ボンベ
ボンベ(Bombe)とは、気体や液体を貯蔵・運搬する際に用いられる、完全密閉が可能な容器の、日本独自の呼称である。語源については、和製ドイツ語など諸説ある(後述)。この種の容器は英語ではタンク(tank)、あるいはガスシリンダーと呼ばれる。
目的によって、可搬式高圧ガス容器、設備用高圧容器などさまざまな種類がある。法規制により設置の向きが決められていることが多い。
語源
元々ドイツ語の「ボンベ(ドイツ語:Bombe)」には「爆弾」の意味しかなく、「気体・液体の貯蔵・運搬用の耐圧容器」の意味はない。気体用耐圧容器は、ドイツ語で「ドイツ語:Gasflasche」と呼ぶ。
日本において、これらの耐圧容器を「ボンベ」と呼ぶようになった理由は諸説あり、そもそもドイツ語由来ではないという説[要出典]もある。
種類
継ぎ目なし容器
- 圧縮、液化したガス、または液体を貯蔵するボンベ。高い内圧に耐えられるよう、マンガン鋼、クロムモリブデン鋼などにより一体成型により作られている。小型のものはアルミニウム合金製もある。
- 中型(内容量40 - 47リットル)のものは40 - 60キログラムくらいの重さになる。高い内圧に耐えられるよう外形は概ね回転体で、カプセル型または砲弾型のものが多い。
- 産業用の主な充填物は、窒素、酸素、アルゴン、水素、ヘリウム、空気、液化炭酸ガス。
溶接容器
- 主として液化したガスを貯蔵するボンベ。形状はカプセル型を基調としている。材質は主に鋼板で、筒状に巻いた鋼板の上下に半球状または皿状に整形した天頂部と基底部を溶接している。また、立てて使用する物では、基底部にスカート状の台座と、上部にバルブを保護するための保護部品が取り付けられていることが多い。
- 主な充填物は、液化石油ガス(LPG)、液化ブタン、溶解アセチレン、液化アンモニア。
クリーンボンベ
半導体の製造など高純度の物質を扱う場合に用いられる、内部に研磨加工を施し、内容物の純度を保つように設計されたボンベ。
エアボンベ
噴霧器に接続して塗料などを散布する際に用いられる、空気を充填したボンベ。
カセットボンベ
燃料用の液化ブタンを入れた小型のボンベ。カセットボンベを燃料源とする焜炉をカセットコンロと呼ぶ。
強化プラスチック製ボンベ
液化石油ガスを入れる軽いボンベ。
構造
内部が高い圧力になることから、鋼などの金属や、樹脂等により堅牢に作られている。内容物の取り入れ・取り出し口には目的に応じたバルブが取り付けられている。 圧力が加わる表面積が容積比で最小となる球形が製造に必要な資材量は最少で済むが、球形は都市ガス用のガスタンクなど大型の物以外では多くない。円筒形には同形状の連続部分があるため製造が容易で、同じ設計・製造設備で長さを加減して容量のラインナップを用意できる、複数を並べたり施設や装置内部に組み込む際のスペース効率がいい等、メリットが多い。ボンベの上下部分は、一般に酸素や窒素など高圧のものは半球形に近くなり、燃料用など比較的低圧のものではやや扁平になる。
バルブ
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可搬式高圧ガス容器などに取り付けられたバルブは、その内容物(ガス種)により方式が異なるが、工業用(医療用を含む)では、酸素、窒素、アルゴン、炭酸ガス、水素、ヘリウムの場合、ほぼ同様の形式となっている。ただし、販売店により口金の様式に異なるものもある(口金に外ねじを切ったG式、内ねじを切ったF式)。また、ヘリウムと可燃性ガスは逆ねじ(左ねじ)が切ってある。アセチレンボンベのバルブの口金にはねじは切っておらず、パッキンが付けられている(接続金具側にシャコ万が付いていて締め付けるようになっている)。
接続のしやすさでは内ねじF式(通称関西型)が良いとされる[誰によって?]が、当たり面に傷が付くとガス漏れを起こし、調整器の向き合わせにコツが必要で作業の標準化が困難な部分が欠点である。むしろ内ねじに雄ねじが両方に切ってあるオンソケットをねじ込み外ねじ用調整器を装着してあるほうが便利という意見[誰によって?]もある(小型ボンベの場合は外ねじのため器具を兼用できる上、傷付きなどの補修もパッキンあるいはオンソケットの交換で済むため)。
なお高純度品および医療用ガスはすべて外ねじあるいは特殊なワンタッチ式であり、内ねじ式は金属擦り合わせによる異物混入の恐れがあるため使われない。
用途
- 工業用(パージ用、雰囲気用、製品封入用、乾燥用、支燃用、空気遮断用など)
- 呼吸用(酸素欠乏場所での活動、潜水活動、ガスマスクが必要な環境での活動など)
- 医療用(酸素吸入、麻酔)
- 燃料用
- ガスの圧力を用いた動力源(噴霧器、消火器、ビールサーバー) - 対象物の品質保持などの目的を兼ねることがある
日本の規制
塗装色の一覧
日本において気体用のボンベは、高圧ガス保安協会による容器保安規則(昭和41年5月25日、旧通商産業省令第50号)により、内容物によって本体の塗装色が定められている。
LPGは規制緩和により上記の規程によらない(ただし上記の色は使えない)が、規定された当時のボンベはねずみ色であり、現在でも規定当時に製造されたねずみ色のボンベが数多く流通している。
内容物の記載義務
内容物が劇物・毒物・可燃物の場合には、さらにその旨をボンベに記載すると同時に所有者をボンベに記載しなければならない。また文字の色が定められている(アンモニアは赤文字、それ以外は白文字)。従って油性マーカーなどで所有者を書くことは違法行為である。
使用後の処理
- 高圧ガス容器は内部に空気が侵入することを防ぐため、完全に使い切る前にある程度の内圧を残した状態で使い終わることが望ましい。単体式の可搬式高圧ガス容器の多くはその所有権がガス販売店に属するため、使用者が買い取っていないボンベは使用後、販売店に返却することとなる。高圧ガス容器は定期検査が義務付けられており、検査期限を過ぎたボンベにはガスの充填が禁止されている(検査期限は検査刻印で識別できる)。
- 容器は内面を洗浄した上でガス圧や水圧などを用いた耐圧試験を行い、高圧に耐えられる状態であることを確認することが義務付けられている。またバルブなどの主要部品の状態や、刻印や塗装などが識別可能な状態に成っていることが求められる。
- カセットボンベなど可燃性の内容物の使い捨てボンベは、内容物を完全に使い切ったつもりでも内部にガスが残っていることがあり、廃棄処分の際(主にごみ収集車への投入時)、内部に残っているガスに引火、爆発する事故がしばしば起こっているため、処分する際は火の気の無いところでボンベに穴を開けて内部のガスを抜いた後で廃棄することが望ましい[1]。ただ自治体によっては、ガスを使い切ったあと穴を開けずに処分するよう記載しているところも多いので、自分の住んでいる自治体の方法を確認することが必要である[2]。