双心のサヤ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

これはこのページの過去の版です。240b:12:3180:5b00:491b:abe5:2a17:4576 (会話) による 2018年6月26日 (火) 09:52個人設定で未設定ならUTC)時点の版であり、現在の版とは大きく異なる場合があります。

双心のサヤ
ジャンル アクション、入れ替わり
小説
著者 鳥生浩司
イラスト 結城焔
出版社 ホビージャパン
レーベル HJ文庫
巻数 全2巻
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル
ポータル 文学

双心のサヤ』(そうしんのサヤ)は、鳥生浩司による日本ライトノベル作品。イラストは結城焔が担当。ホビージャパンHJ文庫刊。

ストーリー

戦国時代武将を祖に持ち、現在は一大企業グループを形成している上月家の跡取りである雪柾は、冷徹な祖父に対する反発から高校進学に際して家宝の守り刀を持ち出し、引きこもり状態に在った自分を救い出してくれた恩人であるメイド桜坂紗耶と半ば駆け落ち同然の形で安アパートの六畳一間で同居生活を始める。2人が通う笹嵯(さざさ)学園では雪柾の許婚である天上院蓮華が雪柾に対して猛烈なアプローチを繰り返すものの、互いに強い信頼関係で結ばれている雪柾と紗耶の間に割って入ることは適わず玉砕を繰り返す日々が続いていた。

紗耶の誕生日が2週間後に近付いた日の放課後。雪柾は紗耶の誕生日に告白し、婚約指輪を贈ろうと決め守り刀を古物商を家業とするクラスメイト・二階堂桐の所へ持ち込む。桐は刃引きされて殺傷能力を失ったその刀を一目見て相当な値打ち物であることを見抜くが、買い取らずに隠れていた紗耶を呼び出して雪柾の告白を取り持った。こうして、相思相愛の仲となりアパートへの帰り道を急ぐ2人に突然、雪柾の実家である上月家に恨みを持つと称する男が襲いかかる。雪柾は男の振りかざす刀に唯一の武器である守り刀で防戦を強いられ、遂には守り刀を川に落としてしまうが紗耶は雪柾の為に守り刀を拾うべく、川へ飛び込む。そして、武器を無くし絶体絶命の危機に晒された雪柾の前に守り刀を持った紗耶が現れるが、紗耶は普段とは別人のような太刀さばきで男の攻撃を斥ける。雪柾は目の前にいる紗耶が普段の紗耶とはまるで別人のように口調も変わってしまったことにしばし戸惑うが、紗耶は自分が上月家に恨みを持つ者の怨念・禍魂(マガツタマ)の襲来から当主の末裔を守る為に守り刀を通じて紗耶と魂が入れ替わった戦国時代の姫君・鞘姫であると言い、500年後の現代社会に戸惑いつつも雪柾の侍女(サムライ・ガール)を自ら志願する。

登場人物

メインキャラクター

上月 雪柾(こうづき ゆきまさ)
笹嵯学園高等部1年生。戦国武将の末裔で現在は一大企業グループを築き上げている上月家の跡取りであったが、厳格かつ冷徹な祖父への反発から中学卒業と同時に家を飛び出し、笹嵯学園へ入学すると共にメイドの桜坂紗耶と駆け落ち同然に安アパートで暮らし始める。祖父の援助には頼らないと決めている為、アルバイトをしながら生計を立てていたが高校を卒業したら紗耶と結婚したいと願っており、婚約指輪を買う為に上月家の家宝である守り刀を手放そうとしたものの、クラスメイト・二階堂桐の取り計らいで刀を売りに出さないまま紗耶に告白する。
幼少の頃から将来の上月家当主として英才教育を受けており、特に古流剣術を叩き込まれていたが手合わせに際して相手に殺意を持って斬り掛かった所を止めに入った紗耶の背中に深い傷を負わせてしまい、悔恨の念から守り刀の刃を潰してしまう。
桜坂 紗耶(さくらざか さや)
笹嵯学園高等部1年生。孤児として施設で育てられていたが、10歳の時に引きこもりを発症した雪柾の相手をさせるため雪柾の祖父に引き取られた。家族や使用人に対して心を閉ざしていた雪柾は祖父の思惑通り、紗耶に対しては心を開くようになり引きこもり状態を脱する。以後はメイドの1人として上月家で暮らしていたが、雪柾が祖父への反発から高校進学に際して上月家を飛び出したことから紗耶もメイド服だけを持参して雪柾と同じ笹嵯学園へ進学、2人で暮らし始める。艶やかな黒髪の美貌に加えて穏和で家庭的な性格と料理の腕から学園内でも評判の美少女だが、雪柾の許婚である天上院蓮華を除いては2人の仲に割って入ろうとする者はいない。アパート暮らしを始めた後も雪柾とは飽くまで主従関係であると自分に言い聞かせていたが、桐が取り持つ形で雪柾より告白を受け、両想いの関係となった。
雪柾が禍魂に憑依された男の襲撃を受けた際、雪柾が取り落とした守り刀を拾うため川へ飛び込むが守り刀の力で鞘姫と500年の時を超えて魂が入れ替わってしまう。戦国時代での生活には早くに順応し、城を飛び出すことの多かった鞘姫と対照的な性格のため家臣達には歓迎されている。
上月 鞘(こうづき さや)
戦国時代の武将・上月家の姫君。14歳(数え年満年齢かは不明)。本編中では原則として「サヤ」と片仮名で表記される。いずれ政略結婚により他家へ嫁ぐ運命に抗うかのように何度も城を飛び出す旺盛な好奇心と男顔負けの剣術の腕を持つことから「剣の舞姫」の二つ名で呼ばれている。上月家当主の許を訪れた伴天連(バテレン)は「将来、上月家は繁栄するが多くの人々の恨みを買うことになるだろう」と当主に忠告し、妖術により上月家に恨みを持つ者の禍魂を鎮める力を持った守り刀を献上したが、この刀の力によってサヤは守り刀を手にした500年後の紗耶と魂が入れ替わり、上月家の末裔である雪柾を襲った禍魂を撃退した。サヤと魂が入れ替わった紗耶がメイド、つまり侍女であることを教えられ「侍女」の字義を直訳した「サムライガール」を自称すると共に、雪柾に対して「吾主(あぬし)のメイドになってやる」と申し出るが、元が雑用とは無縁な姫君のため紗耶とは正反対に家事は全く出来ない。
紗耶との入れ替わりはくしゃみによって引き起こされるが、今のところ偶発的な入れ替わりしか発生しておらず胡椒などを使った人為的な入れ替わりには成功していない。

