リトコール酸
リトコール酸[1] | |
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(4R)-4-[(3R,5R,8R,9S,10S,13R,14S,17R)-3-Hydroxy-10,13-dimethyl-2,3,4,5,6,7,8,9,11,12,14,15,16,17-tetradecahydro-1H-cyclopenta[a]phenanthren-17-yl]pentanoic acid | |
別称 Lithocholate; Lithocolic acid; 3α-Hydroxy-5β-cholan-24-oic acid; 3α-Hydroxy-5β-cholanic acid; 5β-Cholan-24-oic acid-3α-ol | |
識別情報 | |
CAS登録番号 | 434-13-9 |
PubChem | 9903 |
ChemSpider | 9519 |
EC番号 | 207-099-1 |
611 | |
RTECS番号 | FZ2275000 |
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特性 | |
化学式 | C24H40O3 |
モル質量 | 376.57 g/mol |
融点 |
183-188℃ |
危険性 | |
Sフレーズ | S22 S24/25 |
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。 |
リトコール酸(リトコールさん、英: Lithocholic acid)は、脂質を可溶性にして吸収を高める界面活性剤の役割をする胆汁酸の一種である。結腸内において微生物の活動により一次胆汁酸であるケノデオキシコール酸から二次胆汁酸として生合成される。この反応は一部の腸内細菌が有する胆汁酸-7α-デヒドロキシラーゼによってリトコール酸が生成される[2][信頼性要検証]。腸内細菌の総菌数の1〜10パーセント程度の多くの菌株が低い胆汁酸-7α-デヒドロキシラーゼ生産能を有することが確認されている[2][信頼性要検証]。リトコール酸は、人や実験動物に発癌をもたらすとされている[3]。食物繊維はリトコール酸を吸着し、大便として排出することを促進する[4]。
様々な国々での大腸癌の発生を比較すると、すわり作業で、高カロリー食品の食べ過ぎ、多量の赤肉又は加工肉の摂取は大腸癌の発生のリスクを高めることを強く示唆している。反面、健全な体重、適度な運動、良い栄養は一般的に癌のリスクを下げる。生活習慣を変えることにより大腸癌のリスクを60-80%下げることができると言われている[5]。
果物、野菜、シリアルその他の食物繊維の多量の摂取は、大腸癌と腺腫のリスクを下げると考えられてきた。この理論を検証するため16年にわたる88,757人を対象とした調査では、食物繊維の多い食事は大腸癌のリスクを下げてはいなかった[6]。2005年の別の調査でもその結果を支持している[7]。
ハーバード大学公衆衛生学部は、「食物繊維の摂取は、健康効果のある健全な食事としてもてはやされ、心臓病、糖尿病、憩室疾患、便秘を含む様々な疾患のリスクを減少させていた。多くの人が信じていたにも関わらず、食物繊維には大腸癌のリスクの減少の効果はほとんど認められなかった。」と発表している[8]。
なお、カルボキシル基を持つ代表的な界面活性剤である石鹸は、カルシウムイオンやマグネシウムイオンと結合して石鹸かすになって界面活性力を失い毒性もなくなる。二次胆汁酸にカルシウムが結合することで無毒化されて便中に排泄されるという説がある[9]。カルシウムとカルシウムの吸収に密接な関わりのあるビタミンDについては大腸癌のリスクが減少するとの報告(「大腸癌」要参照)があり、また、マグネシウム摂取量が多いグループの男性の大腸癌のリスクが低くなる[10]、との報告がある。
さらには、ラットで各種ポリフェノール(カフェ酸、カテキン、クルクミン、エラグ酸)の摂取がリトコール酸の生成を減少させたとの報告がある[11]。
脚注
- ^ Lithocholic acid at en:Sigma-Aldrich
- ^ a b 「食事成分による腸内細菌の二次胆汁酸生成酵素7α-デヒドロキシラーゼの制御」 1998年度〜1999年度 (科学研究費助成事業データベース)
- ^ Kozoni, V. (2000). “The effect of lithocholic acid on proliferation and apoptosis during the early stages of colon carcinogenesis: differential effect on apoptosis in the presence of a colon carcinogen”. Carcinogenesis 21 (5): 999–1005. doi:10.1093/carcin/21.5.999. ISSN 14602180.
- ^ Jenkins, David; Wolever, Thomas; Rao, A. Venketeshwer; Hegele, Robert A.; Mitchell, Steven J.; Ransom, Thomas; Boctor, Dana L.; Spadafora, Peter J. et al. (1993). “Effect on Blood Lipids of Very High Intakes of Fiber in Diets Low in Saturated Fat and Cholesterol”. New England Journal of Medicine 329 (1): 21–26. doi:10.1056/NEJM199307013290104. ISSN 0028-4793.
- ^ Cummings, JH; Bingham SA (1998). “Diet and the prevention of cancer”. BMJ 317 (7173): 1636–40. PMC 1114436. PMID 9848907 .
- ^ Fuchs, C. S.; Giovannucci, EL; Colditz, GA; Hunter, DJ; Stampfer, MJ; Rosner, B; Speizer, FE; Willett, WC (1999). “Dietary Fiber and the Risk of Colorectal Cancer and Adenoma in Women”. New England Journal of Medicine 340 (340): 169–76. doi:10.1056/NEJM199901213400301. PMID 9895396 .
- ^ Baron, J. A.; Hunter, DJ; Spiegelman, D; Bergkvist, L; Berrino, F; Van Den Brandt, PA; Buring, JE; Colditz, GA et al. (2005). “Dietary Fiber and Colorectal Cancer: An Ongoing Saga”. Journal of the American Medical Association 294 (22): 2904–6. doi:10.1001/jama.294.22.2904. PMID 16352792.
- ^ “Health Effects of Eating Fiber”. 2010年6月8日閲覧。
- ^ 溝上哲也「カルシウムとビタミンDの大腸がん予防効果」(全国発酵乳乳酸菌飲料協会) 世界がん研究基金2007年報告書と、"Dairy Product, Saturated Fatty Acid, and Calcium Intake and Prostate Cancer in a Prospective Cohort of Japanese Men"Cancer Epidemiology Biomarkers & Prevention 2008年10月号doi 10.1158/1055-9965.EPI-07-2681の解説。
- ^ マグネシウム摂取と大腸がんとの関連について JPHC Study 多目的コホート研究 (独立行政法人国立がん研究センター)
- ^ 大腸がんの危険因子である2次胆汁酸を減少させるポリフェノールを発見 広島大学大学院生物圏科学研究科