という表現も誤用である。