その他の主要人物

天上院 蓮華(てんじょういん れんげ)
高等部1年生。雪柾とは互いの家同士が決めた許婚であり、紗耶のことしか眼中に無い雪柾を振り向かせるべく雪柾の祖父より全権委任を受けて笹嵯学園高等部へ入学。生徒会を買収して制服を自由化させ、純白のドレスで着飾っての通学を始め雪柾に対して様々なアプローチを繰り返し、紗耶に勝負を挑む度に敗れるのを繰り返すのが学園の名物となっていた。しかし、雪柾の剣術に影響されて始めた薙刀でサヤの帯刀を校則違反に問わない条件を賭けて他流試合を挑んだものの、紗耶=サヤの剣術に敗れる。こうして一旦は身を退くことを決意したものの、自分が闘った相手がいつもの紗耶ではなく戦国時代の鞘姫であったことを知らされ、葛藤の末に雪柾への想いを断ち切れず風紀委員会の来栖川いりすに協力を申し出る。
二階堂 桐(にかいどう きり)
高等部1年生。雪柾のクラスメイトで、図書委員だが雪柾はクールな雰囲気から勝手に「委員長」と呼んでいる。家業の古物商「二階堂」は店主の留守が多いために店番を任されることが多く、骨董品に関する知識が豊富で商売上手。紗耶の婚約指輪を買う為に雪柾が持ち込んだ守り刀が相当な値打ち物であると見抜いたものの、その場で買い取ることはせずに機転を利かせて雪柾と紗耶の仲を取り持つ。
神薙 刀子(かんなぎ とうこ)
高等部1年生。ポニーテールが特徴で左利きボクっ娘。サヤの守り刀と対を為す、刀身の錆び付いた守り刀を持ち歩いている。上月家の剣術指南を代々、務めている神薙家の長女で雪柾とは幼少の頃から手合わせをする仲であったが、雪柾と自分との手合わせで紗耶が重傷を負ってしまう。この一件により雪柾は剣術から離れ、また弟が生まれた為に師範の地位を継ぐ必要が無くなったことから父親に剣術を禁じられるが、雪柾と再び真剣勝負をすることだけを考えて密かに刀を振るい続けていた。その後、名門お嬢様学校・葉桜女学院に入学したものの雪柾を狙って禍魂が発生するようになったことに気付き、笹嵯学園へ転校。人知れず禍魂を撃退していた。
金城 亮児(かなしろ りょうじ)
高等部1年生。雪柾の悪友で、雪柾を追って転校して来た刀子に一目惚れして告白したものの色よい返事は得られなかった。

風紀抜刀隊 “震”

来栖川 いりす(くるすがわ いりす)
高等部1年生。小学生と間違えられるほどの低身長にコンプレックスを抱いている。過去の体験が基で、校則を初めとする決まり事は絶対に厳守しなければならないと考えておりホイッスルを手に風紀委員会副委員長として辣腕を振るっている。その為、生徒会を買収して自分に都合の良いように校則を変えさせる蓮華は天敵とも言える存在であったが、サヤから私物扱いで守り刀を没収した際に利害が一致。一旦は蓮華が他流試合に敗れて黙認状態となったサヤと刀子の帯刀を止めさせるべく、蓮華の援助を得て体育会系の猛者を集めてかつて校内で恐れられていた「風紀抜刀隊 “震”」を再結成し、自らリーダーとなる。しかし、他の隊員と異なり運動能力は一般生徒の平均にも大きく劣る。
榛原 ハルエ(はいばら ハルエ)
柔道部員。絞め技が得意で「熊殺し」の異名を取る。部の予算増額を目当てに風紀抜刀隊へ参加する。
真咲 悠里(まさき ゆうり)
総合格闘技同好会の会長。かつて柔道部に所属していたが、打撃技を乱発する反則上等のスタイルを咎められ退部。同好会を部に昇格させるため風紀抜刀隊へ参加する。
七海 静香(ななみ しずか)
弓道部員。一度に3本の矢を放つ腕前を持つ。高額な道具一色を揃えられない後輩の為に風紀抜刀隊へ参加する。
姫川 笙子(ひめかわ しょうこ)
薙刀部主将。金は欲しくないが、スポンサーである蓮華を薙刀部に入部させたいと切望しており、いりすが蓮華に入部を説得することを条件に風紀抜刀隊へ参加する。

書誌情報

  1. 刀姫推参! 2009年10月1日初版 ISBN 978-4-89425-945-4
  2. 刀姫恋心! 2010年3月1日初版 ISBN 978-4-7986-0009-3

関連項目

外部リンク